第466話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その2:全自動パージの狂宴と、極上スモークオイルの連続水揚げ)
第466話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その2:全自動パージの狂宴と、極上スモークオイルの連続水揚げ)
ガレスの放った【剛腕絶技・超振動・缶切り(シェル・オープナー)モード】。
それは、力任せに叩き割るという従来のドワーフ的戦法から完全に脱却した、狂戦士の筋肉と機神の演算が融合した「究極の解体術」であった。
巨大なサソリ型キリング・マキナの装甲が、まるでフルーツの皮を剥くように、あるいはツナ缶のプルタブを引くように滑らかに切断され、その奥から琥珀色に輝く『極上スモークオイル』のタンクと、ルビーのような『紅蓮の魔力結晶』が完全な状態で露出した。
「カッカッカ! オイルが一滴も漏れてねぇ! こいつはすげぇやサイラス! 俺の腕力と斧の重さに、この超振動が加われば、どんな鉄クズだろうが中身を傷つけずに丸裸にできるぜ!」
ガレスが、プルプルと微振動を続ける超重量戦斧を振り上げ、狂喜の産声を上げる。
『フフッ……当然だ。星海合金の分子結合を断ち切る最適解の周波数を、お前の筋力に合わせてリアルタイムで同期させている。だが、喜ぶのはまだ早いぞガレス殿。大陸の防衛システムが、脅威度を一段階引き上げたようだ』
サイラスの警告と同時だった。
ギガガガガガッ! ズズンッ! ズズズンッ!!
大陸の最下層を構成する巨大歯車の回転軸から、先ほどのサソリ型とは比較にならないほど巨大で、重厚な装甲に身を包んだ二種類の『殺戮機巧』が姿を現した。
一つは、全身が幾重にも重なる分厚いドーム型の装甲に覆われた【要塞蟹型マキナ】。
もう一つは、数十メートルに及ぶ長い車体を持ち、節ごとに独立した動力炉を備えた【大百足型マキナ】である。
『脅威目標、再設定。殲滅プロトコル、実行』
無機質な機械音声が響き渡り、蟹型マキナが岩盤を砕くほどの超質量プレス攻撃を仕掛けてきた。
「ハッハッハ! デカいカニと長い虫か! だがな、いくら外側を硬くぶ厚くしたところで、今の俺にとっては『ちょっと開けにくい高級缶詰』でしかねぇんだよォォッ!」
ガレスが迎え撃つべく、爆発的な脚力で甲板を蹴る。
連続缶切りショー:要塞蟹の甲羅剥き
ズドォォォォォォォンッ!!
蟹型マキナの巨大なハサミが振り下ろされ、星海合金の床が激しく陥没する。
しかし、その一撃が振り下ろされた時には、ガレスはすでに蟹型マキナの分厚い『甲羅(背中のドーム装甲)』の真上へと跳躍していた。
「まずは甲羅剥きだ! 振動数、最大!!」
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!!!!!
ガレスの戦斧が、空間を歪ませるほどの凄まじい高周波音を放つ。
彼はそれを大上段から振り下ろすのではなく、甲羅の縁に沿って、滑り込ませるように刃を叩き込んだ。
シュイィィィィィィンッ……!!
凄まじい火花が散るかと思われたが、実際には微かな摩擦音が響いただけだった。超振動の刃は、何層にも重ねられた分厚い星海合金の接合部を、分子レベルで「解いて」いく。
ガレスはそのまま、円を描くように蟹型マキナの甲羅の周囲をマッハの速度で一蹴りした。
パカァッ……。
まるで巨大なズワイガニの甲羅を外す時のように、ドーム型の重装甲が綺麗に本体から分離し、ズシンッと横へ滑り落ちた。
「エラー……背部装甲、喪失。動力炉、露出……」
蟹型マキナがシステムエラーに陥り、ハサミの動きをピタリと止める。
そして、その甲羅の下から現れたのは――トウヤが熱望していた、黄金色にドロリと濁った『超特濃スモークオイル(機械の蟹味噌)』の巨大タンクであった。
「トウヤ! 一丁上がりだ!」
「ナイスだガレス! リル! 一滴残らず吸い尽くせ!」
「プルルンッ!(おっきいお皿になるー!)」
待機していたスライムのリルが、ゼリー状の身体をトランポリンのように広げてタンクの真下へ滑り込み、サイラスの操作するバキュームアームが、蟹味噌ならぬ特濃オイルと紅蓮の魔力結晶を『ズゴォォォォッ!』と完璧に吸引し去った。
回転寿司の如き連続パージ:大百足の節開け
「まだまだいくぞォォッ! 次はそこのナガムシだ!」
ガレスの視線が、地鳴りを上げて迫る大百足型マキナへと向く。
大百足型マキナは、数十の節ごとに鋭いブレードを備え、大宴殿を丸ごと巻き込んで切り刻もうと、蛇行しながら突進してくる。
しかしガレスは、その突進を避けるどころか、真正面から百足の頭部へと飛び乗った。
「こいつは節ごとにオイルタンクが分かれてやがるな! ならば……【剛腕絶技・超振動・連続プルタブ飛ばし】ォォォッ!!」
ガレスが百足の背中を、頭から尾へ向けて全速力で駆け抜ける。
その道中、彼は節と節の間に、流れるような動作で超振動戦斧の峰を「トントンッ!」と叩き込んでいった。
シュパッ! シュパッ! シュパッ! シュパッ!
ガレスが通り過ぎた後から、百足の節ごとの装甲(蓋)が、まるで連続して開けられる炭酸飲料のプルタブのように、次々と空中に弾け飛んでいく。
『警告……第一節装甲パージ……第五節パージ……第二十節パージ……全装甲、喪失』
大百足型マキナは、自身の身体が解体されていることすら処理しきれず、そのままの勢いで大宴殿の甲板へと突っ込み、完全に「蓋を開けられた数十個の連結オイル缶」と化して静止した。
「クロ! バキュームのホースを引け!」
「ワォォォンッ!(任せろー! 全部美味そうな匂いがするぞ!)」
クロがサイラスの魔導バキュームホースを口に咥え、蓋の開いた百足型マキナの節を「シュゴォォッ! シュゴォォッ!」と順番に吸い込んでいく。それはまるで、ベルトコンベアに乗って流れてくる回転寿司の皿を、次々と平らげていくような滑稽かつ鮮やかな回収作業であった。
「ガッハッハッハ! 痛快! 痛快すぎるぜ!! この『超振動・缶切りモード』、力加減さえ間違えなければ、中身を全く傷つけずに一番美味しいところだけを頂ける魔法の杖じゃねぇか!!」
ガレスが甲板に降り立ち、オイルの香ばしい匂いを全身に浴びて狂笑する。
トウヤが腕を組み、満足げにその光景を見つめていた。
「見事な缶切り捌きだガレス! 機械のバケモノどもの装甲は、あの戦斧の前じゃただのアルミホイル同然だな! これでスモークオイルと紅蓮結晶の安定供給ルートは確保した!」
だが、彼らの圧倒的な「お片付け」を前にしても、大陸の防衛システムは沈黙しなかった。
『……単体防衛兵器ニヨル排除、困難ト判断。プロトコル変更。広域防衛機構、起動』
ゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォッッ!!!!
ガレスの活躍によって次々と「缶詰」にされていくマキナたちの残骸の奥で、歯車大陸を構成する『巨大歯車群そのもの』が、異常な速度で回転を始め、大宴殿をすり潰そうと複雑に噛み合いながら迫り始めたのである。
「おっと、機械の親玉が本気を出してきたみたいだぜ!」
トウヤが大剣の柄に手をかける。
「フッ……無粋な鉄屑どもめ。これ以上、我らの優雅な缶詰工場の稼働を邪魔させるわけにはいかんな」
ゼノスが静かに進み出て、漆黒のマントを翻した。横ではサイラスがコンソールのキーを猛烈な速度で叩き始めている。
狂戦士による「缶切りショー」が完了した今、次なるステージは、迫り来る大陸の歯車そのものを支配する、魔王と機神による【歯車ハッキング・空間ロック】の狂宴へと移ろうとしていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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