第465話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その1:開演の鋼鉄ビートと、超振動の狂戦士)
第465話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その1:開演の鋼鉄ビートと、超振動の狂戦士)
『星海樹の深淵海』を完食し、限界突破の超バフを得た規格外の開拓者たち。
次なるフロンティア――天空を埋め尽くすように回転し続ける無機物の絶景『星海機巧の超巨大歯車大陸』の全貌が、朝日に照らされて黄金色に輝き始めた。
「全機関、出力最大! 次元バンパー、空間硬化展開! あのクソデカい歯車の隙間に、強引にねじ込むぞォォォッ!!」
トウヤの咆哮と共に、移動料亭要塞『星海大宴殿』の魔導推進炉が蒼いフレアを爆発させた。
ズガァァァァァァァァァァァンッッ!!!!
けたたましい金属の摩擦音と火花を散らしながら、数百万トンの要塞が大陸の最下層を構成する巨大歯車の上へと豪快に「着岸(激突)」した。
ゼノスの空間ロックによって強化されたバンパーは、大陸の回転エネルギーを完全に弾き返し、大宴殿は強引に大陸のシステムの一部として己の足場を固定することに成功したのである。
「プハァッ! すっげぇ鉄と油の匂いだぜ! こいつは血が騒ぐな!」
甲板の最前線に躍り出たガレスが、空気を胸いっぱいに吸い込んで牙を剥く。
周囲は、見渡す限り無機質な『星海合金』で構成された鋼鉄のジャングルであった。絶え間なく回転する巨大な歯車の駆動音と、蒸気のように噴き出す高熱の『機巧オイル』の匂いが、独特の香ばしさを漂わせている。
そして、要塞という「異物」の侵入を、大陸の防衛システムが見逃すはずがなかった。
『警告。非登録生体反応ヲ検知。排除プロセス、起動』
ギギギ……ガシャンッ! ガシャンッ!
歯車の隙間から、無数の巨大な影が這い出してきた。
全身が鈍く光る超硬度の合金装甲に覆われ、動力炉から漏れ出す紅蓮の熱気を放つ機械の魔獣――古代の防衛兵器『殺戮機巧』の群れである。
先陣を切って姿を現したのは、体長十メートルを超える巨大なサソリ型のキリング・マキナであった。その尾には、致死量の高熱オイルを噴射するバーナーが備わっており、両腕の巨大なハサミは岩盤すらも容易に切断するチェーンソーの刃が高速回転している。
「カッカッカ! 出たな鉄クズども! あの分厚い装甲の奥に、トウヤが欲しがってる『極上スモークオイル』がタプタプに詰まってるってわけだな!」
ガレスが、自身の身の丈を超える超重量戦斧を肩に担ぎ、極悪な笑みを浮かべた。
『……ガレス殿。ヤツらの星海合金は、生半可な打撃では火花が散るだけで、衝撃が内部のオイルタンクに伝われば爆発して台無しになる。昨日仕込んだ「アレ」を使うんだ』
ブリッジのサイラスが、通信機越しに冷静な声で指示を飛ばす。
「分かってらぁ! 叩き割るんじゃなく、優しく『開ける』んだろ!? 任せとけ!」
ガレスは戦斧の柄に組み込まれたスイッチを、親指で弾いた。
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……!!!
瞬間、巨大な戦斧の刃先が、目にも留まらぬ速度で微振動を開始した。
それはサイラスが魔導演算で弾き出した、星海合金の分子結合を最も効率よく切断する「超高周波」。戦斧そのものが、空気を震わせる巨大な『超振動ブレード』へと変貌を遂げたのである。
「いくぞオラァァァッ! トウヤの解体刃の真似事だ!!」
ガレスが甲板を爆発的な力で蹴り出し、先頭のサソリ型マキナへと弾丸のように突撃した。
『排除、開始』
サソリ型マキナが、両腕のチェーンソーシザースを交差させ、ガレスをミンチにすべく迎撃の体勢をとる。
しかし、歴戦の狂戦士のスピードと、科学と魔導の粋を集めた「缶切り」の威力は、古代兵器の演算を遥かに凌駕していた。
「オラァッ!! 【剛腕絶技・超振動・缶切り(シェル・オープナー)モード】ォォォッ!!」
ガレスが戦斧を大上段から振り下ろした。
激突の瞬間――これまでの彼のように「ドゴォォン!」という爆発的な衝撃音は鳴らなかった。
シュパァァァァァァァァァンッ……!!!
まるで熱したナイフでバターを切るかのように。
あるいは、熟練の職人が巨大なツナ缶の蓋を滑らかに開け放つかのように。
ガレスの超振動戦斧は、サソリ型マキナの誇る超硬度の合金装甲を、火花一つ散らすことなく、綺麗に「継ぎ目」に沿って円形に切断してしまったのである。
パカッ。
装甲の『蓋』が外れ、地面に音を立てて転げ落ちる。
『……エラー。外部装甲、パージ確認。損傷……ナシ?』
マキナ自身も、己の装甲が剥がされたことに気付いていないかのように、動作を一瞬停止させた。
そして、綺麗に開けられた装甲の奥から姿を現したのは――。
ルビーのように美しく赤光りする巨大な『紅蓮の魔力結晶(超高性能コンロ)』と、その熱によって香ばしく熱せられた、琥珀色に輝く『極上スモークオイル』がタプタプに詰まった耐熱ガラスのようなタンクであった。
「ハッハッハ! 見ろトウヤ! 一滴のオイルもこぼさずに、綺麗に『開封』できたぜ!」
ガレスが切断面の美しさに満足げに頷き、戦斧を軽々と振り回す。
「最高だガレス! その調子で、群れの全部の『蓋』を開けちまえ!」
後方の甲板で巨大なフライパンを構えたトウヤが、親指を立てて歓喜の声を上げた。
「おうさ! こいつは力任せにブッ叩くより、変な快感があってクセになりそうだぜ! さぁ鉄クズども、全員まとめて極上の『オイル缶』にしてやるから並びなァァッ!!」
開演の鋼鉄ビートが鳴り響く中。
力と精密さを兼ね備えた狂戦士による、前代未聞の「巨大機械の全自動缶切りショー」が、圧倒的なスピードと静けさをもって幕を開けたのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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