第464話 深海海鮮の竜宮城フルコースと、歯車大陸を迎え撃つ機巧大対策
第464話 深海海鮮の竜宮城フルコースと、歯車大陸を迎え撃つ機巧大対策
『星海樹の深淵海』を丸ごと一本の巨大な釣り竿へと変え、わずか一週間で深海の生態系をすべて氷室へと水揚げした移動料亭要塞『星海大宴殿』。
海水を豪快に滴らせながら、次なるフロンティア『星海機巧の超巨大歯車大陸』の手前へと着陣した要塞の内部では、大樹の平定を祝う至高の『竜宮城フルコース大宴会』の幕が上がろうとしていた。
「よっしゃ野郎ども! 氷室は深海の特上美味で溢れかえってるぞ! 今夜は全部屋の居候どもを強制招集だ! 獲れたてピチピチの深海海鮮、限界まで喰らい尽くすぞォォォッ!!」
厨房のトウヤが、黄金の大剣をまな板に突き立てて咆哮する。大広間の巨大円卓には、すでに上の階のVIPルームからお馴染みの面々が全速力で駆けつけていた。
「待ってましたよトウヤ君! 一週間、部屋のモニター越しにウニやカニがバカスカ水揚げされるのを見て、創造神の神格が食欲で崩壊寸前だったんだからね!」
マイ箸とマイ醤油皿を空中に入手させ、フワフワと浮きながら鼻息を荒くする神様。
「ガッハッハ! 部屋で一人優雅に食す深海鮪も良いが、やはり宴はこの大広間の熱気があってこそ! アルカディア上皇、今夜はどちらが先に胃袋を満たすか勝負ですな!」
エルドリア帝国の元皇帝が、女帝である現皇帝への土産のコンテナなど目もくれず、樽ジョッキをガツンと机に置く。
「望むところよ元皇帝殿! 隠居して上皇となった我が身に、もはや公務のブレーキなど存在せぬ! 今夜はトウヤ殿の寿司を、大樹の根の如く胃袋に敷き詰めてみせよう!」
アルカディア上皇もまた、完全に王族の威厳をかなぐり捨てて目を血走らせていた。
「……ハァ。お前ら、深海を更地にした翌日にこれだけの飯を仕込める体力がどこにあるんだ。だが、地球の最新冷凍技術を魔法で超えたこの海鮮、食わないと絶対に後悔する……!」
賢者ケンジが、すでに胃薬の蓋を開けつつも、職人のような目で円卓に並ぶ醤油のブレンドを確かめていた。
【第一部:深海の幸・特大竜宮城フルコース】
トウヤの【解体刃】によって寸分の狂いもなく切り出され、マリアの鮮度保持光線、リルの浄化水によって磨き上げられた深海の至宝たちが、大皿に美しく盛り付けられていく。
【一品目:星海樹の深淵鮪の『極上大トロ・贅沢ひつまぶし寿司』】
「まずはこれだ! 星海樹の魔力を吸って全身が極上のサシで埋まった深淵鮪! その最も脂の乗ったハラモ(大トロ)の部分を厚切りにし、表面を軽く炙って極上の酢飯に乗せた! 醤油は、紫水晶の森のバルサミコ果汁を隠し味に煮詰めた特製甘だれだ!」
特大の寿司が円卓に並んだ瞬間、神様が我先にと口へ放り込んだ。
「んんんんんっっっ!!!!」
神様の身体から、天界を消し飛ばしかねないほどの純白の後光が爆発する。
「溶ける……! 噛んでないのに、大トロの濃厚な脂が口の中の温度で一瞬にしてサラサラのジュースに変わっちゃったよ! それをバルサミコ風味の甘だれがギュッと引き締めて、酢飯の酸味と同化していく……! 脳が、脳が美味さでとろけちゃう!!」
「美味ぁぁぁぁいッ!! このマグロ、肉質が引き締まっているのに、脂のコクがそこらの和牛の比ではありませんぞ!」
アルカディア上皇が、頬をリスのように膨らませて涙を流す。
【二品目:神話級・深海タラバガニの『丸ごと豪快一本焼き 〜星核ラードの蟹味噌ソース〜】
「次はガレスが殻を叩き割った、大人の太ももほどもある巨大なカニ脚だ! これを炭火の強火で一気に焼き上げ、中の水分を閉じ込めた! ソースは、取り出した特濃の蟹味噌に、火山神鯨の『星核油』をブレンドした超濃厚ソースだ!」
ガブッ!! と、エルドリア元皇帝が骨付き肉の如くカニ脚に喰らいつく。
「なんという……なんという弾力と甘みだ!! 焼き締まったカニの身から、香ばしいスープが溢れ出して止まらん! そこにこの、濃厚を極めた蟹味噌と星核ラードのソースが絡むと……っ! 味が重厚すぎて、ワシの覇気が勝手に漏れ出すわい!!」
元皇帝の周囲の空気が美味さの衝撃でビリビリと震え、ガレスが「ガッハッハ! 最高の食いっぷりだぜ親父!」と骨ごとカニをバリバリと噛み砕いていた。
【三品目:星海発光雲丹の『黄金スフレ茶碗蒸し』】
「シメの温物だ! 家屋サイズのウニからジンが綺麗に抜き出した、発光するウニミソ! これをリルの浄化ミルクと卵で合わせ、限界までふわふわに蒸し上げたスフレ風の茶碗蒸しだ!」
スプーンですくった賢者ケンジが、一口食べた瞬間、そのままガタッと椅子から崩れ落ちた。
「あかん……これはアカンやつだ……。口に入れた瞬間に、ウニの濃厚な磯の香りとミルクの甘みがフワッと消える。食感が『空気』なのに、旨味だけが舌の上に数トンもの質量で残ってやがる……。地球のミシュラン三ツ星シェフが全員土下座して弟子入りを志願するレベルだぞ、これ……」
「ワォォォォンッ!!(カニの身にウニ乗せて食うとさらに美味いぞー!!)」
クロが贅沢すぎる食べ方で大皿を舐め尽くし、リルも全身をエメラルドグリーンに発光させながら、大広間をポよポよと飛び跳ねていた。宴は深夜を過ぎても衰えず、居候VIPたちと開拓者たちの笑い声は、深海の余韻をすべて胃袋へと収めるまで続くのであった。
【第二部:歯車大陸の作戦会議 〜鉄とオイルの異形環境〜】
翌朝。
大宴殿の最上階・展望作戦会議室。
前夜の深海海鮮フルコースによる限界突破バフのおかげで、開拓者たちの肌はツヤツヤ、魔力と体力は完全にカンストしていた。VIPたちが「最高の宴だった……」と各自の部屋で死んだように爆睡している中、トウヤたちは真剣な表情でホログラムマップを囲んでいた。
窓の外にそびえ立つのは、雲海を裂いて咆哮を上げるように噛み合い、回転し続ける無数の超巨大歯車。そして、その歯車が幾重にも重なって形成された『星海機巧の超巨大歯車大陸』である。
「さて、サイラス。このバカデカい時計の親玉みたいな大陸だが、内部の偵察データは上がってるか?」
トウヤが熱いお茶をすすりながら尋ねる。
『ああ。これまでの環境とは一線を画す、完全なる【無機物の要塞】だ』
サイラスがコンソールを叩くと、ホログラムに歯車大陸の内部構造が映し出された。
『大陸の全土が超硬度の星海合金で構成されており、そこを動かすのは「蒸気」ではなく、純粋な魔力と高熱の「機巧オイル(アストラル・オイル)」。そして、そこに生息する魔獣は……生物ではない。自己進化を繰り返す古代の『殺戮機巧』どもだ』
「機械のバケモノか……。おいトウヤ、そいつらって『美味い』のか? 鉄クズを食っても歯が折れるだけだぜ?」
ガレスが首を傾げ、自慢の牙を触る。
「ガッハッハ! 甘いなガレス!」
トウヤが不敵に笑う。
「現代知识(おれの知識)から言わせてもらえば、機械仕掛けのバケモノってのは、最高の『調理器具』であり、中身は『極上のスパイスやオイル』の宝庫なんだよ!」
「……調理器具と、オイル?」
エリスが不思議そうに小首を傾げる。
「そうだ! ヤツらの体を動かしている『機巧オイル』。これは、何万年も高圧の歯車の中で練り上げられた、超特濃の『燻製風味のオイル』である可能性が高い! これを料理の仕上げに一滴垂らせば、どんな肉も一瞬で高級ベーコンのような香ばしさを纏う。さらに、ヤツらの動力核である『紅蓮の魔力結晶』。これは、常時一定の高温を保つ天然の『超高性能コンロ(スパイス)』だ!」
「……なるほど。鉄の装甲を綺麗に剥がし(パージ)、中のオイルと熱源(結晶)を収穫すれば、次なる美味のインフラが完成する、というわけだな」
ジンの瞳に、暗殺者としての、そして料理アシスタントとしての鋭い光が宿る。
『だが、攻略にはいくつかの明確な障害がある』
サイラスがホログラムの数値を赤く点滅させた。
『第一に、ヤツらの装甲は、これまでの魔獣の比ではない。ガレス殿の物理粉砕でも、ただ叩くだけでは火花が散るだけで、中のオイルタンクを爆発させて食材を台無しにする恐れがある。第二に、大陸全体が「一定の規則性」で常に回転・移動しているため、大宴殿の爆走ルートがミリ単位で狂えば、歯車に挟まれて要塞のインフラが損傷する』
「挟まれたら要塞がガリガリになっちまうってわけか。……よし、なら対策は決まりだ! 今日は一日、あの鉄屑大陸を美味しくお片付けするための『準備』に費やすぞ!」
【第三部:対策のための準備 〜機巧大ハッキング&包丁研ぎ〜】
トウヤの指示の元、開拓者たちは即座に大宴殿の機能拡張と、各々の装備のカスタマイズへと取り掛かった。
【対策①:ガレスの戦斧の『超振動・缶切り(シェル・オープナー)モード』】
「ガレス! お前の斧の峰に、サイラスの魔導高周波を同期させるぞ。ただぶっ叩くんじゃなく、刃先を『超振動』させることで、ヤツらの合金装甲をバターみたいに滑らかに切り裂く、特大の『缶切り』へと改造するんだ!」
「ガッハッハ! 缶切りだと!? 面白いじゃねぇか! これで中の美味いオイルを溢れさせずに、外の缶(装甲)だけを綺麗にパージしてやるぜ!」
大宴殿の工房で、サイラスのマシンがガレスの戦斧に超伝導高周波回路を焼き付けていく。
【対策②:ゼノスとサイラスの『歯車ハッキング・空間ロック』】
『大宴殿の進行ルートにある巨大歯車群の回転周期は、私の演算で100%予測する。だが、突発的な敵の防衛システムによるイレギュラーな動きに対しては……』
「フッ、私の空間魔術で、噛み合う歯車の『時間と空間』を一時的に完全固定してやろう。機神の演算と魔王の空間支配があれば、あの巨大な機械仕掛けの大地も、ただの動かない調理台に過ぎん」
ゼノスが杖から黒い魔力を放ち、要塞のバンパーに直接「空間硬化」のエンチャントを施していく。時速500キロの突撃に耐える、絶対の盾の完成である。
【対策③:トウヤの現代知識・対機械用『電磁スパイス』の仕込み】
トウヤは厨房で、これまでの階層で手に入れた『星海磁雷の紫金松露』の粉末と、ハバネロ蓮根の成分を組み合わせ、特殊な魔力調味料を錬成していた。
「ルミナ、マリア! この激辛磁気スパイスを、お前たちの魔法の風と光に乗せて、歯車大陸の内部へ一気にバラ撒くんだ。機械のバケモノどもは、このスパイスの強力な磁気と電磁波を浴びることで、内部の回路がバチバチにショートして、外側を一切傷つけずに『中身だけが電子レンジみたいに熱々に加熱(気絶)』するはずだ!」
「まぁ……! スパイスを電磁波に変えて、中身を美味しく温めながら無力化するのですわね!」
「風の精霊たちも、スパイスの粉を隅々まで届けるのが大得意ですわよ!」
解体刃の切れ味を極限まで研ぎ澄ますジンとトウヤ。
上空からの索敵を機械の電波妨害に負けないよう、神眼の魔力を強化するクー。
オイルの漏出を完璧にキャッチするため、全身の吸収膜を拡張するリルとクロ。
夕刻を迎える頃には、移動料亭要塞『星海大宴殿』は、ただの潜水艦から、機械仕掛けの大地を丸ごと解体・収穫するための**【弩級機巧解体プラットフォーム】**へと完璧な進化を遂げていた。
「よし、準備はすべて整ったな!」
要塞の最先端デッキに立ち、黄金の大剣を抜き放ったトウヤが、眼前に迫る歯車大陸を睨みつける。
「鉄クズだろうが殺戮マシンだろうが、俺たちの前ではただの『缶詰』だ! 明日は朝から、あの歯車大陸のネジ一本、オイル一滴まで、根こそぎお片付け(乱獲)して喰らい尽くしてやるぞォォォッ!!」
「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
深海の宴で活力をみなぎらせ、現代知識とチート魔法によって「対機械用クッキングシステム」を完成させた規格外の開拓者たち。移動料亭要塞『星海大宴殿』は、黄金に輝く歯車の大陸へと向けて、明日の大蹂躙(大収穫)の朝へ向け、轟音と共に爆走を開始するのであった。
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