第462話 深海潜航・アストラルサブマリンの限界と、トウヤの狂気的『超特大・星海樹フィッシング』構想
第462話 深海潜航・アストラルサブマリンの限界と、トウヤの狂気的『超特大・星海樹フィッシング』構想
紅蓮の火山地帯を完全平定し、神や王たちとの狂乱の大合同宴会を終えた移動料亭要塞『星海大宴殿』。
彼らの次なる狩り場は、見渡す限りの青と、その深淵から天を突くほどに巨大な「光り輝く大樹」が根を張る、世界そのものが水没したかのような超巨大水塊――『星海樹の深淵海(アストラル・ディープ・オーシャン・オブ・ワールドツリー)』であった。
「全機関、密閉完了! マリア、水圧耐性結界を最大に! サイラス、潜航開始だァァッ!」
『了解した。超弩級・深海潜航モード(アストラル・サブマリン)、ダイブ!!』
ズゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォッッ!!!!!
数百万トンの質量を持つ要塞が、凄まじい水飛沫を上げてエメラルドグリーンの深淵へと突入する。
マリアの放つ【絶対防御・星海耐圧結界】が要塞全体を透明なドームで包み込み、ゼノスの空間魔術が水圧を推進力へと変換する。蒼いフレアを噴射していた推進炉は、海水を吸い込んで後方へ超高圧で撃ち出す「水流ジェット・エンジン」へと切り替わっていた。
「うおおおっ……! すっげぇ景色だぜ!!」
透明なドーム越しに外を見渡したトウヤが、感嘆の声を上げる。
海中には、巨大な『星海樹』の根が、まるで大陸のように縦横無尽に張り巡らされている。そしてその根が放つ黄金色の光が、深海でありながら真昼のように明るく海中を照らし出し、未知の海産物たちが巨大な群れを成して泳ぎ回っていた。
第一フェーズ:深海乱獲の幕開けと、極上海鮮丼
「カッカッカ! 見ろトウヤ! あの光る根っこの周りに、クソデカいマグロみたいなヤツが泳いでやがるぞ!」
ガレスが窓ガラスをバンバンと叩く。
「あれは『星海樹の深淵鮪』ですわね! 星海樹の養分をたっぷり含んだ海水をエラ呼吸で取り込み、全身が極上の大トロと化しているはずですわ!」
エリスが令嬢の仮面をかなぐり捨て、すでにレイピアを握りしめている。
「よし! サイラス、要塞のバキュームパイプと『魚雷発射管』を繋げ! 俺の大剣の魔力を込めた【神速解体・真空水刃魚雷】を撃ち込むぞ!」
トウヤが自身の【解体刃】のオーラを、サイラスの魔導システムに入力する。
『フッ……海中の水圧を逆に利用した真空の斬撃だな。発射!』
シュボォォォォォォッ!!!
要塞の先端から放たれた目に見えない「解体の水流刃」が、群れを成して泳ぐ数十匹の十メートル級深淵鮪に命中。水中で一切の苦痛を与えることなく、鱗と骨だけを綺麗にパージし、極上の大トロブロックだけを空中に(水中に)残した。
「サイラス! そのままバキュームで吸い込め!」
ズゴォォォォォォッ!!
要塞の回収パイプが、海水をフィルターで弾き出しながら、極上の大トロブロックだけを氷室へと次々に吸い込んでいく。
「ワォォォォンッ!(海底にすっげぇ美味そうなトゲトゲがあるぞー!!)」
クロが指し示した海底には、家屋ほどの大きさがある『星海発光雲丹』がビッシリと群生していた。
「オラァッ! 殻を割らずに中身のミソだけを吸い出す【遠隔ストロー・バキューム】だァァッ!」
ダイブ初日。彼らは潜水艦と化した大宴殿の最新設備とトウヤたちの解体スキルを駆使し、深淵鮪の大トロや、濃厚すぎる発光ウニのミソを大量に水揚げした。
その夜は、炊きたての銀シャリに深海海鮮を山のように盛り付けた「超特大・星海海鮮丼パーティー」が開催され、開拓者たちは深淵海の極上の美味に歓喜の咆哮を上げていた。
しかし――。
第二フェーズ:三日目の壁、効率悪化のジレンマ
深淵海へのダイブから三日が経過した頃。
大宴殿の最上階・展望作戦会議室は、初日の歓喜から一転し、どこか重苦しい空気に包まれていた。
「……美味い。たしかにこの海のバケモノどもは、どれを食ってもほっぺたが落ちるほど美味い」
トウヤが熱いお茶をすすりながら、忌々しそうにホログラムマップを睨みつける。
「だが……圧倒的に『効率』が悪い!!」
『……トウヤ殿の言う通りだ』
ブリッジから通信を繋いだサイラスが、重いため息をつく。
『この三日間、常にフル稼働で乱獲を続けているというのに、氷室の空き容量はまだ「60%」も残っている。天空群島のブラックホール作戦や、紅蓮結晶地帯の時の狂気的な収穫ペースに比べると、明らかに遅すぎる』
「理由は分かってる。この海特有の『地形』と『海流』だ」
ジンが腕を組み、冷静に分析を述べる。
「あのでっかい『星海樹』の根っこですわね」
エリスが窓の外、迷宮のように入り組んだ巨大な光る大樹の根を指差した。
「お魚さんたちもバカではありませんわ。要塞が近づくと、みんなあの複雑な根っこの隙間の奥深くへと逃げ込んでしまいますの。数百メートル、数キロ単位の隙間では、大宴殿の巨体では到底追いきれませんわ!」
「おまけに、あの根っこが巻き起こす『星海樹の還流』! これが厄介極まりないのよ!」
ルミナが星屑の杖を振り回してプリプリと怒る。
「水の精霊たちに海流のナビゲートをお願いしても、大樹が呼吸するたびに水流がランダムに渦を巻くから、要塞の姿勢制御に推進力のほとんどを持っていかれてしまうんですの!」
「カッカッカ! 水の中じゃ俺の斧も水の抵抗で威力が半減しちまうからな! 外に出て暴れようにも、動きが鈍くなっちまってイライラするぜ!」
ガレスが筋肉をピクピクさせながら不満を漏らす。
そう。広大すぎる海、立体的に入り組んだ星海樹の根(天然の障害物)、そして要塞の機動力を殺す複雑な海流。
これらが完璧な防御壁となり、大宴殿の「底引き網戦法」は、大物や群れの本体を逃がすという致命的なロスを生み出していたのである。
「天空の時みたいに、またブラックホールで海ごと吸い込んじゃえばいいんじゃねぇか?」
ガレスの提案に、サイラスが即座に首を振る。
『それは不可能だ。水中で極大の引力を発生させれば、周囲の水圧が一箇所に集中し、マリア殿の結界を以てしても、大宴殿そのものが水圧の圧縮崩壊に巻き込まれてペシャンコになる』
「……クソッ。目の前に極上のご馳走が泳いでるってのに、要塞がデカすぎて根っこの奥まで手が出せないなんて……俺の開拓魂が絶対に許さねぇ!」
トウヤが頭を掻きむしり、ギリギリと歯ぎしりをする。
「かといって、小型艇でチマチマ潜って手作業で狩るなんて、何年かかるか分かったもんじゃない。俺たちは『全部』食い尽くしてぇんだよ!」
沈黙が会議室を包む。
海という圧倒的な質量と、星海樹という巨大な防壁。この二つを前に、規格外の開拓者たちもついに足を止めるしかないのか。
「……要塞で追いかけるから、逃げられるんだ」
不意に、トウヤがポツリと呟いた。
「え?」
マリアが不思議そうにトウヤを見る。
「根っこの奥に逃げ込まれるから手が出せない……。水圧のせいで全部吸い込むこともできない……」
トウヤの瞳に、再びあの『狂気的な発明家』の光が、メラメラと燃え上がり始めた。
「なら、追いかけるのをやめればいい。逃げ込む根っこがあるなら、そこから『自分から出てくる』ように仕向ければいいんだよ!!」
第三フェーズ:トウヤの悪巧み、【超次元・星海樹フィッシング作戦】
「自分から出てくるように仕向ける……? トウヤ殿、まさか」
ゼノスが目を細める。
「ああ! 海で獲物を一網打尽にする、人類最古にして最強の漁法! それは『釣り』と『定置網』だ!!」
トウヤがホログラムマップの「星海樹」のグラフィックを指差し、そこに巨大な魔法陣のような図形を描き込んだ。
「サイラスのファクトリーで、この海にいる全生物の食欲を狂わせる『究極の撒き餌』を大量に作る! それを海流に乗せて海全体にバラ撒き、根っこの奥に引きこもってるバケモノどもを、大宴殿の周辺という名の『生簀』に全部おびき寄せる!」
「究極の撒き餌! なるほど、匂いで釣るというわけですね!」
エリスがポンッと手を打つ。
「だがトウヤ。おびき寄せた後、どうやって一網打尽にするんだ? ブラックホールは使えないんだろう?」
ガレスの疑問に、トウヤは極悪な笑みをさらに深めた。
「だから! この邪魔くさい『星海樹』そのものを利用するんだよ!」
トウヤがホログラムの星海樹の「幹」と「根」を指差す。
「マリアの光魔法とルミナの精霊魔法を、この星海樹の根から直接『ハッキング(同調)』させて流し込む! するとどうなる? 星海樹そのものが、超巨大な【魔法の定置網(釣り糸)】へと変化する!!」
『な、なんだと……!? 世界樹に等しい巨大な神木を、漁具の骨組み(インフラ)として乗っ取るというのか!?』
サイラスが、トウヤの常識外れの発想に驚愕の声を裏返らせた。
「そうだ! 撒き餌で寄せ集めた特大の海産物どもを、星海樹の根っこから放つ『スタン魔法(電気ショック)』と『光の網』で一瞬にして麻痺させ、絡め取る! あとは浮かび上がってきた気絶状態の極上食材を、大宴殿の甲板から俺たちが優雅に釣り上げる(回収する)だけだ!!」
「カッカッカ!! 痛快だぜ! 海の主(星海樹)を、俺たちの釣り竿に変えちまおうってのか!!」
ガレスが大爆笑し、円卓をバンバン叩く。
「フッ……神が創りし大樹を、魔王と料理人の手で漁具に堕とす。まさに神への最大の冒涜にして、最高の娯楽(ディナーの仕込み)だな!」
ゼノスもワイングラスを傾け、愉悦の笑みを浮かべた。
「……ルミナさん、マリアさん。星海樹への魔法の同調、いけそうですか?」
ジンが二人に視線を向ける。
「女神の御名において! 生命の樹に私の光の魔力を注ぎ込み、一時的にお借りするだけですもの! 完璧な光の網を張ってみせますわ!」
「水の精霊たちも、星海樹の中の水分を通じて一気に魔力を浸透させてみせますわよ!」
二人の聖女と精霊使いが、力強く頷く。
「よし! そうと決まれば、モタモタしてる暇はねぇ!」
トウヤが大剣を引き抜き、天高く突き上げた。
「これより大宴殿は、深海を爆走する潜水艦から、星海樹と同化する『超巨大定置網プラットフォーム』へと変形する! サイラス、究極の撒き餌の調合を急げ! マリア、ルミナ! 星海樹のメインルートへのハッキング準備だ!」
「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
三日間の停滞と効率の悪さを、一瞬の狂気的閃きによって「星海樹そのものを釣り竿にする」というトンデモない力技で打開しようとする開拓者たち。
【星海樹の深淵海】を丸ごと食い尽くす、前代未聞の【超次元・星海樹フィッシング作戦】が、今、深海の底で静かに、そして暴力的に幕を開けようとしていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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