第452話 三ツ星のシャッフル・ディバイド(9部構成・その1:青炎の極寒地帯と、剛腕が砕く『絶対零度の熱々霜降り肉』)
第452話 三ツ星のシャッフル・ディバイド(9部構成・その1:青炎の極寒地帯と、剛腕が砕く『絶対零度の熱々霜降り肉』)
「オラオラオラァッ!! もっとスピード上げろファルコン! 一番美味そうな匂いのするド真ん中に突っ込むぞォォッ!!」
「無茶言うなガレス! この青白い霧、普通の水蒸気じゃねぇ! 触れたそばからペガサスの羽が凍りつく『極寒の磁気ガス』だぞ!」
時速数百キロで紅蓮結晶地帯の左ルート――『青炎の極寒地帯』へと射出された、サイラス特製の中型ホバー採取艇。
大宴殿本体ほどの圧倒的質量はないものの、小回りの利く流線型のボディと強靭な装甲を持つその採取艇の甲板で、丸太のような腕を組みながらガレスが大笑いしていた。
その頭上では、ファルコンが天馬ハヤテに跨り、数十騎のペガサス隊と共に採取艇を護衛しながら猛スピードで並走している。
彼らの眼下に広がるのは、焦熱のフロンティアの中にあって明らかに異質な、狂気の生態系だった。
周囲の赤い結晶はまるで氷柱のように鋭く凍てつき、大地を流れるマグマは赤ではなく「青白い炎」となって燃え盛っている。熱を放っているように見えて、その実態はすべてを凍てつかせる「絶対零度の冷炎」。超高温の地殻エネルギーと、未知の極寒魔力が衝突し合い、熱と氷がバチバチと火花を散らして共存する異常冷却地帯である。
「ルミナ! ペガサスたちの羽が凍らねぇように、風のカバーを頼む! それと、この視界を遮る青い霧を吹き飛ばしてくれ!」
「はいっ、お任せくださいな! 精霊たち、少し寒いけど頑張って! 【精霊絶技・春風の暖気払い(スプリング・ブリーズ・クリア)】!!」
採取艇の舳先に立つルミナが、星屑の杖をクルリと回して柔らかな風を巻き起こす。
彼女の放った温かい春の風が、採取艇とペガサス隊をスッポリと包み込み、周囲に立ち込めていた極寒の青白い霧を左右へと一気に吹き飛ばした。
「ワォォォォンッ!!(ルミナ、ナイス! 霧が晴れたら、すっげぇ美味そうな匂いがハッキリしてきたぞ!!)」
採取艇の先端で鼻をヒクつかせていた神狼クロが、尻尾をピンと立てて青いマグマの川の奥を睨みつける。
「ほう! クソ寒いのに美味そうな匂いってのは、どんなご馳走だクロ?」
ガレスが超重量戦斧を肩に担ぎ、牙を剥く。
「ワォン!(外はカチカチの氷の匂いだけど、中からは肉汁が煮えたぎる『熱々の超特濃シチュー』みたいな匂いがするんだ!)」
クロの報告とほぼ同時であった。
ルミナの風によって晴れた青炎マグマの川底から、ズゴゴゴゴゴォォォォンッ!!という地鳴りと共に、巨大な氷と炎の塊が空高く跳ね上がった。
『ガロォォォォォォォォォォォォッッ!!!!』
着地したその姿は、体長十五メートルを超える規格外の巨熊。
しかし、ただの獣ではない。全身を覆うのは毛皮ではなく、絶対零度の青炎マグマが固まってできた「超硬度の青水晶の氷殻」。そして、その半透明の氷の装甲の奥、肉体の中心部には、まるで小型の太陽のようにドクドクと脈打つ「超高温の赤いマグマ(肉汁)」が透けて見えていた。
極寒の鎧の中に、煮えたぎる灼熱の肉体を隠し持つ変異魔獣――**『青炎氷殻の溶岩熊』**である。
「うおおおっ! なんちゅうバケモノだ! 外は氷で中はマグマだと!?」
上空のファルコンが目を剥く。
「カッカッカ! クロの言った通りだぜ! 極寒の環境から内臓を守るために、皮下脂肪の代わりに『超高温のマグマ(極上の脂)』を蓄えやがったんだ! あれはただの熊肉じゃねぇ、天然の『熱々・特濃肉汁シチュー』が詰まった最強の霜降り肉だァァッ!!」
ガレスの筋肉が、究極の美食を前にして歓喜の産声を上げ、メキメキと膨張を始める。
『ガァァァァッ!!』
縄張りを侵された溶岩熊が、その巨大な氷の腕を振り上げ、採取艇に向かって絶対零度の青炎ブレスを吐き出そうと大きく息を吸い込んだ。
「撃たせるかよ! ファルコン、上から牽制だ!」
「おう! ペガサス隊、氷の鎧の隙間を狙え! 【天馬の真空風刃】!」
上空から、ペガサスたちの蹄から放たれた無数の真空の刃が、溶岩熊の巨体に降り注ぐ。ガインッ! ガインッ! と氷殻に弾かれるものの、風の連撃によって熊のブレスのタイミングが完全にズレ、顔面を覆うように防御の姿勢を取らせることに成功した。
「クロ、ルミナ! 足元を封じろ!」
「ワォォン! 【神狼の影縫い】!!」
「水の精霊たち! 【極寒の拘束縛】!」
クロの影が水面を這うように伸び、溶岩熊の巨大な影を深々と突き刺して動きを停止させる。さらにルミナが周囲の極寒環境を逆利用し、青炎マグマを瞬時に硬化させて熊の両足を岩盤ごとガッチリと凍りつかせた。
「完璧なお膳立てだぜ! あとは、あの中の『熱々のシチュー』を一滴もこぼさずに、外の硬ぇ殻だけを叩き割る!!」
ガレスが採取艇の甲板を爆発的な踏み込みで蹴り上げ、時速数百キロの勢いのまま、空中で身体を大きく反らせた。両腕の筋肉がはち切れんばかりに膨張し、戦斧の平らな峰(ハンマー部分)に、周囲の青炎すらも吹き飛ばすような圧倒的な闘気が収束していく。
「力任せにブッ叩くだけじゃねぇ! 外の氷だけを綺麗にヒビ割る、繊細な『殻剥き』だァァッ! 【剛腕絶技・青氷殻の達磨落とし(フロスト・シェル・クラッシュ)】ォォォッ!!」
ズガァァァァァァァァァァァァァァンッッ!!!!
ガレスの超重量戦斧が、溶岩熊の脳天の氷殻に垂直に叩き込まれた。
その一撃は、肉体にダメージを与えることなく、外側を覆う「絶対零度の青水晶の鎧」にのみ衝撃波を伝播させる神技のハンマー・コントロール。
ピキッ……パリーンッ!!!
美しいガラスの割れる音と共に、体長十五メートルの溶岩熊を覆っていた極寒の鎧が、一瞬にして粉々に砕け散り、空中に青いダイヤモンドの粉となって舞い散った。
そして中から現れたのは、傷一つない、湯気をモウモウと立てる「超高温に仕上がった極上の巨大霜降り熊肉」であった。
「ワォォォォンッ!!(シメは俺だー!!)」
鎧を剥がされ、熱気を放ちながらポカンとしている熊肉の延髄へ、クロが残像を伴って飛び掛かり、無音の【神速の噛み締め】で一撃のもとに神経を断ち切った。
「サイラスのバキュームに放り込め!」
ドスゥゥゥン! と気絶した超特大の熊肉が、ホバー採取艇の回収ハッチへと見事に吸い込まれていく。
「ハッハッハ! 最高の滑り出しだぜ! 中は熱々のトロトロ、極上の溶岩熊ゲットだ!!」
ガレスが採取艇に着地し、豪快に笑い声を上げる。
赤と青、熱と氷が入り乱れる異常環境。
【チームC:剛腕&暴風・大暴れチーム】は、持ち前の圧倒的な物理と風の連携で、この過酷な極寒地帯の生態系を、力強く、そして豪快に刈り取り始めていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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