第450話 氷室の超圧縮整理(パッキング)と、地上への『凶悪出前(デリバリー)飯テロ作戦』
## 第450話 氷室の超圧縮整理と、地上への『凶悪出前飯テロ作戦』
「星海浮遊の天空群島」をブラックホール作戦で完全平定し、次なるフィールド『星海焦熱の紅蓮結晶地帯』の入り口に要塞を停泊させた『星海大宴殿』。
しかし、彼らが次なる美食の地へ足を踏み入れる前に、どうしても解決しておかなければならない「致命的な問題」があった。
『……トウヤ殿。改めて報告するが、次元拡張を最大まで施した氷室の容量は現在、正真正銘の「100%」だ。もう塩一粒すら入らない』
ブリッジのメインコンソールに座るサイラスが、血走った目でモニターの真っ赤な警告ランプを指差した。
「ああ、分かってる! だからこそ、今日は朝から大掃除(大整理)だ!」
トウヤはねじり鉢巻を締め直し、大宴殿の巨大な『絶対零度・熟成氷室』の扉の前に立った。その後ろには、ゼノス、エリス、マリアを始めとするメンバー全員が腕をまくって待機している。
扉を開けると、そこには絶望的なまでの「食材の壁」がそびえ立っていた。
神藍覇竜の特大蒲焼用フィレ、雷鳴猪の特上ロース、巨大蓮根、風船林檎、雲海白桃、そして飛翔天牛の極上霜降り肉のブロック……。それらが、体育館数十個分の広さを持つ氷室の天井まで、文字通りテトリスのようにギッシリと詰め込まれている。
「カッカッカ! これ全部俺たちの胃袋に入ると思うとワクワクするが、さすがに新しい獲物を入れる隙間はねぇな!」
ガレスが巨大な肉の壁を見上げて豪快に笑う。
「さぁ、トウヤの現代知識と俺たちの魔法を融合させる時だ! ゼノス、サイラス、準備はいいな!」
「フッ……我が空間魔術の精密な制御、とくと見るがいい」
『パッキング・プログラム、いつでも起動可能だ!』
【氷室のウルトラ圧縮整理プラン】が、ここに発動した。
### 第一フェーズ:空間圧縮・真空フリーズパック
「よし、まずは手前にある『飛翔天牛の肉ブロック』からだ! トウヤ、いけ!」
トウヤが【解体刃】の魔力を乗せた黄金の大剣を振るい、巨大な肉のブロックを、調理しやすい数十キロ単位の「真空魔力パック」へと瞬時に小分けしていく。
「エリス、ジン! 肉のドリップ(旨味)が偏らないように均等に並べろ!」
「承知いたしましたわ! 【貴族剣技・神速整列】!」
エリスのレイピアが目にも留まらぬ速さでパックを弾き、氷室の空中に整然と並べていく。
「ゼノス、今だ!」
「【絶対隔離・空間超圧縮】!!」
ゼノスが杖を振り下ろした瞬間、空中に並べられた数百個の真空魔力パックの『周囲の空間そのもの』が、ギュルルルンッ! という音と共に、内側へ向かって超高圧で均一に収縮を始めた。
肉の細胞や旨味の水分を一切押し潰すことなく、空間の「座標」だけを魔法的に折り畳み、あっという間に元の10分の1のサイズ(手のひらサイズ)へと超圧縮してしまったのだ。
『見事だゼノス殿! パック内部の鮮度係数、アミノ酸濃度の低下ゼロ! 完璧な【マジック・真空フリーズパック】の完成だ!』
サイラスの操作する魔導ファクトリーのアームが、手のひらサイズになった超圧縮肉パックを次々と回収し、新しい専用ストレージへとシステマチックに格納していく。
「この調子で、果物もキノコも覇竜の肉も、全部圧縮するぞォォォッ!!」
開拓者たちの狂気的な作業効率(ライン工スキル)により、氷室にそびえ立っていた絶望的な食材の壁は、猛烈な速度で「超高密度・極小サイズの宝石箱」へと変換されていった。
数時間後には、パンパンだった氷室の容積は驚異の「15%」にまで激減し、広大な空きスペースがぽっかりと口を開けていた。
「ふぅ……! やったぜ! これで次の火山地帯でどれだけ乱獲しても余裕だ!」
トウヤが汗を拭い、満足げにサムズアップした。
### 第二フェーズ:地上への一斉出前作戦
「さて、氷室の圧縮は完璧に終わった。だが、圧縮したとはいえ、そもそもの『量』が多すぎる。数ヶ月じゃ食い切れねぇ」
トウヤが、超圧縮されたにも関わらず、まだ山のように積まれている「特上食材のコンテナ」を指差した。
「だから約束通り、こいつらは地上へ『お裾分け(飯テロ)』してやる! サイラス、ファルコン! 地上の居残り組(配達部隊)を繋げ!」
『了解した。次元通信、接続!』
サイラスがコンソールを操作すると、大広間の空間が歪み、アルカディア王国およびエルドリア帝国の迎賓館(大宴殿の地上出張所)で待機している、影歩く者や夜梟の精鋭たちの姿がホログラムで映し出された。
『はっ! トウヤ様、サイラス様! 配達部隊、いつでも出動可能です!』
「ご苦労! 久々の大仕事だぞ!」
トウヤが極悪な笑みを浮かべて指示を飛ばす。
「これからお前たちの元へ、大宴殿の『次元通路』を通じて、深層の極上食材を大量に投下する!
アルカディア王国のガルド宰相や国王には『飛翔天牛の極上霜降り肉』と『雲海白桃』を!
エルドリア帝国の皇帝には、刺激的な『雷鳴猪の特上ロース』と『紫金トリュフ』を届けてやれ!
もちろん、俺が書いた『最高に美味い調理法のレシピ』付きだ!」
『し、深層の神話級食材の……デリバリーですね! 承知いたしました!!』
ホログラムの向こうの配達員たちが、武者震いしながら敬礼する。
「よし! 食材投下開始ィィィッ!!」
ズゴォォォォォォォォンッ!!!
大宴殿の最下層に開かれた次元の穴へ向けて、超圧縮を解除された巨大な肉のブロックやフルーツの山が、滝のように地上へと送り込まれていった。
### 地上パニック:アルカディア王国、狂乱の王宮ディナー
その日の夕刻。
アルカディア王国の王城では、国王とガルド宰相が、山積みの書類(大迷宮から産出される莫大な資源の処理や他国との外交)に追われ、死んだ魚のような目で執務デスクに突っ伏していた。
「……腹が、減りましたな、陛下」
「……うむ。だが、王宮のシェフが作る最高級のディナーを前にしても、どうにも食指が動かんのだ。我々の舌は、すでに『あの男たち(トウヤ一行)』の料理によって完全に狂わされてしまった……」
二人が深い絶望の溜息をついた、まさにその時である。
『失礼いたします!! トウヤ様率いる「悠久の踏破者」からの、特別デリバリーをお持ちいたしました!!』
執務室の窓を突き破るようにして(鍵はかかっていたが空間転移で)、サイラス配下の『影歩く者』が姿を現した。
その手には、巨大な保冷魔力箱が握られている。
「な、なんだと!? トウヤ殿からのデリバリーだと!?」
ガルド宰相が、椅子を蹴り倒して立ち上がった。
『はい! 今回の品は【星海飛翔の天牛の極上霜降り肉】および、【天空完熟の雲海白桃】にございます! トウヤ様からのレシピ通り、すでに王宮の厨房で調理を済ませております!』
ワゴンに乗せられて運ばれてきたのは、黄金色の美しいサシが入った天牛肉の『極厚ステーキ』。熱々の鉄板の上で、醤油と天空蜂蜜のソースが焦げる、暴力的かつ悪魔的な香りが執務室を完全に支配した。
「おおおおおっ……!! こ、この香りは……!!」
国王が震える手でナイフとフォークを握りしめ、ステーキを口に運ぶ。
「「…………ッッッ!!!!!!」」
次の瞬間、アルカディア国王とガルド宰相の脳髄で、美味の超新星爆発が起きた。
雲海の高山植物で育った天牛の気高い脂が、口の温度で雪のように溶け出し、噛むほどに溢れる強烈な旨味が、疲労困憊だった彼らの細胞を強制的に覚醒させる。
「う、美味ぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッ!!!!」
ガルド宰相が、年甲斐もなく執務机の上に立ち上がって絶叫した。
「なんという柔らかさ! なんという脂の甘み! 王宮の最高級和牛が、ただのゴム草履に思えるほどの圧倒的な次元の違い!! トウヤ殿ぉぉぉ! 貴方様はやはり食の神であったかァァァ!!」
「白桃のデザートも凄まじいぞ! 一口食べただけで、寿命が10年は延びた気がするわ!!」
国王も顔中をソースと果汁だらけにしながら、涙を流して肉に喰らいついた。
アルカディア王国の首脳陣は、トウヤが送り込んだ深層の凶悪な飯テロの前に完全に陥落し、書類仕事などすべて放り投げて、深夜まで狂喜乱舞の宴を繰り広げることとなった。
### エルドリア帝国、雷鳴のスパイスに平伏す
一方、エルドリア帝国。
冷徹にして武闘派で知られる皇帝もまた、突如として夜梟の配達員によって届けられた『雷鳴猪の特上ロースステーキ〜紫金トリュフ添え〜』を前に、完全に言葉を失っていた。
「……な、なんだこの肉は。噛んだ瞬間に、口の中で雷が弾けたぞ!?」
皇帝が、雷岩塩のパチパチとした刺激と、紫金トリュフの妖艶すぎる香りに脳を揺さぶられ、震える声で呟く。
「この刺激……そして、この漲る力! まるで深層の雷鳴そのものを喰らっているようだ! あの者たち(悠久の踏破者)は、これほど規格外のバケモノを日常的に狩り、こんなにも美味い飯を食っているというのか……!!」
皇帝は、トウヤたちの圧倒的な武力と『食の次元の違い』を見せつけられ、もはや畏怖を通り越して、純粋な食欲の虜となって平伏した。
「……配達員よ。トウヤ殿に伝えてくれ。大宴殿の『残り物』で構わん。いつでも、いくらでも帝国へ送りつけてくれ、と……!」
### 次なる大地の入り口にて
『……トウヤ殿。地上からの報告が入った。アルカディア王国もエルドリア帝国も、我々のデリバリーによって完全に「機能不全(極上の満腹による堕落状態)」に陥ったとのことだ。感謝の言葉と、莫大な代金(金貨の山)が次元通路を通じて送金されてきたぞ』
ブリッジで報告を受けたサイラスが、呆れたような、しかし誇らしげな笑みを浮かべる。
「ハッハッハ! そいつは重畳! 地上の連中もしっかり栄養つけて、俺たちが深層を切り拓くためのサポートを頑張ってもらわねぇとな!」
トウヤが大広間のソファにどっかりと腰を下ろし、樽ジョッキの星海エールを呷った。
氷室は超圧縮パッキングによって広大な空きスペースを取り戻し、余った食材は地上への出前で莫大な資金とコネクションへと変換された。
何一つ無駄にしない。すべてを喰らい、すべてを利用する。それが彼らの開拓の流儀である。
「よし! これで心置きなく、次のバケモノどもを乱獲できるぜ!」
トウヤが立ち上がり、大宴殿の最先端デッキへと歩み出た。
「ガレス、エリス、ジン、マリア、ルミナ、ゼノス! インフラの準備は完璧だ!」
トウヤの視線の先には、燃え盛るような赤と深い紫の結晶が大地から突き出す、次なる絶望と美味の領域――『星海焦熱の紅蓮結晶地帯』が、陽炎を揺らして彼らを待ち構えていた。
「氷室も空っぽだ! あの赤い大地に眠る、激辛で熱々の極上食材どもを、要塞のバンパーで丸ごと粉砕して喰らい尽くしてやるぞォォォッ!!」
「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
地上の権力者たちを絶品の飯テロで完全無力化させ、最強の布陣と空っぽの胃袋(氷室)を整えた移動料亭要塞『星海大宴殿』。
規格外の開拓者たちの次なる標的は、灼熱のマグマと結晶が織りなす激辛のフロンティア。彼らの爆走は、もはや世界の誰にも止めることはできないのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
https://ncode.syosetu.com/n7421mg/




