第449話 天空フルコースの狂宴と、氷室パンクの危機を救う『地上への凶悪デリバリー計画』
第449話 天空フルコースの狂宴と、氷室パンクの危機を救う『地上への凶悪デリバリー計画』
一週間におよぶ狂気の【星海浮遊・全自動ブラックホール乱獲作戦】により、果てしなき『天空群島』に浮かんでいた無数の島々を文字通り「根こそぎお片付け(更地化)」した移動料亭要塞『星海大宴殿』。
要塞の周囲数千キロの空域から完全に浮遊島が消え去り、澄み切った雲海が広がる中、大宴殿の超巨大厨房と大広間は、これまでの開拓の歴史の中でも最大級の熱気と、甘く香ばしい「奇跡の香り」に包まれていた。
「全員、一週間の超高速仕分け作業、本当にお疲れさん!! 氷室のアラートは鳴り響いてるが、そんなことは知ったことか! まずは獲れたての天空の恵みを全部並べた、大平定記念フルコースの始まりだァァァッ!!」
ねじり鉢巻姿のトウヤが、黄金の大剣(特大包丁モード)を調理台にドンと置き、満面の笑みで咆哮した。
「「「ウオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
【第一部:天空群島平定記念・極上フルコース大宴会】
大広間の特大円卓には、ブラックホールに吸い込まれ、空中で芸術的に仕分け・パッキングされた最高級の食材たちが、トウヤの現代知識と【解体刃】によって至高の一皿へと昇華され、ズラリと並べられていた。
【一品目:星海飛翔の天牛の『極上ローストビーフ 〜天空蜂蜜と赤ワインの特製ソース〜』】
「まずはメイン級の前菜だ! 雲海の高山植物を食って育った天牛の、最もサシが美しいロース部分を、低温でじっくりとジューシーに焼き上げた! ソースは、島から引っこ抜いた『天空蜂蜜』の濃厚な甘みと、大宴殿に貯蔵してあった極上赤ワインを煮詰めた特製ダレだ!」
美しいロゼ色に仕上がった、大皿を埋め尽くすほどの極厚ローストビーフ。
エリスがフォークで一切れ持ち上げ、口に運んだ瞬間、その白銀の瞳が劇的に見開かれた。
「……んんっ!! なんというなめらかな口溶けでしょう……! 噛んだ瞬間に、天牛肉の気高くて濃厚な肉汁が溢れ出すのに、まったく脂の重さを感じませんわ! 天空蜂蜜のコクのある高雅な甘みのソースが、お肉の旨味を何十倍にも引き立てて……幸せすぎて涙が出そうですわ!!」
令嬢の仮面を完全に吹き飛ばし、エリスが至福の表情で身悶えする。
「ガッハッハ! こいつはビールじゃねぇ、最高級の赤ワインが無限に消える味だぜ!」
ガレスが手のひらサイズの肉塊を一口で頬張り、樽ジョッキを豪快に傾けた。
【二品目:巨大風切り雉と『天空完熟の風船林檎』のサクサクフリッター】
「次はこれだ! 弾力抜群の風切り雉の胸肉と、フワフワ浮かんでいた『風船林檎』を一口サイズに合わせ、炭酸水を使った特製衣でサクサクに揚げたフリッターだ! 林檎の酸味と雉の肉汁が口の中で弾けるぞ!」
「……美味い」
影から姿を現したジンが、サクサクと音を立ててフリッターを噛み締める。
「揚げることで風船林檎の果汁が熱々のシロップに変化し、雉肉の野性味溢れる旨味と完璧に絡み合っている。これは、一度食べ始めると止まらなくなる悪魔の軽食だ」
【至高のデザート:『雲海白桃』まるごとベイクドタルト 〜リルの特製ミルクアイス添え〜】
「そしてシメのスイーツだ! 雲海に浮かぶ島から収穫した、一つがダンプカーほどもある『雲海白桃』。その芯をくり抜き、天空蜂蜜をたっぷり染み込ませてオーブンで丸ごと焼き上げた! 仕上げに、リルの浄化ミルク魔法で作った超濃厚バニラアイスを雪崩のようにトッピングしてある!」
ドォォォォンッ!! と円卓に鎮座したのは、黄金色に焼き上がった巨大な桃のタルト。
熱々の白桃タルトの上で、ひんやりとした白いアイスクリームがトロットロに溶け出している。
「あ、甘い香りが……お鼻の細胞を優しく愛撫してきますわ……!」
マリアとルミナが、スプーンを持つ手を震わせながら、アイスと白桃を一緒に口に含んだ。
「「んんんんんっっっ!!!!!!」」
二人は同時にスプーンを落とし、天を仰いで抱き合った。
「と、とろけますわ! 焼き桃のジュワッとした暴力的な甘酸っぱさと、天空蜂蜜の濃厚な風味、そしてアイスの冷たくてクリーミーなコクが、お口の中で完璧な聖歌隊を奏でていますわ!!」
「ワォォォォンッ!!(これ毎日食べたい! 毎日100個食べたいぞー!!)」
クロがアイスまみれになった桃の果肉をガツガツと平らげ、リルも全身をピンク色に明滅させながら、満腹のダンスを踊っていた。
【第二部:大宴殿・緊急作戦会議 〜氷室パンクの危機〜】
狂乱のフルコース宴会が一段落し、開拓者たちの胃袋が極上の美味で完全に満たされた深夜。
大宴殿の最上階・展望作戦会議室には、少し引き締まった表情のメンバーが集まっていた。
ホログラムマップの周囲に浮かび上がっているのは、赤く点滅する無数の『容量限界』の文字。
『……全工程の平定、おめでとう。だが、システム管理者として、私は今すぐにでも胃薬が必要な状況だ』
ブリッジのメインコンソールから映像を繋いだサイラスが、眼鏡の位置を直しながら、ため息交じりに数値を指し示した。
『一週間のブラックホール乱獲により、格納された食材の総量は過去最大を記録している。飛翔天牛の肉が数万頭分、風船林檎と雲海白桃が数百万個、天空蜂蜜のコンテナが数百個。……次元拡張を最大まで施した大宴殿の氷室の容量は、現在**「99.9%」**だ。これ以上は、木の実一粒すら格納できない。完全なるカンスト状態だ』
「ガッハッハ! 確かに、どこを見渡しても肉と果物の箱で埋まってて、俺のプロテイン置き場すらねぇからな!」
ガレスが笑うが、事態は深刻であった。
「トウヤ殿、このままでは、目の前にある次なる巨大な大地へ進軍しても、そこで出会うであろう『新たなる美味』を一切収穫できんぞ。それは我らの食への美学に反する」
ゼノスが腕を組んで眉をひそめる。
「ああ、分かっている。せっかく新しいエリアに入るってのに、目の前のご馳走を見逃すなんて、俺の開拓魂が絶対に許さねぇ」
トウヤが熱いお茶をすすりながら、ニヤリと極悪な笑みを浮かべた。
「容量が足りないなら、今すぐここに『空き(スペース)』を作ればいい。それも、最高に美味い方法でな!」
「空きを作る……? これだけの量の食材を、一晩で食べ切るなんていくら私たちでも不可能ですわよ?」
エリスが小首を傾げる。
「食べるんじゃない。俺の現代知識の【保存技術】と、お前たちの魔法を掛け合わせて、保管方法を根本から変えるんだ。題して、**【氷室のウルトラ圧縮整理プラン】**だ!」
トウヤがホログラムに、巨大な天牛の肉塊がギュッと小さくなるイメージを投影した。
「これまでは鮮度を100%保つために、獲れたての状態のまま『素材の形』で広いスペースを使って保存していた。だが明日は、ゼノスの空間魔法で肉や果実の『周囲の空間そのものを10分の1に超圧縮』し、サイラスのシステムで旨味と水分を完全に内部に閉じ込めたままパックする【マジック・真空フリーズパック】へと全在庫を切り替える! これで、氷室の容積は一気に半分以上空きができるはずだ!」
『なるほど……! 空間そのものを超高圧で均一に縮小させ、解凍した瞬間に元の体積と鮮度に戻すというわけか。我が魔導システムのパッキングプログラムを書き換えれば、確実に可能だ!』
サイラスが眼鏡の奥の瞳を天才的な狂気で輝かせる。
【第三部:地上への凶悪デリバリー計画の考察】
「だがトウヤ、いくら圧縮したところで、この先のエリアでまた同じように乱獲すれば、すぐに満杯になっちまうぜ?」
ガレスの指摘に、トウヤはさらに笑みを深めた。
「だから、もう一つの対策だ。余った最高級の食材は……俺たちの『次元通路』を使って、地上の国々に強制デリバリー(お裾分け)するんだよ!」
「地上への配達……! アルカディア王国やエルドリア帝国のことですか?」
ルミナが目を丸くする。
「そうだ! 幸い、俺たちの要塞には地上と繋がる『次元通路』がある。そして、地上には俺たちの過酷な合同デリバリー特訓を乗り越えた、サイラスの『影歩く者』や、ファルコンの『夜梟』の地上居残り組、連絡要員たちが最強の【配達部隊】として待機してるだろ?」
トウヤがいたずらっぽく笑う。
「この一週間で獲れた『飛翔天牛の極上霜降り肉』や『風船林檎』を数千キロ単位で次元通路から地上へ送り、配達部隊に命じて、アルカディア王国の王様やガルド宰相、エルドリア帝国の連中に届けてもらうんだ。あいつら、最近まともな飯テロを食らってなくて油断してる頃だろうからな」
「……フッ、ハッハッハ! それは素晴らしい悪巧み(飯テロ)だな!」
ゼノスが最高に愉悦に満ちた表情で高笑いした。
「我らが深層で命をかけて(楽しく)収穫した神話級の天牛肉が、いきなり王宮のディナーに届けられるわけか。ガルド宰相や王どもが、あまりの美味さに椅子から転げ落ち、狂喜乱舞しながら堕落していく姿が目に浮かぶぞ!」
「まぁ……! それは地上に対する最高の『美味しい奇襲』ですわね! 配達部隊の皆様も、久しぶりの大仕事に血が騒ぐに違いありませんわ!」
マリアも楽しそうに両手を合わせた。
【第四部:次なる巨大な大地の攻略プラン考察】
「よし、氷室のスペース確保の目処は立ったな。それじゃあ最後に、目の前に見えている『次なるフィールド』の攻略プランについてだ」
トウヤが円卓のホログラムを、天空群島の出口にそびえ立つ新たなる大地のデータへと切り替えた。
モニターに映し出されたのは、燃え盛るような赤と、深い紫の結晶が大地からトゲのように突き出た、禍々しくも圧倒的な生命力を感じる巨大な地殻領域――**『星海焦熱の紅蓮結晶地帯』**であった。
「今までの空飛ぶ島巡りは終わりだ。次からは、再びしっかりとした地面を踏みしめての『陸上進軍』になる。サイラス、要塞のモード切り替えは?」
『問題ない。反重力フロートの出力を巡航レベルに落とし、底部の重力ソールを【陸上爆走モード(グランド・ドライブ)】へと再ロックする。時速500キロでの大地蹂躙が再び可能だ』
「よし。見たところ、あの赤い大地には、マグマの熱と結晶のミネラルを限界まで吸い上げた、これまでにない『超高熱系のバケモノ(食材)』がウヨウヨしていそうだ」
トウヤが黄金の大剣の柄を撫でながら、闘志(食欲)を燃やす。
「地中に流れるマグマの川には、熱々で締まった極上の『灼熱ナマズ』や、結晶の隙間に生える『激辛の結晶スパイスキノコ』が眠っているはずですわ」
エリスの美食センサーも、早くも次の環境の美味を完璧に予測していた。
「……周囲の熱、および結晶の反射。視界の死角が増えるが、私の短剣の錆び(食材のシメ)にはちょうどいい環境だ」
ジンも静かに闘気を研ぎ澄ます。
「ガッハッハ! 地面があるなら、俺のデッドリフトとハンマースマッシュが100%の威力で叩き込めるぜ! 次の大地も、要塞のバンパーで丸ごと粉砕して喰ってやろうじゃねぇか!」
ガレスが丸太のような腕を叩き、大笑いした。
「よし! 作戦は決まりだ!」
トウヤが立ち上がり、全員を見渡した。
「明日は朝から忙しくなるぞ! **【氷室の超圧縮整理】と、地上への【次元通路・一斉出前デリバリー作戦】**の開始だ!! 完璧にお片付けして、次なる紅蓮の大地へ最高のコンディションで突っ込むぞォォォッ!!」
「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
天空群島を完全平定し、全自動で大空の恵みを吸い尽くした開拓者たち。
彼らの次なる一歩は、満杯となった保存庫をチート魔法で超圧縮し、地上への超大規模な「飯テロ出前」を敢行するという、これまた常識破りの大工事。地上の王様たちが深層からの絶品天牛肉に悶絶する未来を予感しながら、移動料亭要塞『星海大宴殿』は、次なる大整理と凱旋デリバリーの朝に向けて、静かに、そして熱く夜を明かすのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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