第441話 雷鳴と磁場のセカンド・ウォール:作戦会議と【岩山喰い尽くし(マウンテン・イーター)】プラン
## 第441話 雷鳴と磁場のセカンド・ウォール:作戦会議と【岩山喰い尽くし(マウンテン・イーター)】プラン
水生平原(広大な巨大湖)の恵みを余すところなく「ひつまぶし」と「出汁茶漬け」へと変換し、完全な満腹と細胞の超回復を果たした『悠久の踏破者』たち。
彼らを乗せた移動式料亭要塞『星海大宴殿』は、波一つないクリスタルの湖面を穏やかに滑走し、ついにこのエリアの終端――水と大地の境界線へと到達していた。
「……こいつはまた、とんでもなく自己主張の激しい山だな」
大宴殿の最上階、展望作戦会議室。
窓の外を見上げたトウヤが、腕を組みながら苦笑いとも不敵な笑みともつかない表情を浮かべた。
目の前にそびえ立っているのは、第一階層の絶壁を遥かに凌ぐ、雲を突き抜けて宇宙まで届きそうなほどの超巨大な岩山。いや、それはただの「山」ではなかった。
山肌を構成している岩盤そのものが、紫や黄金に発光する『生きた鉱脈』であり、強烈な磁場を放っているのだ。さらに山頂付近には、分厚い漆黒の雷雲が渦を巻き、太さ数メートルに及ぶ規格外の落雷が、絶え間なく山肌へと落ちては鉱脈に吸い込まれていくという、この世の終わりのような光景が広がっていた。
『星海雷鳴と磁場の超鉱山(アストラル・マグネティック・サンダー・マウンテン)』である。
『……トウヤ殿、見ているか。あの岩山が放つ特殊な磁場の影響で、大宴殿の外部センサーに強烈なノイズが走っている。私の眼鏡のフレームすら微かに帯電している状態だ』
ブリッジから通信を入れてきたサイラスの声には、システム管理者としての警戒感が滲んでいた。
「私の髪も、さっきから下敷きでこすったみたいにフワフワと逆立ってしまいますわ」
エリスが、静電気で微かに広がる白銀の髪を手で押さえながらクスリと笑う。
「カッカッカ! ビリビリして面白ぇじゃねぇか! で、トウヤ。次の山はどうする? 前の絶壁みたいに、ルミナとマリアの魔法でまた『滝登り(垂直上昇)』をブチかますか?」
ガレスが、巨大な戦斧の刃を撫でながら豪快に笑った。
ゼノスも腕を組み、「我が反重力フロートの準備はいつでもできているぞ」と頷く。
しかし、トウヤは円卓のホログラムマップに映し出された巨大鉱山を見据え、首を横に振った。
「いや、今回は『登らない』」
「……登らない? では、どうやってこの壁を越えるのですか?」
ルミナが目を丸くする。
「上にはあのバカでかい雷雲が居座ってるし、高度を上げすぎれば落雷の直撃を食らい続けることになる。それに……一番の理由は、この山自体が『極上のスパイスの塊』だからだ!!」
トウヤがドンッ! と円卓を叩いた。
「考えてもみろ! 何万年もの間、強烈な雷のエネルギーと磁場を蓄え続けたミネラル豊富な鉱脈だぞ!? あの岩肌には、雷の刺激で極限まで旨味が引き締まった『雷岩塩』や、香ばしい『磁気スパイス』がビッシリ詰まってるはずだ! さらに、そんな環境で育つ魔獣どもは、全身がバチバチに仕上がった『超粗挽き肉』のバケモノに決まってる!」
トウヤの瞳に、美食に対する狂気的な開拓魂の炎が宿る。
「上を飛び越えてスルーするなんて勿体ねぇマネはできねぇ。だから今回は……この巨大な岩山に要塞ごと正面から突っ込み、**山を丸ごと『喰い尽くしながら』貫通する!!**」
### 【超特大トンネル開通・岩山喰い尽くし(マウンテン・イーター)プラン】
「山を……喰い尽くす、だと!?」
サイラスが通信越しに驚愕の声を上げる。
「ああ! 名付けて【超特大トンネル開通・岩山喰い尽くし(マウンテン・イーター)プラン】だ!! 大宴殿の推進力を全開にして山肌に激突! 削り取った岩盤(スパイス鉱石)と、地中に潜む魔獣どもを、トンネルを掘りながら全部要塞の口へ飲み込んでいくって寸法だ!」
トウヤの狂気のプランに、全員の顔が「待ってました」と言わんばかりに極悪な笑みへと歪んだ。
「……なるほど。巨大なシールドマシン(トンネル掘削機)のように、この城自体を『食道』に見立てて山を喰い破るというわけか。魔王の玉座で岩山を貫通するなど、前代未聞の美学だな!」
ゼノスが真紅のマントをバサァッと翻し、高らかに笑う。
「カッカッカ!! 最高に力仕事じゃねぇか! 目の前の岩を全部砕いて進めばいいんだな!」
ガレスの筋肉が、来るべき粉砕の喜びにメキメキと膨張を始める。
「ですがトウヤさん。数百万トンの要塞で岩山を貫通するとなれば、崩落の危険性や、掘削の土砂(岩の残骸)の処理が問題になりますわ」
マリアが冷静に指摘する。
「そこはチームワークだ! 全員の役割分担(配置)を説明するぞ!」
トウヤがホログラムの鉱山に、一本の巨大な横穴のルートを描き込んだ。
**1. 最前線突破・ドリル部隊(トウヤ&ガレス)**
「要塞の最先端デッキ(舳先)に俺とガレスが立つ! 大宴殿の突撃に合わせて、俺の剣とガレスの斧で岩盤をミンチにし、要塞が進むための『巨大な穴』を物理でブチ開け続ける! いわば俺たちが大宴殿の『巨大なドリル』だ!」
**2. インフラ・削りカス(極上スパイス)回収部隊(ゼノス&サイラス)**
「ゼノス! お前は空間魔法で、俺たちが開けたトンネルの壁面を即座にコーティングして崩落を完璧に防げ! サイラスは魔導ファクトリーを『掘削回収モード』に切り替え、俺たちが砕いた『雷岩塩』や『磁気スパイス』を、要塞のバキュームで一滴残らず吸い込め!」
『……了解した。要塞の魔導アームを回転式のシールド・カッターに変形させ、ガレス殿たちの破砕を完全サポートする体制を整えよう』とサイラス。
**3. 精密採掘・食材ピックアップ部隊(エリス&ジン)**
「岩盤を砕く最中、横穴の壁面には『雷を蓄えた極上キノコ』や、『地中に潜む雷獣』が埋まってるはずだ! エリス、ジン! お前らは要塞の側面のハッチに待機し、通り過ぎる一瞬の隙を突いて、食材だけを無傷で狩り獲れ(ピックアップしろ)!」
「……任せておけ。動く要塞からのすれ違いざまの暗殺、得意分野だ」
ジンが短剣をシャキッと鳴らす。
「わたくしのレイピアで、壁面に埋まったキノコを根こそぎ、優雅に削り取ってみせますわ!」
**4. 後方支援・排気&浄化部隊(ルミナ&マリア&ファルコン隊)**
「トンネル内には掘削の粉塵と、強力な磁場ガスが充満する! ルミナ、風の精霊で要塞の後方へ粉塵を強制排気しろ! マリアは浄化の光で磁気嵐を中和し、要塞の計器を守ってくれ! ファルコン隊は要塞の周囲を飛びながら、トンネル内の斥候と照明を頼む!」
「はいっ! 完璧な換気システムを作ってみせますわ!」
「女神の御名において、トンネル内を無菌室並みのクリーンルームにいたします!」
「よし、完璧な布陣だ! この岩山の端から端まで、極上のスパイスと雷獣を根こそぎ喰らい尽くしてやるぞ!!」
トウヤの号令に、大広間が割れんばかりの歓声に包み込まれた。
### 出撃前夜(直前):各々、配置へ
「ワォォォォンッ!!(トウヤ! 早く雷のビリビリするお肉が食べたいぞー!!)」
「プルルンッ!!(ボクもドリルになるー!)」
クロとリルも大興奮で甲板へと駆け出していく。
「よし、サイラス! 要塞の推進ベクトルを『水平・最大出力』にセットしろ! 目標、巨大鉱山の中腹・ド真ん中だ!」
『全機関、水平突撃モードへ移行。重力推進炉、オーバークロック開始!』
各々が、トウヤの指示した配置へと散っていく。
エリスとジンは、要塞の左右に展開された外部迎撃用ハッチ(テラス)へと移動し、岩山の壁面を瞬時に捉えるための体勢を整える。
「ジン、私の右側はお任せしますわよ。通り過ぎる壁のキノコ、一つも逃しませんわ」
「……ああ。壁から飛び出してくる魔獣は、すべて俺がシメておく」
ルミナとマリアは、要塞の屋上デッキへ。
マリアが白神の杖を掲げ、要塞全体を包み込む「帯電防止・磁気中和結界」を展開すると、計器のノイズが嘘のようにピタリと収まった。
「風の精霊たち、大宴殿の後ろから強い風を吹き出して、トンネルの中を常にクリーンに保ってちょうだいね!」
そして、最先端デッキ――要塞のまさに『舳先』となる部分に、トウヤとガレスが並び立った。
二人の眼の前には、バチバチと紫色の雷光を放ちながら天へそびえる、絶望的なまでに分厚く巨大な岩山が、要塞の接近に伴ってますますその威容を拡大させていた。
「カッカッカ! これからあのバカでかい岩の塊に、真正面から頭突きをかますってわけだ! 狂ってやがるが、血が沸き立つぜ!」
ガレスが首の骨をボキボキと鳴らし、愛用の超重量戦斧を大上段に構え直す。
「ああ! 俺たちが道をこじ開けなきゃ、要塞はただの鉄屑になっちまうからな! 頼むぜガレス、お前の剛腕で、あの山の鉱脈を限界まで細かく砕いてくれ!」
トウヤも黄金の大剣を引き抜き、全身から太陽のような闘気を爆発させた。
ゴォォォォォォォォォォォォォンッッ!!!!!
背後で、サイラスが操る三基の星海重力推進炉が、かつてないほどの巨大な蒼いフレアを吹き出した。湖面の水を蒸発させるほどの熱量と共に、数百万トンの大宴殿が、巨大な『大砲の弾丸』となって岩山へと向かって加速を始める。
「全機関、最大出力!! 磁場防御結界、展開ヨシ! 排気システム、起動ヨシ!」
サイラスの絶叫が艦内に響き渡る。
「ゼノス! 突っ込んだ瞬間のトンネル補強、忘れるなよ!」
「フッ、案ずるな。魔王の空間壁は、星の崩壊すらも支えてみせよう」
岩山の巨大な壁面が、視界を完全に埋め尽くす。
激突まで、残り十秒。
「さぁ行くぞ!! 星海雷鳴と磁場の超鉱山、丸ごと喰らい尽くしてやる!! 【超特大トンネル開通・マウンテン・イーター】、開始だァァァッ!!!!」
トウヤとガレスの咆哮と共に、最強の移動料亭要塞『星海大宴殿』は、極上のスパイスと雷獣が眠る巨大岩山へと向かって、容赦のない正面衝突の特攻(ドリル大突撃)を敢行するのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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