第440話 【水生平原・上下両面乱獲ライン】その5:深淵からの生還と、百万人の胃袋を溶かす『神藍覇竜の極上ひつまぶし大宴会』
第440話 【水生平原・上下両面乱獲ライン】その5:深淵からの生還と、百万人の胃袋を溶かす『神藍覇竜の極上ひつまぶし大宴会』
深海溝の絶対的覇王『星海深層の神藍覇竜(アストラル-サファイア・レヴィアタン)』を、わずか10秒の超絶連携で「特大蒲焼用フィレ」へと完璧に解体・水揚げしたトウヤたち【水中・深淵突入部隊】。
暗黒の湖底での仕事を一瞬で終わらせた彼らは、ゼノスの漆黒の空間結界とルミナの風のドームに包まれながら、大宴殿が待つ水面へと向けて猛烈な速度で浮上していた。
「ハッハッハ! 下の掃除は完璧に終わったぜ! ガレスたちも水上をたっぷり荒らし回ってる頃だろうな!」
トウヤがドームの中で、達成感に満ちた笑い声を上げる。
「ええ! 氷室で上と下の食材が合流した時、一体どんな奇跡のメニューが生まれるのか……想像しただけで胸(と胃袋)が高鳴りますわ!」
エリスがレイピアの汚れを拭いながら、乙女の(しかし腹ペコの)瞳をキラキラと輝かせる。
ザバァァァァァァァァァァァァァンッッ!!!!
巨大な水柱を上げ、湖面を割って突入部隊のドームが大空へと飛び出した。
夕暮れの陽光に照らされた水生平原のド真ん中。そこには、水上の獲物を文字通り「一羽・一本残らず」乱獲し尽くし、ピカピカに磨き上げられた巨大なまな板(甲板)の上で彼らを待ち構える、移動料亭要塞『星海大宴殿』の威容があった。
「おぉぉぉい! 帰ってきたぞ!!」
トウヤがドームを解除し、要塞の甲板へと豪快に着地する。
「カッカッカ! おせぇぞトウヤ! 待ちくたびれて、鴨肉とレンコンのつくねを三百キロくらい仕込んじまったじゃねぇか!」
ガレスが、巨大なすり鉢と丸太のようなすりこぎを両手に持ち、顔中を粉だらけにしながら大笑いで出迎えた。
「ワォォォォンッ!!(トウヤ! 下からすっげぇ脂の匂いがしたぞ!! 早く食わせろー!!)」
クロがトウヤに飛びつき、リルも「プルルンッ!(お腹ペコペコ!)」と跳ね回る。
『……両部隊、見事な制圧作戦だった。大宴殿の氷室は現在、過去最大の「150%過積載(限界突破のその先)」を記録している。早く調理して空間を空けてくれないと、要塞の重量バランスが崩壊するぞ!』
ブリッジから姿を現したサイラスが、眼鏡を押し上げながらも、その口元には抑えきれない笑みがこぼれていた。
「任せとけサイラス! 上と下の食材が全部揃ったんだ! 今夜は、この『水生平原』のすべての旨味を一つの丼に叩き込む、究極のフルコース大宴会だァァァッ!!」
「「「ウオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
調理開始:上下の出汁が融合する『究極の秘伝タレ』
大宴殿の超巨大厨房は、かつてない熱量と芳醇な香りに支配されていた。
今回のメインディッシュは、なんと言っても『神藍覇竜の特大蒲焼』。しかし、ただ焼くだけではない。水上と水中の食材が、奇跡の相乗効果を生み出していく。
「まずはタレだ! 蒲焼の命は、継ぎ足しを超える『暴力的な旨味の掛け算』にある!」
トウヤの指示で、巨大な寸胴鍋に次々と極上素材が放り込まれる。
ベースとなるのは、マリアとトウヤが調合した『千年醤油』とサボテンシロップ。
そこに、水上部隊が獲った『星海銀翼の飛魚』を高温でサッと炙った最高級の「アゴ出汁」。
水中部隊が獲った『七色大蛤』の超特濃「貝出汁スープ」。
極めつけに、神藍覇竜から綺麗に分離した「巨大な中骨」を、バーナーで香ばしく焼き上げてから寸胴へとダイブさせる。
グツグツグツ……。
「おお……! 醤油の焦げる香ばしさに、飛魚の深み、蛤のミルクのようなコク、そして覇竜の野性味溢れる脂が溶け出していますわ!」
ルミナが鍋を覗き込み、その匂いだけで白米が食えそうなほどの芳香にうっとりとする。
「タレが煮詰まったら、いよいよ焼きの工程だ! ガレス! 火力全開!!」
「おうよ! 渓谷で獲った極上炭(コカトリスの巣の燃えカス)を限界まで熱してやるぜ!」
大宴殿の特大グリル(全長数十メートル)に、ガレスが風の鞴で猛烈な空気を送り込み、炭火を赤々と熾す。
そこへ、トウヤが【解体刃】で美しく切り分けた、分厚さ数十センチにも及ぶ『神藍覇竜の純白フィレ肉』が、ズラリと網の上に並べられた。
ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!!!!
サファイアの皮下で熟成されていた極上の脂が、炭火の熱に触れて爆発的に溶け出し、網の下へと滴り落ちる。それが炭で燻され、もうもうとした「旨味の煙」となって再び身を包み込む。
「マリア! 刷毛でタレを塗れ! 三度塗りだ!」
「はいっ! 女神の御名において、一滴のタレも無駄にいたしませんわ!」
マリアが神聖魔法で空中に浮かせた巨大な刷毛を操り、グツグツと煮立った『究極の秘伝タレ』を、白く輝く覇竜の身にたっぷりと塗り込んでいく。
タレと脂が焦げ合う、暴力的なまでの蒲焼の匂い。
その破壊力は、厨房の外で待機しているペガサス隊の天馬たちすら「ヒヒィィン!(早く食わせろ!)」といななき、ゼノスが「……魔王の威厳が、匂いだけで崩壊しそうだ」と喉を鳴らすほどであった。
狂宴開幕:『神藍覇竜の究極ひつまぶし』と水生平原の恵み
「お待たせしたな野郎ども! 湖の覇者と空の覇者が一つの丼で出会う、水生平原完全制覇記念・フルコースの完成だァァァッ!!」
大広間の円卓に、一人につき「洗面器」ほどの大きさの漆塗りの巨大おひつが、ドォン!と置かれた。
フタを開けた瞬間、黄金色の蒸気と共に、視界を埋め尽くす圧倒的な光景が飛び込んでくる。
炊きたてのツヤツヤの銀シャリ。
その上に敷き詰められた、水上部隊が獲った『黄金の飛魚卵』のプチプチとした絨毯。
さらにその上に、ドカァァン!と鎮座する、照り輝く飴色の『神藍覇竜の極厚蒲焼』である。
「ひ、ひつまぶし……! しかもトビコが敷き詰められているなんて、なんと贅沢な!」
エリスが両手で顔を覆う。
「まずはそのまま、豪快に掻き込めェェェッ!!」
トウヤの号令で、全員が巨大なしゃもじで丼をすくい、一斉に口の中へ放り込んだ。
「「「…………ッッッ!!!!!!」」」
瞬間、大広間が静まり返った。
あまりの美味さに、声帯が機能を停止したのだ。
覇竜の蒲焼は、箸で持ち上げただけでホロリと崩れるほど柔らかい。
口に入れた瞬間、炭火でパリッと焼き上げられた皮の香ばしさが弾け、その直後、分厚い白身の中から「宇宙最高峰のトロ脂」が、ナイアガラの滝のようにドバァァァッと溢れ出してくる。
しかし、その脂は不思議なほどに重くない。マリアの浄化と飛魚のアゴ出汁ダレが、脂のクドさを完全に消し去り、純粋な「旨味の暴力」へと昇華させているのだ。
「カッカッカ……!! ウマい!! ウマすぎるぞトウヤ!!」
ガレスが涙を流しながら咆哮する。
「蒲焼のフワフワ感に、下に敷いたトビコの『プチプチ感』が最高のアクセントになってやがる! タレの染み込んだ銀シャリと合わさって、噛むたびに口の中で旨味の大爆発が起きてるぜ!!」
「……フッ、ウナギという魚がこれほどまでに魔的な食べ物だったとは。私が魔界を統べていた数千年は、この味を知らなかったというだけで完全に無駄な時間であったと断言できる」
ゼノスが、魔王の威厳など完全にかなぐり捨て、凄まじい速度で巨大おひつを空にしていく。
第二形態:極上鴨のつみれ汁と、味変の『出汁茶漬け』
「ハッハッハ! 驚くのはまだ早いぜ! ひつまぶしの醍醐味はここからだ!」
トウヤが、次のお椀を配膳する。
それは、透き通った黄金色の熱々スープ。中には、ガレスがすり潰した『極上鴨のロース肉』と『巨大蓮根』で作ったフワフワの【特大つくね】、そして水面のゼリー【巨大ジュンサイ】と湖底のミルク【黄金真珠タピオカ】が浮かんでいる。
上下の食材が完璧に融合した『水生平原・奇跡のお吸い物』である。
「このスープを飲みながら食ってもいいし……残ったひつまぶしに、このスープをドバッとぶっかけて『究極の出汁茶漬け』にしても最高だぜ!」
「出汁茶漬け……! やりますわ! 絶対にやりますわ!!」
エリスがおひつにスープを注ぎ込む。
蒲焼の脂と甘辛いタレが、黄金のスープにジュワァァァッと溶け出していく。
ズズズズズズズッ!!!
「おいしぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
マリアとルミナが同時に絶叫した。
「蒲焼の濃厚さが、スープの出汁で一気にサッパリとした気高い味わいに変化しましたわ! 鴨肉とレンコンのつくねから染み出す肉汁、ジュンサイのツルンとした喉越し、真珠のプチッとした食感……!」
「……完璧な調和。水面の鴨、水中の飛魚、水底の覇竜と蛤。この広大な湖の生態系が、今、この一杯の椀の中で完全に一つになった」
ジンも目を閉じ、至福の吐息と共に茶漬けを喉の奥へと流し込む。
「ワォォォォンッ!!(おかわり!! 樽で持ってこい!!)」
「プルルンッ!(ボクもー!)」
新たなる夜明け、次なる壁へ
どれほどの量があっただろうか。
限界突破していた大宴殿の氷室の在庫は、開拓者たちの「別腹」という名のブラックホールによって、一夜にして恐ろしいほどのペースで消費されていった。
狂熱の大宴会が終わり、朝陽が広大な水生平原(すでに美味い魔獣は一匹も残っていないただの静かな湖)をキラキラと照らし出す頃。
「ぷはぁ……! 食った食った。砂漠の蟹から始まり、最後は究極のひつまぶし。この数日間は、マジで伝説に残る乱獲ラインだったな」
大広間のテラスで、トウヤが熱いお茶をすすりながら、大きく伸びをした。
「ええ。湖のバケモノたちも、私たちのお腹の中で平和に眠っておりますわ」
エリスが、完全に満たされた表情で微笑む。
「さて、湖は越えた。次なるターゲット(障害物)は……アレだな」
ガレスが、湖の遥か彼方、次なるエリアを隔てるようにそびえ立つ、雲を突き抜けるほど巨大な『第二の岩山』を指差した。
『センサーの解析によると、あの山はただの岩ではない。強力な磁場と、雷雲を纏った「生きた鉱脈」の山だ』
ブリッジからサイラスが報告する。
「雷雲と鉱脈か……。痺れるようなスパイスと、極上のミネラルを食って育った、バチバチの雷獣どもが待ってそうじゃねぇか!」
トウヤの瞳に、休むことを知らない食欲(開拓魂)の炎が再び点火される。
「カッカッカ! 違いねぇ! 次の山も、要塞ごとぶち抜いて丸ごと喰ってやるぜ!」
湖底の覇竜すらも蒲焼の材料にしてしまう、規格外の開拓者たち。
彼らの無限の胃袋と、最強の移動料亭要塞『星海大宴殿』の旅は、水生平原に美しい引き波を残しながら、次なる未知の食材が待つ雷鳴の山へと、意気揚々と進み始めるのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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