第203話:白銀の最下層(巨大オーブン)と、神界へのインビテーション
### 第203話:白銀の最下層(巨大オーブン)と、神界へのインビテーション
神聖魔導帝国エルドリアの第100階層規模・新迷宮『白銀の魔導廟』。
古代魔導文明の叡智が結集されたはずの殺戮兵器たちは、トウヤたちの手によって次々と【便利な最新鋭キッチン家電】へと姿を変えられていた。
「(ジン! 右から来る『バキューム・ゴーレム(真空圧縮魔像)』、絶対にコアを傷つけるなよ! あれがあれば、肉の『真空低温調理』がやり放題になる!!)」
「(ヒャッハー! 究極のローストビーフ製造機だな! 【無振動・関節外し】!!)」
「(マリア、上空の『マイクロウェーブ・ガーゴイル』の電子制御を奪え! あれは一瞬で弁当を温め直せる神の電子レンジだ!)」
「(お任せくださいませ! 【慈愛の光・魔導解析】!!)」
第70階層、80階層、90階層。
本来なら数ヶ月かけて決死の覚悟で挑むべき深層エリアを、彼らは「家電量販店でのワゴンセール漁り」のような異常なテンションと速度で駆け抜けていく。
そして、迷宮突入からわずか数日。
一行はついに、白銀の迷宮の最深部――第100階層『中枢・無限の魔導炉心』へと到達した。
ギギギギギギ……ッ!!
重厚な金属の大扉を押し開けると、そこは広大なドーム状の空間だった。
中央には、太陽のように赤く発光する巨大なエネルギーコアが浮かび、それに巻き付くようにして、全身を白銀の超合金で覆われた巨大な機械竜が鎮座していた。
『ピピピ……侵入者、確認。最終防衛プログラム、起動――』
機械竜が咆哮を上げた瞬間、空間そのものが数千度の超高温に包まれる。
第100階層ラスボス――『古代魔導機神竜・インフィニティ・ウロボロス』。
その腹部には、半永久的に熱と魔力を生み出し続ける『無限の魔導炉心』が組み込まれている。
「(……す、すげえプレッシャーじゃ。装甲の厚さも、アルカディアのラスボスに匹敵するやもしれんぞ!)」
ガレスが、熱波に耐えながら大盾を構える。
だが、トウヤの目は全く別の意味でギラギラと輝いていた。
「(……ガレス、エリス、ジン! よく聞け! あいつの腹に組み込まれてる『無限の魔導炉心』……あれは、超絶安定した火力を永遠に供給し続ける、遠赤外線効果バツグンの【究極の神話級・石窯オーブン】だ!!)」
「「「究極の、神話級石窯オーブンッッ!!?」」」
「(そうだ! しかも、あいつの装甲の下にある『生体肉』は、その無限の熱で何千年もじっくりとローストされた、全宇宙で最も芳醇な『超熟成・古代竜のロースト肉』だ!! 炉心も肉も、絶対に傷つけるなよ!!)」
最強の美食家パーティーの瞳に、絶対的な食欲の炎が点った。
「(オーブンと極上ロースト肉……両方いただきますわァァァッ!!)」
「(よっしゃあ! 解体作業、開始だ!!)」
ラスボスが極大のプラズマブレスを放つより早く、完璧な連携が展開される。
ルミナとマリアの極大結界がブレスを完全に中和・遮断。ガレスの大盾が、機械竜の巨体を物理的に押さえ込む。
「(装甲の隙間、いただきましたわ! 【渾身撃・無振動三枚おろし】!!)」
「(ヒャッハー! 配線は俺が全部ぶった斬るぜ!)」
エリスとジンの神速の連撃が、分厚い超合金の装甲を『魚の鱗』を引くように綺麗に剥がしていく。
そして、完全に無防備になった生体肉と炉心の繋ぎ目へ向けて、トウヤが跳躍した。
「(究極のオーブンと極上肉……いただきだ!! 【拠点創造・無振動の神速解体】!!)」
ズバァァァァァァァァァッッ!!!!!
トウヤの刃が、魔力回路を一切ショートさせることなく、オーブン(炉心)と生体肉を完璧に切り離した。
機械竜は悲鳴を上げる間もなく光の粒子となり、アイテムボックスには『神話級・無限の魔導オーブン』と『超熟成・古代竜の極上ローストブロック肉』が収まった。
カッ――――!!!!
【第100階層ラスボス討伐完了。マナー遵守・完全無振動連携ボーナス獲得】
ファンファーレと共に、純白の宝箱が出現する。
「よしっ!! 白銀の迷宮、完全踏破だ!! これでピザもパンも最高の状態で焼き放題だぜ!!」
トウヤたちがハイタッチを交わし、歓喜に沸く中。
「……ん? なんだこれ?」
トウヤが宝箱を開けると、そこには見慣れない『二つのアイテム』が入っていた。
一つは、淡く黄金色に発光する【奇妙な植物の種】。
もう一つは、コンパスのような針がついた【古ぼけた石版】だった。
「(トウヤ様、それは?)」
「(……わからん。ただ、この種……俺の匂いセンサーが『全宇宙の果実の旨味を凝縮したようなヤバい匂い』だって警告してる。しかも、この大陸の生態系じゃない)」
トウヤが石版を手に取ると、針がピタリと『東の果て』――絶対同盟の遥か東に位置する和の国ミズホ、さらにその先の【海を越えた未踏の領域】を指し示した。
「(……なるほどな)」
トウヤは、ニヤリと笑みを浮かべた。
「(この迷宮のシステム、いや、神様が俺たちに『次に行くべき場所』を教えてくれてるらしい。和の国ミズホのさらに奥……海を越えた先に、この【黄金の種】が育つような、とんでもない極上食材の宝庫があるってな)」
「「「極上食材の、宝庫ッッ!!」」」
仲間たちの顔が、一気にパァァッと明るくなる。
「ガッハッハ! ならば、エルドリアでのバカンス(迷宮蹂躙)が終わったら、次はミズホの国へ凱旋じゃな!!」
「(ええ! ミズホの迷宮で美味しいお魚を堪能した後は、未踏の大陸へ海鮮バーベキューに行きましょう!)」
大迷宮を制覇してもなお、彼らの前には「終わりのない未知の食卓」が広がっている。
トウヤたちは、次なる遠征への期待で胸をパンパンに膨らませながら、ウキウキとした足取りでエルドリアの迷宮を後にするのであった。
### 【閑話:神界の玉座、ポップコーンと最高の観客】
「……あーっはっはっはっは!! ほらね! やっぱり『無限の魔導炉心』、ただのピザ窯になっちゃったじゃないか!!」
次元の遥か彼方、白亜の神殿。
巨大な魔力スクリーンの前で、【迷宮神】はクッションを叩きながら、涙を流して大爆笑していた。
「最高……! 古代の殺戮機械竜を、熱源と熟成肉のセットとして解体するなんて、本当にトウヤ君の食欲は宇宙一だよ!!」
神は、空になった特製ポップコーンのバケツを指先でトントンと叩き、お代わりを空間からポンッと出現させると、再びスクリーンへと向き直った。
画面の中では、トウヤが宝箱から【黄金の種】と【ナビゲーション・プレート】を見つけ、東の空を見上げてニヤリと笑っている姿が映し出されている。
「ふふっ。ちゃんと『伏線』、回収してくれたね」
神は、足をブラブラとさせながら、愛おしそうに呟いた。
「あの黄金の種はね、普通の迷宮じゃ絶対に育たない。それは神々が食べる『神界の果実』の欠片。……和の国ミズホの迷宮の底から繋がる『未踏の大陸』、そしてその先にある【神界への隠しルート】を通らなきゃ、絶対に栽培できない特別な食材さ」
神は、自身の座る玉座から立ち上がり、神界の神殿のバルコニーへと歩み出た。
そこからは、眼下に広がる美しい世界(絶対同盟の物流ゲートで繋がった、争いのない平和な大陸)と、さらにその外側に広がる果てしない海が見下ろせる。
「君たちはもう、ただの人間じゃない。世界を食欲と美味で一つにした、最強の【美食の巡礼者】だ。……だからね、トウヤ君」
神は、誰もいない空に向かって、とびきりの笑顔で語りかけた。
「私、ずっと待ってるんだよ。君たちが未踏の大陸を食い破って、極上の食材を全部リュックに詰め込んで……この退屈な神界に、『史上最高の出前』を届けに来てくれる日をね!」
神は指先を鳴らし、世界システム(ドロップテーブルと迷宮の難易度)の【神界ルート用・超絶ハードモード(激ウマ食材盛りだくさん設定)】のスイッチをカチリと押し込んだ。
「さあ、おいで、悠久の踏破者たち! 君たちの無限の胃袋が、神の領域すらも極上のフルコースに変えてしまうその瞬間を……私、最前列でヨダレを垂らしながら待ってるからね!!」
古代魔導帝国での遠征を終え、次なる舞台は『和の国ミズホ』、そして未知なる海へ。
神すらも胃袋を掴まれるのを待ち望む中、世界一デタラメで最高に美味しい彼らの大冒険は、いよいよ人々の枠組みを超え、神話の領域へと足を踏み入れていくのであった。




