第202話:古代魔導の調理家電化と、神界のシステム・ハッキング
### 第202話:古代魔導の調理家電化と、神界のシステム・ハッキング
神聖魔導帝国エルドリアに突如として出現した、第100階層規模の新迷宮『白銀の魔導廟』。
古代魔導文明の叡智が結集されたその殺戮空間は、トウヤたち『悠久の踏破者』の手によって、瞬く間に【超広大なシステムキッチン兼・巨大な食材庫】へと作り変えられていた。
「(ジン! 上部の排気ダクトから『プラズマ・クラーケン(電磁巨大烏賊)』が来るぞ! あのバチバチ放電してる触手……電気パルスで極限まで身が引き締まった『超・歯ごたえイカ』だ!)」
「(ヒャッハー! シビれる美味さってやつだな! 【幻影歩法・無振動八刀流】!!)」
迷宮の第40階層。
空間そのものを焦がすほどの高圧電流を纏った神話級の巨大烏賊が、天井から襲い掛かる。
だが、トウヤの【神眼】と匂いセンサーによって完全に先読みされていた烏賊は、ルミナの【聖光結界・絶縁】によって自慢の雷撃を完全に地面へと逃がされ、無力化された。
そこへ、ジンの双短剣とエリスの大剣が無振動の軌跡を描き、瞬く間に巨大なイカリングへと解体していく。
カッ――――!!
【第40階層中ボス討伐完了。マナー遵守・完全無振動連携ボーナス獲得】
ファンファーレと共に現れた純白の宝箱を開けると、中からは『神話級・古代魔導ミキサー(どんな硬い食材もコンマ一秒で極上のペーストにする)』が出現した。
「よしっ! 瞬殺ボーナスでまた調理家電をゲットだぜ!」
トウヤがガッツポーズを取る。
「(ふふっ、これで今朝手に入れた『古代魔導オーブン』と合わせて、キッチンの設備がさらに充実しますわね!)」
エリスが嬉しそうに拍手をする。
彼らの探索速度は、アルカディアの大迷宮や魔国の迷宮を攻略した時よりも、さらに跳ね上がっていた。
なぜなら、この迷宮のギミック(罠)はすべて「魔力」を動力源とする機械仕掛けであり、マリアの【慈愛の光・魔導解析】によるハッキングで、扉のロックも防衛兵器も次々と強制解除(あるいは調理モードに変換)できてしまうからだ。
「(ガッハッハ! マリアの魔法とトウヤの知識があれば、この鉄の迷宮もただの『便利な散歩道』じゃな!)」
「(ええ。機械の魔力回路も、要は治癒魔法の経絡と同じですもの。少し流れを『最適化』して差し上げているだけですわ)」
マリアが聖杖を片手に、ニコニコと微笑みながら恐ろしいことを言う。
その後も彼らは、一切の立ち止まりを見せずに階層を突き進んだ。
第50階層では、周囲を一瞬で絶対零度にする防衛兵器『ブリザード・ゴーレム(氷河の魔神)』を、マリアのハッキングとトウヤの無振動解体で瞬殺。
トウヤが「こいつのコア、半永久的に純氷を作り出す『神話級・全自動かき氷メーカー』として使えるぞ!」と歓喜し、その場で時空果実のシロップをかけた極上かき氷パーティーが開催された。
第60階層では、『レーザー・カッター・マンティス(光学斬撃蟷螂)』の放つ熱線をトウヤが鏡面シールドで反射し、その熱を利用して道中で狩った『雷鳥のローストチキン』を完璧な焼き加減で炙り出した。
「(うめえええっ!! レーザーの均一な熱で、皮がパリッパリに仕上がってるぞ!! 古代兵器の火力調整、マジで最高だ!!)」
「(ヒャッハー! 次の階層にはどんな『便利な家電』がいるか楽しみだぜ!!)」
彼らはもはや、戦闘をしているという自覚すら失いかけていた。
ただ純粋に、「どんな機械が、どう料理に使えるか」という好奇心と食欲だけで、古代の殺戮迷宮を意気揚々と蹂躙し続けていたのである。
***
【閑話:神界の玉座、ツッコミ疲れた神と新たなる仕込み】
「……あーっはっはっはっは!! 待って、お腹痛い! 誰か助けて……ッ!!」
次元の遥か彼方、白亜の神殿。
巨大な魔力スクリーンの前で、【迷宮神】はクッションを抱き抱え、涙を流しながらカウチソファの上で笑い転げていた。
「ひぃーっ、お腹よじれる……! ブリザード・ゴーレムが『全自動かき氷機』!? レーザーマンティスの光学斬撃が『ローストチキンの炙りバーナー』!? やめて、私が威信をかけてデザインした古代兵器たちの尊厳がボロボロだよぉ!!」
神は、ポップコーンを食べるのも忘れ、腹を抱えて呼吸困難に陥りかけていた。
スクリーンの中では、世界を滅ぼすほどの力を持った古代兵器たちが、トウヤたちの手によって次々と「調理器具」として再利用され、瞬殺ボーナスからは『魔導ミキサー』や『魔導オーブン』といった便利家電がポンポンと飛び出している。
「あはは……ふぅ。……って、ちょっと待って?」
神は、笑い涙を拭いながら、ふと手元の魔力キーボード(システムログ)に目を落とした。
「あの宝箱から出た『神話級・古代魔導ミキサー』……。私、あんなアイテムをドロップテーブルに設定した覚え、ないんだけど?」
神は首を傾げ、ログをカタカタと叩いて解析する。
そして、その結果を見て、ピタリと動きを止めた。
「……うっそ。大迷宮のシステムそのものが、トウヤ君の【食への異常な執念】に引っ張られて、自動的にボーナスアイテムを『彼が欲しがる調理器具』に書き換えて(変異して)るの!?」
神の用意したシステムすらも、トウヤの食欲の前に屈服していたのだ。
「アッハッハッハ!! もう最高! 私の創った世界システムが、一人の飯炊き男の食欲に書き換えられちゃった!! これはもう、神の完全敗北だよ!!」
神は再び大爆笑し、足をバタバタとさせた。
しかし、ひとしきり笑い終えると、その瞳に「極上のエンターテイナー」としての悪戯っぽい光が宿った。
「……でも、これだけサクサク進まれると、エルドリアの100階層も数日で終わっちゃいそうだな。あの迷宮の最深部にいる『無限の魔導炉心(超巨大なオーブン機能を持つ神話級ドラゴン)』も、すぐに彼らの極上ステーキにされちゃうだろうし」
神は、空中に巨大なホログラムを展開した。
そこには、世界地図と、各国の迷宮のネットワークが映し出されている。
「エルドリアの次に行くとしたら……やっぱり『和の国ミズホ』かな? あの国の迷宮の底には、海を越えた先にある【未踏の大陸】へのゲートが隠されているんだけど……」
カタカタカタッ。ターンッ!
神は、楽しげにハミングしながら、システムに新たな『伏線』を仕込み始めた。
「よし! トウヤ君たちがもっとワクワクするように……ミズホの迷宮のドロップテーブルに、【神界の食材の種(神々が食べる幻の果実や、究極の出汁が出る黄金の昆布など)】をこっそり紛れ込ませておこう!」
神の指先から放たれた光のデータが、世界システムへと溶け込んでいく。
「それに、彼らがそのうち『神界』にまで出前を届けに来てくれるって言ってたしね。……なら、神界へと続く『隠しルート』の鍵も、未踏の大陸にポロリと落としておいてあげなきゃ」
神は、完全に「プレイヤー(トウヤたち)に最高のイベントを提供するゲームマスター」の顔になっていた。
「さあ、急いでおいで、悠久の踏破者たち! エルドリアの古代オーブン(ラスボス)を美味しく平らげたら、次はもっともっとスケールの大きな『究極の飯テロの旅』が待っているからね! 私、特等席でよだれを垂らしながら待ってるよ!」
エルドリア迷宮の完全踏破を前にして、神界ではすでに次なる「未踏の大陸」と「神界出前ルート」という超絶スケールの伏線が張り巡らされていた。
一切の絶望がない、ただ純粋な食欲と笑い声に満ちた大冒険。
トウヤたちの前人未到の飯テロ巡礼は、神をも巻き込みながら、さらなる極上のステージへと向かって爆走していくのであった。




