第200話:【閑話】世界全土に響く「出前」の鐘と、最後の晩餐を求めて+ 世界は美味い(ファミリー)に染まり、新たな巡礼が始まる
### 第200話:【閑話】世界全土に響く「出前」の鐘と、最後の晩餐を求めて+ 世界は美味い(ファミリー)に染まり、新たな巡礼が始まる
『悠久の大迷宮』完全踏破、そして魔界迷宮『深淵の魔食窟』の完遂という歴史的快挙から数日。
創造神による全世界的な『迷宮アップデート』は、この大陸の地政学(と食文化)を完全に塗り替えていた。
かつてアルカディア王国の門前で土下座外交を繰り広げ、絶対同盟の末席に連なる許可を必死に求めていた中立国や小国たち。彼らにとって、今回の「10階層規模のダンジョン」と「迎賓館ゲート(物流門)の接続」という恩恵は、まさに干天の慈雨であった。
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【旧・中立国連合――『飯テロ特区』となった辺境の変貌】
かつては「中立」という名の鎖国を貫き、細々と干し肉を齧っていた辺境の諸国。
彼らの領土に突如出現した10階層ダンジョン『恵みの石窟』は、今や国中を挙げての「出前ルート開拓基地」へと変貌していた。
「(全隊、構え! 第3階層に出現した『極上・魔茸』の収穫を開始する! トウヤ殿の『きのこパスタ』のレシピを再現する千載一遇のチャンスだぞ!!)」
ある小国の騎士団長が、かつての武装とは似ても似つかない『大きな籠と安全な採集具』を持って迷宮へ飛び込んでいく。
彼らの国には、アルカディア王国の『配達部隊』から派遣された臨時教官(元・諜報員や暗殺者たちが数名)が駐在していた。彼らは、絶対同盟に加盟したばかりの初心者たちに対し、冷徹ながらも的確な指導を行っていた。
「(……そこ、腰が浮いている。迷宮内では、スープをこぼさないことより先に、食材を傷つけない『無振動歩法』を習得せよ。さもなくば、トウヤ殿の舌を満足させることはできん)」
「(は、はいぃぃっ!!)」
かつて「中立」を盾に絶対同盟を避けていた王たちは、今や「いかにトウヤの味を再現するか」に国家予算の半分を注ぎ込んでいた。国民たちもまた、神の与えた10階層迷宮を攻略することで、ようやく「他国に頼らない自給自足(ただし高級食材に限る)」の生活を実現し、かつての飢えと貧しさから解放されつつあった。
彼らにとって、絶対同盟への加入は「政治的な敗北」ではなく、この世界における【最強の幸福】への切符だったのだ。
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【最後に動いた国々――『絶望のどん底からの一発逆転』】
しかし、世界にはまだ、この「物流革命」に乗り遅れ、崖っぷちに立たされている勢力があった。
かつて絶対同盟の飯テロを嘲笑し、迷宮の探索を「非効率な道楽」と切り捨てていた排他的な大国群である。
彼らは「自分たちだけで魔力資源を管理する」という古い教義に固執していたが、絶対同盟が神の恩恵を独占し、圧倒的な戦力と経済力を手に入れたことで、彼らの国は完全に時代から置き去りにされていた。
「(……陛下。他国は皆、神の迷宮とアルカディアの出前ルートで繁栄を極めております。我が国は……このままでは資源の枯渇と、食糧不足で……)」
「(……わかっておる。プライドなど、もう紙屑だ)」
排他的だった大帝国の皇帝は、玉座から立ち上がり、震える手で『絶対同盟への加盟申請書』に署名した。彼らは、隣国が一日で迷宮を踏破し、その夜には迎賓館で神話級のステーキを食べているというニュースを知り、己の無知を呪ったのである。
「(……アルカディアへ飛べ。ヴィルヘルム国王に、我が国の全てを差し出す旨を伝えよ。迷宮の独占権も、魔力資源の管理権も、全てだ。……ただ、トウヤという料理人の作る『牛丼』という名の飯が食いたい。我々も、あの狂ったような平和の渦に入りたいのだ!!)」
彼らが送った使者は、アルカディアの王城前で他の国々と共に列をなし、前代未聞の【国家単位の出前申し込み】を行うという、涙ぐましい外交戦を繰り広げた。
神は、そんな彼らの必死な姿をも、神界の特等席でポップコーンを食べながら観察していた。
「あはは! 頑固だった連中まで、ついに飯の美味さに屈したね。これで世界は完全に『飯で繋がる一つのファミリー』になったよ!」
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【第200話の締めくくり――迎賓館の大団円】
アルカディア王国の『星繋ぎの迎賓館』。
宴会場には、世界中から集まったかつてのライバルたち、元中立国の王たち、そして新参の帝国使節団たちが入り混じり、トウヤの作った『究極の神話級・海鮮ブイヤベース』を囲んでいた。
「(……トウヤ殿。このスープ……神が与えたはずの、我が国の迷宮で採れた食材が使われておる……!)」
かつて絶対同盟を恐れていた中立国の王が、トウヤの鍋を口にして震える。
「(ああ。さっきゲート経由で届いたばっかりの、そちらの国で採れたばかりの食材ですよ。鮮度は完璧だ)」
トウヤが気さくに笑う。
「(素晴らしい……!! 我が国の食材が、このような絶品に……!! これまで、何を恐れて我々は貴殿らを拒んでいたのだ!!)」
中立国の王は、王の威厳もかなぐり捨てて、トウヤの料理に感動して号泣した。
その光景を、ガレスやエリス、ジンたちが、まるで「してやったり」という顔で眺めている。
世界が一つになった瞬間だった。
争いは食欲に吸収され、排他主義は美味しい出前の前で溶けていく。
「(……さあ、宴会も最高潮だ! 今日は俺たちが魔国で手に入れた【神龍の極上薬膳肉】の残りもあるぞ! カイト、マヨネーズを回してくれ! シュン、ジャンクなフライドポテトを追加だ!!)」
「「「オォォォォォォォォッッ!!!!」」」
神界から見守る神のポップコーンの音が、宴会の喧騒に混ざって(気がするほどに)軽やかに響く。
第200話という節目を迎えた今、トウヤたちの「飯テロから始まったスロー攻略」は、世界を救い、美食による究極の平和を実現した。
「(……さてと。これだけ平和になったんだ。もうやるべき『クエスト』は一つしかないよな)」
トウヤは、夜空を見上げ、仲間たちと杯を交わした。
「(次のツアーは、どこへ行こうか。……世界中の迷宮を遊び尽くしたら、今度は神様が住んでるらしい『神界』とやらに、出前を届けに行ってみるか?)」
その無茶苦茶な冗談を、仲間たちは「いいですね!!」と満面の笑みで即答した。
絶対同盟の各国の迷宮が神の恩恵によってアップデートされ、世界中を『アルカディアの出前網』が縦横無尽に駆け巡るようになってから数日。
アルカディア王国の迎賓館で行われた大宴会は、もはや国境の概念を完全に溶かし去っていた。かつては排他的だった大帝国も、日和見を決め込んでいた中立国も、今や全員が同じテーブルでトウヤの作る『究極の牛丼』と『神龍の薬膳肉』を分け合い、明日からのさらなる繁栄(と美味しい食事)を誓い合っている。
宴の熱気が最高潮に達する中、トウヤは円卓の片隅で、懐から古ぼけた「世界地図」を取り出した。そこには、まだ見ぬ土地や、ようやく加盟したばかりの国々が赤ペンで記されている。
「……ふう。これでようやく、世界中が『飯テロ』という名の平和に染まったわけか」
トウヤが満足げに笑うと、隣に座っていた魔王ゼノン(太一)が、最後の締めに運ばれてきたデザートの『魔界のベリーと蜂蜜のタルト』を頬張りながら肩を叩いた。
「おいおい、これで終わりみたいな顔すんなよトウヤ。お前、忘れてないか? 神様が言ってた『今後のアップデート』ってやつを」
「……ああ、そうだな。まだ、神様が用意した『真の恩恵』は世界中にバラ撒かれたばかりだ」
トウヤの視線の先には、アルカディア王国の国王ヴィルヘルムと、神聖魔導帝国エルドリアの若き皇帝、そして和の国ミズホの代表者が、何やら深刻かつワクワクした顔で話し合っている姿があった。
「トウヤ殿! 実は、我が神聖魔導帝国エルドリアが今回頂いた迷宮は、前人未踏の【古代魔導文明の遺構】とリンクしているようでな。……ここから、さらなる『魔導と食の融合』の可能性が広がっておるのだ!」
エルドリアの皇帝が、目を輝かせて駆け寄ってくる。
「トウヤ殿、我が和の国ミズホも同様です! 新たな迷宮の最深部からは、伝説の『幻の出汁』を生むという謎の湧き水が見つかりました! 貴殿の力で、それを最大限に引き出す料理を開発していただきたく……!!」
ミズホの代表も、深々と頭を下げて懇願する。
トウヤはそれを見て、ガハハと豪快に笑った。
「なんだよ、みんな。迷宮を踏破した後の『本当の冒険』は、これからだってことか」
その時、宴会場の空気がピリリと引き締まった。
神界から再び、あの柔らかな波動と共に『創造神』の幻影が、全員の前にだけ見えるように優しく顕現したのだ。
「みんな、楽しんでいるね! 宴会も良いけれど、世界はまだまだ広いよ」
神は、ポップコーンを一つ摘まむと、空中に壮大な【大陸全図】を映し出した。
「今回アップデートしたダンジョンたちは、それぞれが世界の『秘境』に繋がっている。エルドリアの魔導迷宮の奥には、忘れられた『空中都市の食材庫』が。ミズホの迷宮の底には、海を越えた先にある『未踏の大陸への入り口』が隠されているんだ」
「(……神様。それってつまり、今回のダンジョン攻略は【序章】に過ぎないってことか?)」
トウヤがワクワクを隠しきれない顔で問いかける。
「(そうさ! 今の絶対同盟の団結力なら、君たちはもう、この大陸の枠組みすら超えていける。……トウヤ君、君の料理が、世界中の人々の笑顔と胃袋を一つにした。だからこそ、今度はその仲間たちと共に、まだ誰も知らない『伝説の食材』を探しに行く旅に出てほしいんだ)」
神の言葉は、確信に満ちていた。
絶対同盟という巨大なファミリーを得て、物流ゲートによって世界は縮まった。今や、トウヤたちは単なる一冒険者ではなく、世界を美味くし、一つにする『美食の巡礼者』なのだ。
「……なるほど。エルドリアの魔導迷宮で『魔導コンロ』をさらに進化させ、和の国ミズホで『究極の出汁』を突き詰め、世界中の迷宮で最強の食材を集める……。こりゃあ、当分引退なんてできそうにねえな」
トウヤが仲間たちの方を向くと、ガレス、エリス、ジン、ルミナ、マリアの全員が、戦士の瞳をして頷いた。
「(トウヤ様。次の目的地はエルドリアか、それともミズホか……。決めるのは貴殿ですわ。私たちは、どこへだって付いていきます)」
「(ああ。世界中の珍味を食い尽くすまで、この旅が終わることはないからな)」
トウヤは、高く杯を掲げた。
「みんな、聞け!! 宴会は終わりじゃない! 今夜はこの宴会で英気を養い、明日の朝一番から……エルドリア帝国への【遠征】を開始する!! 我らが新たな巡礼の旅は、ここからが本番だ!!」
「「「オォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
その声は、王都の夜空を突き抜け、神界まで届くほどに高らかであった。
第200話にして、彼らの物語は決して終わらない。
最強の料理人トウヤと、彼を愛する最強の仲間たち、そして絶対同盟という強固なファミリーを背負い、彼らは未知なる大迷宮と、まだ見ぬ極上の味を求めて、新たな旅路へと羽ばたいていく。
世界全土を巻き込んだ『神聖魔導帝国遠征編』、開幕である。
(物語は、さらなる深淵と、より美味なる高みへと続いていく……!)




