第199話:地底魔国・深淵の完遂と、神がもたらす『世界全土アップデート』
### 第199話:地底魔国・深淵の完遂と、神がもたらす『世界全土アップデート』
『深淵の魔食窟』第100階層――『魔界の心臓・灼熱の神殿』。
地底魔国の地下深くに生えた、創造神による新たな神造迷宮。
悠久の踏破者たちは、その最深部へと足を踏み入れていた。迷宮の壁面は生きたマグマの如く脈打ち、空間そのものが高密度の魔力を孕んだ硫黄とスパイスの香りに包まれている。
『ガァァァァァァァァァァッッ!!』
地鳴りのような咆哮と共に、マグマの海から這い出てきたのは、全身が黒鉄の装甲と灼熱の業火で覆われた、二本角の巨大魔龍――『魔界神竜・インフェルノ・バハムート』。
「(来たぞ! 魔界ダンジョンのラスボスだ!! あいつの心臓部は、世界最高の『超絶スパイシーな魔力源』……つまり、食えば身体能力が飛躍的に上がる『究極の薬膳肉』の塊だ!!)」
トウヤの【美食神眼】が、神竜を「最高の滋養強壮薬膳」として解析する。
「(よし! ジン、エリス! 鱗を剥がす!! ガレスは火炎ブレスの受けを頼むぞ!!)」
「(オウッ! ワシの盾が火傷しそうじゃが、この肉のためなら些細なことよ!!)」
絶対同盟の盟主たる国王や魔王ゼノンが見守る中、トウヤたちは第100階層の決戦を「日常の作業」のごとく執り行った。
ルミナとマリアの結界が魔神竜の灼熱を遮断し、ガレスのバッシュが装甲を砕く。ジンとエリスが神速で肉を切り出し、トウヤがラストの一撃を叩き込む。
ズバァァァァァァァァァッッ!!
神龍は霧散し、その肉体は山のような『魔界神竜の極上薬膳肉ブロック』となってアイテムボックスへ。
カッ――――!!
【魔界迷宮『深淵の魔食窟』、完全踏破。世界最速・最効率記録更新】
その瞬間、迷宮の空気が一変した。
「……また来たな」
トウヤが空を見上げると、次元の裂け目から、またしても『あの』神が、今度は美味しそうな『巨大アイスクリーム』を片手にフワリと降りてきた。
「やぁ! おめでとう、みんな! 魔国の迷宮もサクッとクリアしちゃうなんて、さすがだね!」
神は、満足げに微笑むと、指先をパチンと鳴らした。
「実はね、君たちが魔国の迷宮を攻略している間に、絶対同盟以外の『中立国』や『貢献度の低かった国』の王たちから、私のもとに死ぬほど【出前ルート開通のお願い(と土下座の山)】が届いたんだよ」
「ははっ、相変わらず世界の物流を管理してるな神様は」
「あはは! まぁ、君たちが世界中に『美味い飯』という幸福を広めてくれたおかげで、世界から争いが消え去った。だから……今度は彼らにも、もう一段階上の【アップデート】をプレゼントすることにしたよ!」
神は、世界地図を再びホログラムで展開した。
「すべての国に迷宮をグレードアップさせるよ。貢献度の低かった国や中立国にも、まずは10階層規模からスタートさせてあげる。彼らにはこれから、君たちの『出前ルート』の開拓と、飯テロ文化の普及に励んでもらうからね!」
「……それって、事実上の『絶対同盟への強制加入』じゃねえか」
トウヤが苦笑すると、神はウインクをして「平和になるなら良いじゃない?」と笑った。
「それだけじゃないよ。君たちの『迎賓館』も、世界中へ出前を配送するための【時空転移門】を各国の迷宮に直接連結しておいたから。これで、世界中どこにいても、トウヤ君の料理が【最短1分】で届くようになるよ!」
「「「オォォォォォォォォッッ!!!!」」」
それは、食文化における世界の革命であった。
***
その夜。『星繋ぎの迎賓館』の大宴会場。
「……信じられん。世界中の迷宮が神の力でアップデートされ、さらにはどの国からでもアルカディアの厨房に直接アクセスできる『物流ゲート』が開通しただと……?」
魔王ゼノン(太一)が、今日一日で成し遂げられた【世界全土のインフラ改変】の報告を受け、呆然とステーキ皿を見つめていた。
「ああ。これからは世界中が、アルカディアを中心に【飯】で繋がるんだ。中立国も小国も、これで出前を頼まざるを得ない(そして美味い飯を食わざるを得ない)状況になったな」
トウヤが、魔国のダンジョンで採れた『魔界の激辛・黄金トウガラシ』をまぶした、特製チキンを頬張りながら笑う。
「ガッハッハ! これでワシらのグルメツアーも、移動の手間が省けて益々捗るというものじゃ!!」
宴会場は、国王たちや各国からの使者、そして中立国から改心して駆けつけた外交官たちで埋め尽くされ、かつてないほどの熱気に包まれていた。
彼らは皆、トウヤたちが持ち帰った『魔界神竜の薬膳肉』の芳醇な香りに酔いしれ、絶対同盟の繁栄と、神からもたらされた新たなる時代の幕開けを祝杯で鳴らしていた。
「皆様! この【魔界神竜の薬膳肉】は、神から与えられし力の源でございます!! これを食せば、我ら絶対同盟の絆は永遠に不滅となり、魔物との探索もより美味しく安全になることでしょう!!」
ガルド宰相の音頭で、会場中の王たちがジョッキを高く掲げる。
「「「アルカディア万歳!! 悠久の踏破者、万歳!! 飯テロこそが正義ィィィッ!!!!」」」
世界全土に響き渡る、歓喜の咆哮。
神という特大のスポンサーを得て、物流革命と迷宮グルメの時代は、いよいよ止まることなく加速し始める。
トウヤたちにとってはただの「美味いもの探しの旅」だったはずが、いつの間にか世界を支配する『食の帝国』の礎を築き上げていたことに、彼ら自身は気づかぬまま――宴は、朝まで終わることがなかった。




