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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第194話:【閑話】聖ヴァリス神聖国の没落と、神に愛されなかった者たちの食卓

### 第194話:【閑話】聖ヴァリス神聖国の没落と、神に愛されなかった者たちの食卓

大迷宮の完全踏破と、創造神による世界規模の『ダンジョン・プレゼント』から数週間。

世界が「絶対同盟」という一つの巨大な美食ファミリーとして結束し、各国の専用迷宮で歓喜の悲鳴(という名の限界突破特訓)がこだまする中。

この世界には、神の恩恵から完全に見放され、誰にも回収されずに放置されていた【最後の未回収伏線(勢力)】が存在していた。

絶対同盟の遥か西方に位置する宗教国家――『聖ヴァリス神聖国』である。

***

【聖ヴァリス神聖国・大聖堂――絶望の最高会議】

「……それで? 今日もアルカディア王国への『通信』は繋がらなかったのか?」

豪奢な法王座に深く腰掛けた老齢の法王が、虚ろな目で玉座の下に平伏する枢機卿たちを見下ろした。

「は、はい……。我が国の魔法通信は、絶対同盟のネットワークから完全に【着信拒否ブロック】されております。使者として放った白鳩も、国境付近を飛んでいた『出前配達中の飛竜部隊』の風圧で全てUターンして戻ってきてしまい……」

枢機卿の一人が、冷や汗を拭いながら震える声で報告する。

「おのれェェェッ……!!」

法王は、手にした純金の錫杖を床に叩きつけた。

「我が聖ヴァリス神聖国は、神の声を代弁する地上で最も尊き国のはず! なぜじゃ! なぜ『本物の創造神』は、我々ではなく、あのような野蛮な飯炊きトウヤと、欲深い絶対同盟の者どもに恩恵を与えたのじゃ!!」

聖ヴァリス神聖国は、かつてトウヤたちを「異端の力を振るう悪魔」と認定し、彼らの快進撃を止めるために六人目の転生者である毒使い・シオンと結託して【迷宮水源の汚染計画】を企てた国である。

しかし、その計画は「出前ルートの安全」に異常な執着を見せるサイラス率いる配達部隊によって完全に粉砕され、シオンは捕縛。計画が頓挫して以来、彼らは報復を恐れて完全に国を鎖国状態にしていた。

そして、彼らが城に引きこもって震えている間に、世界は終わった。

いや、彼らにとってのみ「終わった」のである。

「(法王猊下……。そもそも我が国の教義は『清貧と断食こそが神への祈り』。しかし、先日世界中に配信された映像では、降臨した創造神様は……その……)」

「……ポップコーンを齧りながら、極上肉のバーベキューを絶賛しておられましたな」

別の枢機卿が、涙声で付け加える。

「言わんでええェェェッ!!」

法王が頭を抱えて絶叫する。

「我々が数百年間守り続けてきた教義が、ただの『神様の好み(ジャンクフード好き)』と完全に真逆じゃったというのか!? 断食して祈る暇があったら、美味い肉を焼いて皆で笑って食えと!? そんな馬鹿な神がおってたまるかァァァッ!!」

しかし、現実は非情である。

絶対同盟の国々には巨大な迷宮が与えられ、無限の食糧と富が約束された。

一方で、神聖国の領土には「迷宮のメの字」も現れず、さらには鎖国によって物流が完全に停止。国庫の純金はあっても、それを「極上の飯」に換える手段が完全に断たれていた。

「……法王猊下。本日のご夕食でございます」

そこへ、神官が恭しく銀の盆を運んできた。

カバーを開けると、そこに乗っていたのは「カチカチの保存用パン」と「塩味の薄い豆のスープ」のみ。

「またこれかァァァッ!!」

法王が涙目で盆をひっくり返そうとするが、空腹すぎて力が入らず、そのまま机に突っ伏した。

「……肉じゃ……。ワシも、映像で見たあの『神バハムートのシャトーブリアン』とやらを食ってみたいのじゃ……。トウヤ殿が作った、あの『にんにくしょうゆ』とかいう神の雫を垂らして……ぐすっ……」

かつて大国として世界に君臨した宗教国家のトップは、今やただの『隣の家の晩御飯の匂いを嗅いで泣く哀れな老人』へと成り下がっていた。

「……枢機卿よ。もうプライドは捨てる。我が国の全財産を差し出してもよい……アルカディアの『配達部隊』に、出前の注文を……ピザの一枚でも良いから、発注するのじゃ……」

「猊下、すでに100回ほど発注の魔法陣を起動しておりますが、システムメッセージで『テメェらの国は配達エリアブラックリストです』と弾かれます」

「アァァァァァァァァッッ!!!!(絶望)」

神の教えを履き違え、食の喜びを否定し、さらには他者の飯を不味くしようとした(水源に毒を撒こうとした)者たち。

彼らが迎えた結末は、武力による滅びではなく、【究極の美食から永遠にハブられる】という、この世界における最も残酷な地獄であった。

### 【閑話その2:名もなき配達員たちの狂気の日常】

一方、神聖国の絶望など露知らず。

絶対同盟の各国では、神の恩恵によって【デタラメに強化された日常】が当たり前のように回っていた。

神聖魔導帝国エルドリアに突如出現した、第100階層規模の迷宮『白銀の魔導廟』。

その第85階層に相当する「極寒の絶対零度エリア」にて、エルドリア帝国の精鋭部隊が、迫り来る神話級の氷竜と死闘を繰り広げていた。

「(怯むな! 氷竜のブレスを魔導盾で弾き、無振動歩法で懐に潜り込め! 訓練の成果を見せるのだ!)」

帝国軍の小隊長が、凍てつく嵐の中で声を張り上げる。

そこへ。

『チリンチリ〜ン♪』

極寒の吹雪と氷竜の咆哮が吹き荒れる中、軽快な鈴の音と共に、真っ赤なウー〇ーバッグを背負った一人の青年(配達部隊の一般隊員)が、空間の歪みを無振動のステップでスルスルとすり抜けながら現れた。

「ちわーっす! アストラル・デリバリー(迎賓館直轄配達部隊)です! 帝国第4小隊の皆様、トウヤ様特製の『極上・熱々モツ鍋(10人前)』と『締めの中華麺』のお届けに上がりましたー!」

「「「オォォォォォォォッ!! 待っていたぞォォォッ!!」」」

死闘を繰り広げていた帝国兵たちの顔が、一瞬にして歓喜に染まる。

「(ちょっと待っててくださいね、今この氷竜の足、邪魔なんでどかしますんで。……【配達奥義・無振動の膝カックン】!)」

配達員の青年が、氷竜の巨大な足の関節を「コンッ」と軽く蹴ると、神話級の氷竜の巨体がバランスを崩し、ズゴォォォン! と音を立てて雪原に突っ伏した。

「(はい、お待たせしました! スープの温度、一ミクロンも下がってませんよ!)」

配達員は、氷竜がのたうち回っているのを完全に無視し、ウー〇ーバッグから湯気を立てる極上のモツ鍋を取り出し、小隊長へと手渡した。

「(おおっ! この絶対零度の階層で、火から下ろした直後のような完璧な温度……! さすがはサイラス教官とファルコン教官の愛弟子たちだ!)」

「(ありがとうございます! では、別料金で『配達員による氷竜の超速解体オプション』も承っておりますが、いかがなさいますか? 今なら解体したての霜降り肉を、迎賓館の熟成庫へ直接配送するサービス付きです!)」

「(頼む! 支払いは帝国の国庫から引き落としで!)」

「(毎度ありィィッ!!)」

ザシュゥゥゥゥッ!!

数秒後には、哀れな神話級の氷竜は、モツ鍋の横で完璧なブロック肉へと姿を変えていた。

かつては「大迷宮の最深部」でしか見られなかった異常な光景。

それが今や、絶対同盟の各国の迷宮では【日常のデリバリー風景】として定着していた。サイラスやファルコンといった幹部だけでなく、名もなき一般の配達員たちですら、神の迷宮を「ちょっと足場の悪い配達ルート」程度にしか認識していないのである。

「(よし、帝国での配達完了! 次はアルカディア王国リゾートの『次元もぐら叩き』の会場に、冷えた無限コーラのお届けだ! 10分で行けるな!)」

配達員の青年は、爽やかな笑顔で吹雪の中に消えていった。

### 【閑話その3:テイムモンスターたちの極上ティータイム】

そして、舞台は再びアルカディア王国の『星繋ぎの迎賓館』へ。

迎賓館の最上階に設けられた、王族専用の空中庭園。

そこで、世界を救った三匹のテイムモンスターたちが、極上のティータイムを満喫していた。

「ぷるるんっ♪(今日も風が気持ちいいねぇ)」

巨大スライム(暴食の化身)が、日向ぼっこをしながら体を揺らす。

「オンッ!(ああ。迷宮の探索も終わって、毎日こうして極上のおやつが食べられる。最高の生活だぜ)」

神話級フェンリルが、メイド長にブラッシングされながら目を細める。

「ギャウギャウ!(トウヤの作る飯が食えれば、俺はどこでもいいけどな!)」

飛竜が、用意された『ラスボス肉の切れ端(といっても超一級品)』をバクバクと丸呑みしている。

かつては大迷宮の深淵で冒険者たちに恐れられ、殺し合いの螺旋に身を投じていた彼らも、今や完全に【トウヤのペット(家族)】として平穏な日々を謳歌していた。

「さーて、お前ら。おやつの時間だぞー」

そこへ、トウヤがエプロン姿で現れた。その手には、巨大なボウルに山盛りになった『究極のプリン・ア・ラ・モード』が握られている。

「100階層の素材で作った特製プリンだ。お前らも一緒に迷宮を戦い抜いてくれたからな、今日は特別大盛りだぞ」

「「「ぷるるっ! オンッ! ギャウッ!(ウオォォォォォッ!!)」」」

三匹のモンスターたちは、目を輝かせてトウヤにすり寄る。

世界から争いが消え、恐怖も絶望も、ただの「美味しい食材へのスパイス」へと変わった新時代。

神に見放され、地下牢や鎖国で絶望する哀れな未回収の敵役たちを尻目に。

『悠久の踏破者』と彼らを愛する者たちの周りには、今日も極上の飯の匂いと、とびきりの笑顔だけが溢れ続けているのであった。


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