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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第186話:次元白鯨の瞬殺と、神を笑い転げさせる『理不尽な美食家たち』

### 第186話:次元白鯨の瞬殺と、神を笑い転げさせる『理不尽な美食家たち』

『悠久の大迷宮』第97階層――『神域・次元重畳の万華鏡』。

空間がデタラメに継ぎ接ぎされ、羅針盤すら機能しないこの狂気の次元迷路において、トウヤの【極上の匂いを嗅ぎ分ける本能】だけを頼りに進む『悠久の踏破者』たちの行軍は、もはや迷宮のギミックに対する完全なる冒涜であった。

「(ジン、右の『逆さまの砂漠』から来るぞ!)」

「(見えてるぜトウヤ! 【幻影歩法】!)」

「(砂が料理に入っては台無しですわ! 【渾身撃・無振動の真空波】!)」

空間の裂け目から襲い来る次元モンスターたちを、神がかり的な連携で次々と『極上の食材』へと変えていく六人と三匹。

本来ならば空間の無限ループに囚われ、数年単位で彷徨うはずのこの階層を、彼らは【数日】という、ただのピクニックのような短期間で駆け抜けていた。

「(……スン、スン。よし、匂いが限界まで濃くなった。間違いない、この『燃え盛る雪原』の壁の向こうだ!!)」

トウヤが、空間の境目(本来は通り抜けられない壁)に向かって、一切の躊躇なく剣を振り下ろした。

パリンッ!!

次元の壁がガラスのように砕け散り、その先に現れたのは――圧倒的な存在感を放つ、純白の大扉であった。

「おおっ! 本当に着きやがった!」

ジンが、呆れたような、しかし歓喜に満ちた声を上げる。

「ガッハッハ! 羅針盤がぶっ壊れておろうが、トウヤの食欲ハナにかかれば、どんな迷宮もただの『厨房への一本道』じゃな!」

トウヤの尋常ならざる嗅覚と、一切の隙がない連携探索により、彼らは97階層のギミックを完全に無視し、またしても最短ルートで大ボスの間へと到達してしまったのである。

「よし、サクッと極上肉を頂いて、ボーナスを貰うぞ!」

トウヤが純白の大扉を押し開けた、その瞬間。

『ボォォォォォォォォォォォォッッ!!!!』

空間が海鳴りのような咆哮で満たされた。

次元の海の中から、山脈のような巨体がゆっくりと浮上してくる。

全身が透き通るような白金色の脂に覆われ、周囲の次元を歪めるほどの質量を持った超巨大な鯨。

第97階層大ボス――『アストラル・ディメンション・モビーディック(神話級・次元白鯨)』。

「(出たぞ、97階層の大ボスだ!! あいつの肉……細胞の一つ一つが『異次元の脂』で構成されてやがる! 口の中で溶けるどころか、次元を超えて旨味が脳に直接来るヤツだ!!)」

トウヤの神眼が、そのふざけた肉質を解析し、ゴクリと喉を鳴らす。

「(次元を超える旨味……!! 逃しませんわ!!)」

「(行くぞ!!)」

もはや、悠久の踏破者たちの連携は次元すらも置き去りにしていた。

白鯨が、その巨体を『別の次元』へと潜らせて完全回避を図ろうとした瞬間。

「(ルミナ、マリア! 次元ごと海を凍らせろ!)」

「(【聖極氷結・多次元ロック】!!)」

魔術師二人の魔法が、白鯨が逃げ込もうとした次元の隙間をマイナス数百度の冷気で満たし、物理的に『出入り口』を塞いでしまう。

『ブォォォォッ!?(な、なんだと!?)』

白鯨が驚愕に目を見開いたところへ、ガレスが空中の次元の壁を蹴って急降下した。

「(ワシが脳天を抑える! 【流転の盾・特大重力アンカー】!)」

巨大な大盾が白鯨の頭部に直撃し、その強烈な重力波で巨体が宙に縫い留められる。

「(ヒャッハー! 霜降りの層、見切ったぜ! 【幻影歩法・次元断ち】!)」

「(皮と脂の境目、美しく剥がさせていただきますわ! 【渾身撃・無振動の三枚おろし】!)」

ジンとエリスが、神速の交差で白鯨の強靭な外皮と防御膜を、一滴の肉汁もこぼさずに切断していく。

そして。

「(究極の白鯨ベーコン……いただきだ!! 【渾身撃・次元鯨の無振動解体】!!!)」

ズバァァァァァァァァッッ!!!!!

トウヤの放った一閃が、白鯨の急所(星のコア)を完璧に貫いた。

次元を渡る神話級の白鯨は、自らの反撃の手段を何一つ発動できないまま光の粒子となり、山のような『神話級・次元白鯨の究極脂ブロック肉』となってアイテムボックスへ収納された。

カッ――――!!!!

【第97階層クリア。マナー遵守・完全無振動連携ボーナス獲得】

ファンファーレと共に現れた宝箱の中身は、『神話級・次元圧縮無水鍋(どんな食材の旨味も逃さず、瞬時に極上の煮込み料理を完成させる魔導鍋)』であった。

「よしっ! 今回も完璧な解体だったな!」

トウヤが宝箱の鍋を回収し、自身のアイテムボックスの容量を確認する。

「えーっと……今回は97階層を数日で抜けちまったし、道中で厳選して狩ってたから、ボックスの容量はまだ【60%】くらいだな。全然余裕がある」

「あら、珍しいですわね。いつもならこの時点でパンパンになって、迎賓館に荷下ろし(宴会)に帰るところですけれど」

エリスが不思議そうに首を傾げる。

「ああ。せっかく調子も良いし、このまま98階層へ降りて、次の中継地点セーフエリアまで行っちまうか。……よし、扉を開けるぞ!」

トウヤたちは意気揚々と、第98階層へと続く純白の大扉を押し開けた。

ギギギギギギ……ッ!!

扉の先に広がっていたのは、これまでの『自然環境の延長』や『次元のバグ』すらも生ぬるく感じるほどの、完全なる【死の世界】であった。

大地は存在せず、見渡す限りの虚無の空間。

そこに、ブラックホールのような【超高密度の重力球】が無数に浮かび、常軌を逸した重力嵐が吹き荒れている。空間の圧力(気圧と魔力圧)は地上の数万倍に達し、一歩踏み入れただけで、ミスリル製の鎧すらも紙くずのように圧縮されて消滅するであろう極限環境。

第98階層――『神域・終焉の重力核と極星の深淵』。

「…………うわぁ」

トウヤが、その凄まじい空間の圧力を肌で感じ取り、呆れたような、ひきつった笑いを浮かべた。

「ガッハッハ! こりゃあ酷い! 普通の人間なら、扉を開けた瞬間の風圧だけで細胞レベルまでペシャンコじゃな!」

ガレスも、自身の周囲に重力結界を展開しながら大笑いする。

「本当に……。こんな理不尽な階層、私たち『悠久の踏破者』か……」

エリスが、苦笑いを浮かべながらトウヤを見つめ、そして全員で同時にある人物たちの顔を思い浮かべた。

「「「……サイラスたち『デリバリー教導隊(配達部隊)』くらいしか、生きて歩けないだろうな(ですわね)」」」

絶対的な死の領域を前にして、彼らの脳裏に浮かんだのは「この重力嵐の中でも、スープを一滴もこぼさずに歩くサイラスとファルコンたちの姿」であった。

「……あいつらなら、この超重力も『ハンバーグの空気を抜くのに丁度いい圧力ですね』とか言って普通に歩きそうだから困るんだよな」

トウヤが肩をすくめる。

「ヒャッハー、違いねえ! あいつらの出前スキル、もう俺たちと同じ次元のバケモノだからな!」

ジンも腹を抱えて笑い出した。

常人なら発狂して死を受け入れるであろう第98階層の絶望的な環境を前にして。

彼らはただ「あいつらならどうやって出前するか」という冗談を言い合い、呆れ笑いを浮かべながら、当然のようにその一歩を踏み出した。

「よし! ボックスの容量が満タンになるまで、この終焉の深淵の極上肉も狩り尽くしてやるぞ!!」

「「「オォォォォォォォッッ!!!!」」」

死の領域すらも彼らの食欲を止めることはできない。最強の美食家たちは、底なしの胃袋を満たすため、迷宮のさらなる深淵へと堂々と歩みを進めていくのであった。

***

【閑話:神界の玉座、アタフタからの大爆笑】

「な……ななな、なんでェェェェェェッ!?」

その頃。

次元の彼方、白亜の神殿にて。

【迷宮神】は、巨大な魔力スクリーンの前で頭を抱え、文字通り右へ左へとアタフタと走り回っていた。

「おかしい! 絶対におかしいよ!! 97階層の『次元重畳の万華鏡』は、私がマッピング対策に数百年かけて構築した、物理法則ガン無視の無限迷路だったのに! なんで『トウヤ君の鼻がピクピクした』だけで、最短ルートの次元の壁がガラスみたいに割れるのさ!?」

神は、空中に無数のホログラムパネルを展開し、システムのエラーログを必死に確認している。

「しかも、大ボスの『次元白鯨』!! あれ、ダメージを受けたら別の次元に逃げ込んで超回復する、神話級の中でもトップクラスの遅延ボスなんだよ!? なんで逃げる前に『次元ごと凍らせてアンカーで固定する』なんて物理的な力技で逃げ道を塞げるの!? 私の作った次元システム、ただのまな板扱いじゃない!!」

トウヤたちのあまりにも常識外れな攻略速度と、次元をも食い破る食欲の前に、神の想定は木っ端微塵に粉砕されていた。

神はカウチソファに顔を埋め、バタバタと足をバタつかせた。

「もうっ! 96階層も匂いで突破されて、97階層も匂いで突破されて! 私の考えた最強のギミックが、全部『美味しそうな匂い』に負けてるのが悔しいィィッ!!」

神は涙目でスクリーンを睨みつける。

そこには、トウヤたちが98階層の『終焉の重力核』の凄まじい環境を前にして、「サイラスたちならスープこぼさないだろうな」と呆れ笑いしながら足を踏み入れていく姿が映し出されていた。

その映像を見た瞬間。

「…………ぷっ」

神の目からポロリと悔し涙がこぼれ落ちた直後。

神の口元が、どうしても耐えきれないというようにプルプルと震え始めた。

「……あははっ! な、なにそれ……っ! この期に及んで、配達員の子たちの心配(?)してるの……?」

神は、彼らのあまりにも余裕すぎる(そしてピントのズレた)会話に、ついに限界を迎えた。

「アッハッハッハッハッハ!! もうダメ、お腹痛い!!」

神はカウチソファから転げ落ち、神殿の床をバンバンと叩きながら、涙を流して笑い転げた。

「ひぃぃっ! 普通、あんなブラックホールみたいな空間見たら絶望するでしょ!? なんで『出前のスープがこぼれないか』を気にするのさ!! 君たちの頭の中、本当に【美味い飯】と【仲間のこと】しかないんだね!!」

笑いが止まらない。

神が用意した究極の絶望すらも、彼らにとっては「ちょっと足場が悪いキャンプ場」程度の認識にまで成り下がっている。

それは、ゲームマスターとしての悔しさを遥かに通り越し、もはや【至高のエンターテインメント】として神の心を鷲掴みにしていた。

「あー……っ、最高。本当に最高だよ、君たち」

ひとしきり笑い転げた後、神は床に仰向けに寝転がったまま、スクリーンを見上げて満面の笑みを浮かべた。

「どんな理不尽をぶつけても、絆と食欲で笑い飛ばして進んでいく。……これなら、残り2階層の絶望も、君たちなら最高のスパイスに変えてくれるって確信したよ」

神は、自らの指先から再び【祝福の光】を放ち、大迷宮の最深部へと送り届けた。

「さあ、いっておいで、私の大好きな最強の美食家たち! そのままの勢いで、第100階層の『究極の食卓』まで突っ走れ!! 私も最後まで、君たちの無茶苦茶な大冒険(飯テロ)を笑い転げながら見守らせてもらうからね!!」

アタフタと神を翻弄し、最後には爆笑させてしまうトウヤたち。

神界からの熱烈な応援(大爆笑)を背に受けながら、悠久の踏破者たちは、残りわずかとなった大迷宮の深淵を、今日も極上の笑顔と胃袋で平らげていくのであった。


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