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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第185話:次元の万華鏡と、理不尽を食い破る『究極の美食嗅覚』

### 第185話:次元の万華鏡と、理不尽を食い破る『究極の美食嗅覚』

『星繋ぎの迎賓館』にて、第96階層の大ボス『カオス・バハムート』の究極熟成肉を使った盛大な宴(ローストビーフの祭典)を終えたトウヤたち『悠久の踏破者』の六人と三匹。

腹の底から満たされ、英気を完全に養い切った彼らは、神の設置した魔導昇降機エレベーターを利用して、再び迷宮の深淵――第97階層の純白の大扉の前へと戻ってきていた。

「よし。アイテムボックスもすっからかんにしてきたし、心置きなく新たな神域の極上食材を詰め込めるぜ!」

トウヤが、万全のコンディションで扉に両手をかける。

「96階層の『始原の幻界』でさえ、空間が明滅するデタラメな環境じゃった。残る階層はあと4つ……ここから先は、さらにイカれた世界が待っておるじゃろうな」

ガレスが、大盾を構えて気を引き締める。

「ええ。ですが、どんな環境であろうと、私たちの連携とトウヤ様の料理があれば、全てが極上のスパイスになりますわ!」

エリスが、期待に頬を紅潮させて大剣を抜いた。

「行くぞ!!」

トウヤの掛け声と共に、重厚な純白の大扉が押し開かれる。

ギギギギギギ……ッ!!

その先に広がっていたのは、彼らの予想を遥かに超える――いや、人間の脳の理解を拒絶するような【狂気の次元空間】であった。

「な……なんじゃこりゃあ!?」

足を踏み入れた途端、全員の平衡感覚が消失した。

上下左右という概念は存在しない。頭上には巨大な大海原が逆さまに広がり、足元には燃え盛る火山が、そして右を見れば吹雪の雪原が、左を見れば黄金の砂漠が広がっている。

まるで、無数の異なる世界(次元)を切り刻み、デタラメに繋ぎ合わせたパッチワーク。空を飛ぶ鳥が空間の境目を越えた瞬間、突然深海魚に変わって泳ぎ出すような、物理法則の完全なる崩壊。

第97階層――『神域・次元重畳の万華鏡』。

「(うわぁ……。見ているだけで酔いそうですわ)」

エリスが、目を白黒させながら頭を押さえる。

「(空間そのものが、万華鏡みたいに無数に反射・交差してやがる。魔力探知なんて全く機能しねえぞ……。これ、歩いてるうちに自分がどこにいるか完全に分からなくなるヤツだ)」

ジンが、周囲の次元の境目を観察しながら冷や汗を流す。

トウヤが懐から『天啓の美食羅針盤』を取り出してみるが、案の定、盤面の矢印は粉々に砕け散り、プラチナの光も次元の狭間に吸い込まれるように明滅を繰り返しているだけで、全く使い物にならなかった。

「(トウヤさん……。この階層、マッピング(地図作成)は物理的に不可能です。一歩進むごとに、背後の空間が別の次元に書き換えられています)」

マリアが、後方の扉がすでに【見知らぬ原生林】へとすり替わっているのを見て、震える声で報告した。

「(なるほどな……)」

トウヤは、その異常すぎる環境を前にして、しかし酷く落ち着いた声で呟いた。

「(この階層、本気で冒険者を『永遠に閉じ込める』ために作られてやがる。普通に探索してたら、ボス部屋に辿り着くどころか、一生出られなくなるぞ。……場合によっちゃあ、ここで数ヶ月、あるいは年単位の時間が掛かるかもしれない)」

「数ヶ月……年単位……」

ルミナが息を呑む。

通常の冒険者であれば、発狂して絶望する宣告である。

――だが。

96階層での探索を経て、本来の「泥臭い冒険の喜び」を取り戻していた悠久の踏破者たちは、誰一人として絶望の表情を浮かべてはいなかった。

「(ガッハッハ! 年単位上等じゃ!!)」

ガレスが、豪快に笑い飛ばした。

「(アイテムボックスには、前階層までの神話級食材がたっぷりとあり、トウヤの『拠点創造』があれば、ここはただの【景色が無限に変わる極上のキャンプ場】に過ぎん!)」

「(その通りですわ! 次元が混ざり合っているということは、あらゆる環境の神話級食材が、ここ一箇所で獲り放題ということですものね!)」

エリスも、逆さまの海を泳ぐ巨大な魚や、砂漠を歩く巨大なサソリを見て、ヨダレを拭う。

「(ヒャッハー! 羅針盤が使えねえなら、俺たちの足と知恵だけで未知を切り拓くまでだ! 探索のやり甲斐が無限大だぜ!)」

ジンが、嬉しそうに双短剣を構える。

強大すぎる彼らにとって、この理不尽極まりない迷宮の深淵すらも、もはや「極上のスパイス」でしかなかったのだ。

「(ははっ、お前ら最高だな。……よし、じゃあ腹を据えて、この次元の万華鏡をしゃぶり尽くしてやろうぜ! 進行方向は……俺に任せろ!!)」

トウヤは、空間が複雑に交差する万華鏡の中心に立ち、目を閉じて深く、深く息を吸い込んだ。

「(……スン、スン……)」

トウヤの【美食家の嗅覚】が、限界を超えて研ぎ澄まされる。

次元の歪み。魔力のノイズ。視覚の欺瞞。

それら全てを削ぎ落とし、ただ純粋に【最も美味そうな匂い】の源流だけを探り当てる。

「(……ビンゴだ。あっちの『吹雪の雪原』と『溶岩地帯』が交差してる空間の奥。……とんでもなく上質な『脂の乗った白身魚』みたいな、透き通るような出汁の匂いがする)」

トウヤが指差した先。

それは、空間の境目が最も激しく歪み、常人なら絶対に足を踏み入れないような危険地帯であった。

「(了解ですわ! トウヤ様の鼻が示すなら、そこが正解のルート! 皆様、陣形を整えて進みますわよ!)」

トウヤの『勘(匂いセンサー)』を全幅の信頼で受け入れた一行は、一寸先も分からない次元の迷路へと足を踏み入れた。

――そして、彼らが歩みを進めて数十分後。

ピキィィィンッ!!

突如として、彼らの周囲の空間が【ガラスのように砕け】、その次元の裂け目から、超巨大な半透明の蛇が音もなく襲い掛かってきた。

『シャァァァァァァァッ!!』

第97階層の次元モンスター――『アストラル・ディメンション・サーペント(神話級・次元海蛇)』。

空間そのものを噛み千切り、別の次元から奇襲を仕掛けてくる、暗殺に特化した神域の魔物である。

「(右の死角から来るぞ!! マリア、ルミナ!)」

「(【聖光結界・空間固定】!!)」

「(【絶対零度・次元凍結】!!)」

ジンの神速の察知と同時に、後衛二人が極大魔法を放つ。

蛇が飛び出してきた『次元の裂け目』そのものを、光と氷の魔法でガチガチに固定し、蛇の胴体を空間の狭間に挟み込んで動きを封じ込める。

「(ナイスだ! ワシが頭を抑える!)」

ガレスが大盾を構え、空間を食い破ろうとする海蛇の巨大な牙を、シールドバッシュで真正面から受け止める。

「(ヒャッハー! 鱗の隙間、いただきました!)」

「(そのまま三枚に下ろしますわ!!)」

ジンとエリスが、完全に動きを止められた海蛇の胴体へ向けて、流れるような無振動の連撃を叩き込む。

そして、トウヤがトドメの一撃を放った。

「(極上の白身……鍋の具材に最高だぜ!! 【渾身撃・無振動の次元蛇解体】!!)」

ズバァァァッ!!

次元を渡る神話級の海蛇は、その能力を活かす暇すら与えられず、瞬く間に光の粒子となり、透き通るような『次元海蛇の極上白身肉ブロック』となってアイテムボックスへ収納された。

「ふぅ……よしっ! 相変わらず、最高の連携だったぞみんな!」

トウヤが剣を収め、笑顔で仲間たちを振り返る。

「ええ! 次元を超えてくる攻撃も、皆で死角をカバーし合えば全く怖くありませんわ!」

彼らは、空間が歪もうが、敵が次元の裏側から来ようが、96階層で培った【絶対的な連携】によって、全ての理不尽を食い破っていた。

そして、マッピングが不可能なこの階層において、トウヤの『美味い匂いを辿る』という本能的なナビゲートは、いかなる空間の無限ループやダミールートをも無効化し、文字通り【ボスの待つ最短ルート】を一直線に突き進んでいたのだ。

「よし、この白身肉は夜のキャンプで『神話級・次元海蛇の極上しゃぶしゃぶ』にしてやる! 次の獲物ルートを探すぞ!」

「「「オォォォォォォォッッ!!!!」」」

数ヶ月、いや年単位かかると予測されていた絶対迷宮の第97階層。

しかし、トウヤの究極の嗅覚と、それに全幅の信頼を置く仲間たちの泥臭くも完璧な探索によって、彼らは【たった数日】でボス部屋へ到達してしまうという未来を、未だ誰も(神界の迷宮神すらも)予想できてはいなかった。

狂気の次元空間を、純粋な『食欲』と『絆』だけで踏破していく悠久の踏破者たち。

彼らの笑顔と極上の飯の匂いが、万華鏡の神域を鮮やかに染め上げていくのであった。


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