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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第176話:豊穣の主の瞬殺と、清流の神域における『優雅な単独乱獲』

### 第176話:豊穣の主の瞬殺と、清流の神域における『優雅な単独乱獲』

『悠久の大迷宮』第92階層――『神域・黄金の豊穣平原』。

「効率」という名の冒険者のタイムアタックに呑まれかけていたトウヤたちは、無事に『スロー踏破』という己たちの原点を取り戻した。

羅針盤の青い矢印が示す北西へ向かう彼らの足取りは、数日前までの殺気立った乱獲作業とは打って変わり、まるで極上のピクニックを楽しんでいるかのように和やかだった。

「(ジン! 右から回り込む『プラチナ・ゴールデン・コカトリス』の群れ、お願いしますわ!)」

「(ヒャッハー、任せとけ! 【幻影歩法】!)」

「(ワシは正面の『プラチナ・マッスル・ミノタウロス』を引き受ける! 来い、極上の赤身肉よ!)」

連携による戦闘。それは単独乱獲ソロ・ハンティングに比べて時間はかかるものの、互いの背中を預け合い、笑い合いながら獲物を仕留めるという「探索者本来の喜び」に満ちていた。

「(ルミナ、マリア! 氷結と真空の準備はいいか? ジンが捌いたコカトリスの肉汁を、一滴も逃すなよ!)」

「(完璧ですわ、トウヤ様! 【絶対零度・鮮度保持】!)」

「(お肉、いっぱい持ち帰るね!)」

ガレスが大盾でミノタウロスの突進を受け止め、エリスが大剣の峰打ちで気絶させる。そこへトウヤが音もなく忍び寄り、無振動の剣閃で急所だけを正確に貫く。

無駄のない、しかし食材への最大限の敬意と愛情(食欲)が込められた見事な連携解体。

「よし、お疲れさん! さすがにみんなで狩ると、狩猟の楽しさが段違いだな!」

トウヤが、光の粒子となってドロップした巨大な霜降りブロック肉をアイテムボックスに収めながら笑う。

「ええ! お肉の美しいサシをじっくり愛でながらの戦闘……これぞ私たちのスローライフですわ!」

エリスも、自身の顔の脂を拭いながら満面の笑みを浮かべた。

黄金の草花が風に揺れる心地よい音を聞き、時折極上のハチミツのように甘い湧き水で喉を潤し、日が暮れれば最高級の神話級テントで肉を焼く。

そんな贅沢な数日を過ごし、彼らはついに第92階層の最奥――『純白の大扉』の前に到達した。

だが、当然のようにその前には、平原の生態系の頂点に立つ巨大な門番が鎮座していた。

『ブモォォォォォォォォォォッッ!!!!』

黄金に輝く大平原を震わせる咆哮。

体高は三十メートルを超え、全身が純金のような美しい毛並みと、大理石のような筋肉で覆われた超巨大な神牛。

第92階層大ボス――『プラチナ・アピス・タウロス(神話級・豊穣の黄金牛)』。

「(出たぞ! 92階層の大ボスだ! あいつの肉、絶対に『究極の黄金霜降り』だぜ!!)」

トウヤの【神眼】が、その桁違いの食材価値を解析し、ゴクリと喉を鳴らす。

「(究極の黄金霜降り……! いただきますわァァァッ!!)」

スローライフの余裕を取り戻したとはいえ、目の前に極上肉があれば全力で狩りに行くのが彼らのスタイルである。

「(ジン、ガレス! 左右から足を崩せ! エリスは俺と一緒に正面から懐に飛び込むぞ!)」

「(「「了解イエッサーッッ!!」」)」

彼らの連携は、ソロで無双していた時よりもさらに鋭く、洗練されていた。

ガレスが【流転の盾】で黄金牛の放つ重力波を完璧に弾き返し、その隙を突いてジンが【幻影歩法】で双短剣を振るい、両後脚の腱を鮮やかに切断する。

バランスを崩し、膝をついた超巨大神牛の眼前に、トウヤとエリスが神速で肉薄した。

「(ルミナ、マリア! 飛び散る肉汁を頼む!)」

「(お任せを!)」

「(【渾身撃・無振動の黄金牛断ち】!!)」

トウヤとエリスの剣閃が十字に交差し、黄金牛の急所(星のコア)を一切の苦痛なく、かつ一ミリの肉の崩れもなく完璧に貫いた。

ズバァァァァァァァァッッ!!!!!

黄金の神牛は、その絶大な旨味を細胞の奥底に閉じ込めたまま光の粒子となり、山のような『神話級・黄金霜降りシャトーブリアン』となってアイテムボックスへ吸い込まれた。

カッ――――!!!!

【第92階層クリア。マナー遵守・完全無振動連携ボーナス獲得】

壮大なファンファーレと共に現れた宝箱の中身は、『神話級・魔導熟成庫(極上肉の旨味を無限に引き出す魔法の冷蔵庫)』であった。

「ガッハッハ! 熟成庫とはありがたい! 獲りすぎたプラチナ食材をさらに美味くできるぞ!」

「最高のボーナスですの! さあトウヤ様、93階層へ参りましょう!」

トウヤたちは、ホクホク顔で純白の大扉を押し開けた。

ギギギギギギ……ッ!!

扉の先に広がっていたのは、黄金の平原とは打って変わった、涼やかな水とクリスタルの世界であった。

見渡す限りの巨大な渓谷。岩肌は透き通るような瑠璃色サファイアに輝き、そこを流れる大河は、まるで液体化した宝石のようにキラキラと光を反射している。

大河の中には、全長数メートルはある『神話級・クリスタル・サーモン』や、殻が虹色に輝く『プラチナ・キング・クラブ』などが悠然と泳ぎ回っていた。

第93階層――『神域・瑠璃色の清流渓谷』。

「おおおっ……! 今度は水産系の神域か! これまた絶景だぜ!」

ジンが、瑠璃色の岩肌から落ちる滝を見上げて感嘆の声を上げる。

「よし、まずは羅針盤でボスの位置を確認して……」

トウヤが『天啓の美食羅針盤』を取り出し、魔力を流し込む。

カッ――――!!!!

「「「やっぱりかァァァッ!!」」」

案の定、羅針盤の盤面は、渓谷全域から放たれる『超絶プラチナ食材の魔力』によって完全にフラッシュアウト(バグ)を起こし、矢印など1ミリも見えない状態になっていた。

「ハハハ……まあ、90階層台(神域)ならこうなるよな、分かってたよ」

トウヤが、目を擦りながら苦笑する。

「よし、みんな。羅針盤の矢印を出すためには、やっぱりこの階層の生態系を【ある程度間引く(乱獲する)】必要がある」

「ではトウヤ様、再びソロ・ハンティングの再開ですの?」

エリスが、少し心配そうに尋ねた。またあの『効率重視のタイムアタック』に戻ってしまうのではないかという懸念だ。

だが、トウヤは優しく微笑んで首を横に振った。

「ソロ・ハンティングはやる。だけど、前回みたいな『とにかく数を狩るだけの作業』にはしない。……いいか? 狙うのは【自分が一番美味そうだと感じた、最高の獲物】だけだ。そして、狩る時は素材の美しさを愛でながら、最高に丁寧な無振動解体を行うこと。……『優雅なソロ・ハンティング』だ」

「優雅なソロ・ハンティング……!」

「ああ。矢印の方向が出るまで間引くのは同じだが、心に『スロー踏破』の余裕を持って散開するんだ。……それじゃ、狩猟開始!!」

「「「了解いただきますッッ!!!!」」」

トウヤの言葉に安堵と歓喜の笑みを浮かべた一行は、それぞれの美学と食欲を胸に、瑠璃色の渓谷へと散らばっていった。

ザバァァァァッ!!

エリスは、大河に飛び跳ねる『神話級・クリスタル・サーモン』の鱗の美しさにうっとりと見惚れながら、空中で大剣の峰を優しく当てて気絶させ、一切の傷をつけずに水揚げしていく。

「ヒャッハー! この『プラチナ・キング・クラブ』、脚の太さが丸太みたいだぜ!」

ジンは、巨大なカニの動きを観察し、甲羅の模様の美しさを褒め称えながら(?)、関節の隙間に双短剣を滑り込ませて丁寧に身を抜き取る。

ガレスは、滝壺に潜む『アストラル・スッポン・エンペラー』との力比べを純粋に楽しみ、ルミナとマリアは、魔法で川の水を美しく凍らせながら、極上のエビや貝をパッケージングしていく。

タイムアタックの焦燥感はゼロ。

彼らは皆、神域の美しい景色と極上食材との『対話』を楽しみながら、最高鮮度の食材だけを厳選してアイテムボックスへと収めていった。

――そして、数時間後。

「あー……トウヤ。すまん」

ジンが、両手に巨大なカニの脚を抱えたまま、気まずそうに戻ってきた。

「優雅に厳選して狩ってたんだけどよ……カニが美味そうすぎて、また俺のアイテムボックスが満杯フルになっちまった」

「実は私もですわ……。サーモンの切り身が美しすぎて、つい……」

エリスも、少し頬を赤らめながら告白する。

ガレスも神獣たちも、皆一様に「もう入らない」という顔をしてトウヤの周りに集まってきた。

「……ハハッ。まあ、92階層の肉もまだ結構残ってたしな」

トウヤは、自身のアイテムボックスも(厳選した極上ウナギやマグロで)限界を迎えているのを確認し、笑い飛ばした。

「よし! 矢印が出るまではまだ少しかかりそうだが、今日はここまでだ! 一旦【迎賓館】に戻って、この神域の海鮮(川鮮?)たちを絶対同盟の皆に振る舞いに行くぞ! 92階層の熟成庫に入れた肉と合わせて、史上最高の『海陸プラチナ大宴会』だ!」

「おおっ!! 最高ですわ!!」

「ガッハッハ! 王様やゼノンの奴ら、また美味すぎて腰を抜かすじゃろうな!」

スロー踏破の余裕を取り戻し、極上の食材と笑顔だけを抱えた悠久の踏破者たちは、意気揚々と転移結晶を掲げ、夜の迎賓館での息抜き(大宴会)へと向かっていくのであった。


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