第163話:星砕きの魔導転球(ボウリング)と、球体乗り(玉乗り)の暗殺者た
### 第163話:星砕きの魔導転球と、球体乗り(玉乗り)の暗殺者たち
『悠久の大迷宮』第87階層――『ファンタジー魔導・星海アクアリウム』。
空を流れる次元の海と、そこを泳ぐ星屑のような極上海鮮たち。美しき魔改造水族館でマナーを完璧に守り抜き、隠しボスの『星海水竜』を無音の一本釣りで仕留めたトウヤたち。
迎賓館に星空の海を増設し、極上の大トロ刺身と空飛ぶ配達員たちの狂気(川下り出前)を満喫した彼らは、次なる第88階層の黒曜石の大扉の前に立っていた。
「さーて! 81階層から続く『チキュウの施設・魔改造シリーズ』も大詰めだ」
トウヤが、大扉を見上げてニヤリと笑う。
「88階層……順当にいけば、ここは78階層で経験した『ボウリング場』の魔改造版が来るはずだぞ!」
「ボウリング! あの重い球を転がして、奥にある白い魔物を倒す爽快な遊戯ですわね!」
エリスが、自身の剛腕をさすりながら目を輝かせる。
「チキュウの普通のボウリング場でも楽しかったが、それが異世界の魔法でアレンジされるとなれば、一体どんなスケールになるのかワクワクするぜ!」
ジンも、準備体操をしながら闘志を燃やしている。
「よし、まずは羅針盤で確認だ」
トウヤが『天啓の美食羅針盤』を取り出し、魔力を流し込む。
盤面の奥には、強烈な黄金色の光と、微かに明滅するプラチナ反応。そして環境ギミックを示す『青い矢印』は……盤面の中で【一直線に猛スピードで突き進み、突き当たった瞬間に大爆発を起こす】という、極めて破壊的かつ豪快な動きを繰り返していた。
「(……なるほど。球を転がしてピンを倒すという基本ルールは同じだが、その威力とスケールが完全に『兵器』レベルに跳ね上がってるみたいだな)」
トウヤは羅針盤をしまい、仲間たちを振り返る。
「みんな! どんなにスケールがデカくなろうと、ボウリングのルールは絶対だ! 『ファウルライン(投擲線)を越えない』『球を直接敵にぶつけて倒す』! そして、三連続ストライク(ターキー)で隠しボスを引きずり出すぞ!」
「「「了解ッッ!!!!」」」
全員が気合を入れたのを確認し、トウヤは重厚な大扉を両手で押し開けた。
ギギギギギギ……ッ!!
扉が開いた瞬間、彼らの目に飛び込んできたのは、宇宙の果てのような広大な虚空と、そこに架かる【超巨大な光の道】であった。
「な、なんだこのデカさは……!!」
ジンが息を呑む。
通常のボウリングのレーンが幅1メートル強であるのに対し、目の前に広がる光のレーンは【幅数十メートル、長さ数百メートル】にも及ぶ、もはや「大通り」か「滑走路」である。
そして、手前の投擲エリアに用意されていた『球』は、チキュウの樹脂製ボールなどではなく……燃え盛る【極大のマグマ球】、絶対零度の【氷結球】、そして超高密度の【重力鉄球】であった。球にはご丁寧に、指を入れるための3つの巨大なクレーター(穴)が空いている。
さらに、数百メートル先のレーンの奥で待ち構えている「ピン」は……全長十メートルを超える、ミスリル製の『魔導重装甲ゴーレム』たちが10体、逆三角形の陣形で整列していた。
第88階層――『ファンタジー魔導・星砕きの転球闘技場』。
「(……ピンが巨大ゴーレムで、球がメテオ(隕石)!! 迷宮のシステムさんよ、いくらファンタジーだからってスケールをバカにすりゃいいってもんじゃねえぞ!!)」
トウヤは、そのあまりにも力技すぎる魔改造っぷりに、心の中で盛大なツッコミを入れた。
「(素晴らしいですわ! つまり、あの巨大な属性球を全力でぶん投げて、奥のゴーレムたちを木っ端微塵に粉砕すればいいのですね!)」
エリスが、直径2メートルはある『超高密度の重力鉄球(重さ数トン)』の穴に指(と魔力)を突っ込み、ヒョイッと片手で持ち上げた。
「(そういうことだ! よし、まずは一投目、エリス頼む!!)」
「(行きますわよ!! 【渾身撃・剛腕の隕石投げ(メテオ・スロー)】!!)」
ドゴォォォォォォォンッ!!
エリスがファウルラインの手前から全力で放り投げた数トンの重力鉄球が、光のレーンの上を音速を超えて滑走(というより爆走)していく。
鉄球は一切のブレもなく、先頭のゴーレム(ヘッドピン)のど真ん中に直撃。
ガシャァァァァァァァァンッッ!!!!!
凄まじい衝撃波と共に、10体の巨大ミスリルゴーレムがドミノ倒しのように弾け飛び、レーンの奥へと吹き飛ばされた。
上空に『STRIKE!!』の巨大な魔力文字が花火のように打ち上がる。
「(ヒャッハー! 次は俺だぜ!)」
続く二投目。ジンは燃え盛る【マグマ球】を足の甲に乗せ、ブレイクダンスの要領で空中に跳び上がると、オーバーヘッドキックで球を射出した。
「(【幻影歩法・神速の炎球蹴り】!!)」
レーンを火の鳥のように駆け抜けたマグマ球が、新たにセットされたゴーレムたちを融解させながら完全粉砕。
(2連続・ダブル!!)
「(フッ、最後はワシが決めてやろう!)」
ガレスが、絶対零度の【氷結球】を大盾の上に乗せ、シールドバッシュの超絶な反発力で球を押し出した。
「(【流転の盾・絶対氷結ストライク】!!)」
滑るようにレーンを直進した氷結球が、ゴーレムたちを瞬時に凍らせ、粉々に砕き散らす。
ピロリロリンッ!!
(3連続・ターキー!!)
3連続ストライクを達成した瞬間。
レーンの奥の巨大な空間が割れ、宇宙の星雲を纏った、神々しくも禍々しい超巨大な鳥の魔物が姿を現した。
第88階層隠しボス――『ビッグバン・コスモ・ターキー(宇宙創世の神鳥・極上七面鳥)』。
七面鳥でありながら、その羽ばたきは星々を砕くほどの魔力を秘めている。
「(出たぞ!! 隠しボスだ!! レーンの向こう側にいる魔物には、武器を使ってもルール違反にはならない! 一撃で仕留めろ!!)」
トウヤの号令が飛ぶ。
「(【絶対零度・星雲凍結】!)」
「(【聖光の穿ち・銀河貫き】!)」
ルミナとマリアの極大魔法が、神鳥の動きを一瞬だけ完全に封じ込める。
そこへ、トウヤがファウルラインのギリギリから、剣に全魔力を集中させた。
「(【渾身撃・無振動の星砕き一閃】!!)」
放たれた究極の斬撃波動が、光のレーンの上をストレートの軌道で駆け抜け、ビッグバン・ターキーの眉間を、一ミリのブレもなく貫き通した。
ズバァァァァァァァァッッ!!!!!
宇宙創世の神鳥は、その絶大な魔力を暴走させる暇もなく、完璧な鮮度のまま光の粒子となり、超巨大な『神話級・ビッグバン七面鳥の丸肉』となってアイテムボックスへ収納された。
カッ――――!!!!
【3連続ストライク達成・隠しボス討伐完了。マナー遵守ボーナス獲得】
けたたましいファンファーレと共に現れた宝箱の中身は。
『神話級・アミューズメント増設キット(星砕きの魔導転球闘技場・バージョン)』であった。
「ガッハッハ! どんなにスケールがデカくなろうと、ボウリングはボウリングだ! さあ、帰ってこの宇宙最強のターキーを丸焼きにするぞ!!」
***
【同日夜――星繋ぎの迎賓館】
大迷宮の底、地上の王城、地底魔国、ミズホの国を繋ぐ次元の交差点。
今夜の迎賓館は、増設されたばかりの『魔導メテオ・ボウリング場』の破壊音と、極上のターキーの焼ける暴力的な匂いに包まれていた。
「さあ! 88階層突破記念! 『ビッグバン・ターキーの神話級・銀河ロースト(特製ガーリック・ギャラクシーソース)』だ!!」
トウヤとレオが、馬車ほどの大きさがある巨大なオーブンから、こんがりと黄金色に焼き上がったターキーの丸焼きを取り出し、円卓のど真ん中にドンッと置いた。
「「「いただきますッッ!!!!」」」
ヴィルヘルム国王が、王剣でターキーの極太の脚を切り落とし、豪快にかぶりつく。
「――――ッッ!! むおおおおおっ!! なんだこの圧倒的な肉汁のビッグバンは!!」
国王が、あまりの美味さに玉座(椅子)から立ち上がって絶叫する。
「皮は星屑のようにパリッと弾け、中の肉は信じられないほど柔らかい! 噛み締めるたびに、溢れ出す旨味とガーリックの香りが、胃袋の中で小宇宙を形成していくぞォォォッ!!」
「うめぇぇぇぇっ!! 前のターキーも最高だったが、こっちは魔力のコクが桁違いだ!!」
魔王ゼノン(田中太一)が、巨大な手羽先を両手で抱え、顔中を肉汁とタレまみれにしながらコーラを流し込んでいる。
「カイトのショウユと、この甘辛いタレのコンボ! これぞまさに『チキン(七面鳥だけど)の究極形』だ!!」
「トウヤさん! 一緒に添えられたこの『メテオ・ポテトの超絶大盛りフライ』もたまりません! ターキーの肉汁を吸ったポテト、無限に食えますよ!!」
ケンタが、ミリタリーヘルメット(新品)を器にして山盛りのポテトを貪り食っている。
そして、宴もたけなわ。
増設された【星砕きの魔導転球闘技場エリア】では、異世界の大物たちが新たなる規格外のスポーツに熱狂していた。
「どりゃァァァァッ!! 余のマグマ球を受けよ!!」
ヴィルヘルム国王が、王冠を斜めに被りながら、重さ数トンのマグマ球を全力でぶん投げる。
ガシャァァァァァンッ!!
「おおおっ!! 陛下、見事な破壊力ですぞ!!」
ガルド宰相が、スコアボード(巨大なクリスタル板)を見上げて拍手喝采を送る。
しかし、そんな白熱する闘技場の端のレーンで。
やはりというべきか、サイラスとファルコン率いる『世界食糧保全機構(配達部隊)』の精鋭たちが、完全に常軌を逸した特訓を行っていた。
「(総員、姿勢を低く保て!!)」
サイラスの怒号が飛ぶ。
なんと彼らは、レーンの上を爆走する【巨大なマグマ球や氷結球の上】に直接乗り(玉乗り状態)、背中に特製のウー〇ーバッグ(中身は繊細な多段重ねのパンケーキ)を背負いながら、レーンを滑走しているではないか。
「(これは、敵の放つ巨大な岩石魔法や、雪崩といった『球状の質量兵器』に巻き込まれた際の、究極のデリバリー回避術だ!!)」
ファルコンが、足元の高速回転する球体の上で、サーカス団員も裸足で逃げ出すほどの超絶バランスを保ちながら叫ぶ。
「(足元がどれほど高速で回転しようとも、魔力による『絶対ジャイロ制御』で上半身の水平を完全に固定しろ! パンケーキの上のイチゴを1ミリもズラすな!!)」
「(ハッ! 忍法・絶対ジャイロ・玉乗り出前走法!!)」
ギュルルルルルッ!!
巨大な属性球の上で微動だにせず、背中のスイーツを完璧に守り抜きながらピンの直前で鮮やかに跳躍(回避)する暗殺者たち。
「(素晴らしいぞ皆の者!! これで、たとえ崖崩れに巻き込まれようと、我々は完璧な形のパンケーキをお届けできる!!)」
「(ウオォォォォォッ!! どんな悪路も走破する出前至上主義!!)」
「…………あいつら、ついに球体の上でバランスを取りながら出前し始めやがった」
トウヤは、レーンの上を玉乗りで爆走していく暗殺者たちの勇姿(狂気)を遠い目で見つめながら、ターキーの胸肉を口に放り込んだ。
チキュウのボウリングが宇宙スケールの破壊遊戯へと進化し、それを当然のように娯楽(と出前特訓)として消費していく絶対同盟の面々。
カロリーと笑い声、そして破壊音に満ちた迎賓館の夜は、いよいよ80階層台のフィナーレへ向けて、ストライクの如き勢いで駆け抜けていくのであった。




