第161話:魔導絶叫テーマパークと、次元の壁を越えるウー〇ー配達員
### 第161話:魔導絶叫テーマパークと、次元の壁を越えるウー〇ー配達員
『悠久の大迷宮』第85階層――『銀河複合要塞アリーナ』。
要塞、サバゲー、超重力、空中ダンスという、これまでの魔改造ギミックが全て一つに融合したカオス空間を、限界突破のフィジカルと連携で制覇したトウヤたち。
迎賓館に『究極の銀河複合リゾート』を増設し、極上の銀河プラチナミートを喰らい尽くした彼らは、次なる未知の領域、第86階層の黒曜石の大扉の前に立っていた。
「さーて! 80階層台の前半戦(魔改造ゾーン)の総決算も終わって、いよいよ後半戦だ」
トウヤが、大扉を見上げながら深呼吸をする。
「だが、油断は禁物だぞ。これまでの法則からいって、ここは76階層の『ユーエンチ(テーマパークVer.2)』の魔改造版が来る可能性が極めて高い。……つまり、ただの絶叫マシンじゃなくて、異世界ファンタジーの魔法や理不尽な重力・次元が絡む【魔導絶叫マシン】が待ち構えてるってことだ」
「ええ! 76階層の急流下りやコースターも最高でしたけれど、魔法の力が加わったらどれほどスリリングになるのか、胸が鳴りますわ!」
エリスが、重剣を片手にウキウキとした笑みを浮かべる。
「おいおいエリス、ただでさえあのチキュウの『ジェット・コースター』とかいう乗り物は内臓がフワッとして気持ち悪いのに、さらに凶悪になるのか……?」
ガレスが、少し顔を引きつらせて大盾を握り直す。
「よし、羅針盤で確認だ」
トウヤが『天啓の美食羅針盤』を取り出し、魔力を流し込む。
盤面には、奥深くに『黄金色』と『プラチナ色』の光が点灯している。そして、環境ギミックの『青い矢印』は……盤面の中で、ループを描いたり、突然消えて別の場所に現れたり(ワープ)、あり得ない速度で乱高下を繰り返していた。
「(……確定だな。次元跳躍付きのジェットコースターとか、絶対にあるぞ)」
トウヤは、羅針盤を懐にしまい、仲間たちを振り返った。
「みんな、ルールは76階層と同じだ! 【列に並ぶ】【安全バーから手を離さない】【アトラクションの進行を妨げない】! そして、夜のパレードで隠しボスを狩る! 行くぞ!!」
「「「了解ッッ!!!!」」」
バンッ!!
トウヤが気合と共に大扉を押し開けた。
ギギギギギギ……ッ!!
扉が開いた瞬間、一行を包み込んだのは、陽気なブラスバンドの音楽……ではなく、荘厳な魔導パイプオルガンの音色と、紫色の雷が鳴り響く嵐のような空模様であった。
そこは、広大な空間に禍々しいゴシック調の城がそびえ立ち、空を切り裂くように透明なクリスタルのレールが縦横無尽に張り巡らされた『夢と狂気の魔導遊戯園』であった。
第86階層――『ファンタジー魔導・幻惑の絶叫テーマパーク』。
「おおおっ! なんか全体的にダークファンタジーっぽい雰囲気になってるぞ!」
ジンが、禍々しくも美しいテーマパークの光景に目を輝かせる。
彼らは早速、アトラクションを巡りながら極上食材の回収を始めた。
一つ目のアトラクションは、『マグマ・スプラッシュ・マウンテン』。
丸太のボートに乗り込み、溶岩が煮えたぎる急流を下っていく絶叫マシンである。
「(うおおおっ!! 熱い! 熱いぞ!!)」
ボートがマグマの滝壺へと真っ逆さまに落下した瞬間、滝壺に潜んでいた『クリスタル・マグマ・サーモン(極上鮭)』が跳ね上がる。
「(【絶対零度・氷結捕獲】!)」
ルミナとマリアが、安全バーに固定されながらも完璧な詠唱でマグマの一部を瞬間凍結させ、サーモンを無傷でアイテムボックスへと収めた。
二つ目のアトラクションは、『ワームホール・スペース・コースター』。
暗闇の中を猛スピードで駆け抜けるだけでなく、空中に開いた「次元の穴」に突入し、天地が逆転した別次元を飛び回るという、三半規管を完全に破壊しにくる狂気のコースターである。
「(ヒャッハー!! 空間が歪んでやがるぜ!!)」
ジンは、安全バーに固定され天地逆転のループを回りながらも、コースターに並走して飛んでくる『ディメンション・ターキー(次元七面鳥)』の急所を、手裏剣のように放った短剣で的確に撃ち抜いた。
そして、日が落ち、テーマパークが幻想的な魔力ネオンに包まれる頃。
パァァァァッ!!
ゴシック調の城の門が開き、荘厳な音楽と共に『夜の魔導パレード』が始まった。
光り輝く骸骨のダンサーたちや、炎を吹くキメラのフロートが、パレードルートを練り歩く。
その最後尾、最も巨大で禍々しい漆黒のフロートの上に君臨していたのが、隠しボスであった。
第86階層隠しボス――『ナイトメア・イリュージョン・ドラゴン(幻影魔竜・神話級の幻惑霜降り肉)』。
その肉は、一口食べればこの世の全ての幸福な夢を見るという、至高のプラチナ食材である。
「(来たぞ!! 隠しボスだ!! 今回もフロートが目の前を通過する瞬間に、一撃で仕留めるぞ!!)」
トウヤの指示に、仲間たちが武器を構える。
「(行きますわ!! 【渾身撃・幻影一閃】!!)」
「(【幻影歩法・夢魔斬り】!!)」
エリスとジンが、パレードの観客席から一歩も動くことなく、極限に研ぎ澄まされた斬撃の波動を放つ。
ドラゴンの纏う「幻影の防壁」をジンの双短剣が切り裂き、その奥にある本体の急所を、エリスの大剣の波動が完璧に貫いた。
ズバァァァァァァァァッッ!!!!!
幻影魔竜は、パレードの進行を1ミリも妨げることなく光の粒子となり、神話級の霜降り肉となって回収された。
カッ――――!!!!
【隠しボス討伐完了。マナー遵守ボーナス獲得】
ファンファーレと共に現れた宝箱の中身は。
『神話級・アミューズメント増設キット(魔導絶叫テーマパーク・バージョン)』であった。
「ガッハッハ! 今回も完璧なマナーで瞬殺だったな! さあ、帰ってこの『夢見る肉』を食うぞ!!」
***
【同日夜――星繋ぎの迎賓館】
大迷宮の底、地上の王城、地底魔国、ミズホの国を繋ぐ次元の交差点。
今夜の迎賓館は、増設されたばかりの『魔導絶叫テーマパーク』の禍々しくも美しいネオンの光と、トウヤが調理する極上肉の香りに包まれていた。
「さあ! 86階層突破記念! 『ナイトメア・ドラゴンの神話級・幻影とろける炙り肉寿司』と、『マグマ・サーモンの絶品ちゃんちゃん焼き』だ!!」
トウヤとレオが、巨大な寿司下駄と鉄板を円卓に運んでくる。
肉寿司の上の霜降り肉は、まるでオーロラのように七色に輝き、見る者の食欲を限界まで引き上げる幻惑の魔力を放っていた。
「「「いただきますッッ!!!!」」」
ヴィルヘルム国王が、震える手で炙り肉寿司をつまみ、口へと運ぶ。
「――――ッッ!! こ、これは……!!」
国王の目から、滝のような涙が溢れ出した。
「肉が……舌の上で幻のように溶けた……! そして、脳内に『アルカディア王国が世界を統一し、毎日三食トウヤ殿の飯を食っている』という、至福の光景(幻覚)が広がっていくぞォォォッ!!」
「うめぇぇぇぇっ!! 何だこの幸せな味は!! 俺は今、魔界の王座で無限のコーラとポテトに埋もれる夢を見たぞ!!」
魔王ゼノン(田中太一)も、肉寿司を次々と頬張りながら、恍惚の表情で床に転がっている。
「トウヤさん! このマグマ・サーモンのちゃんちゃん焼きもヤバいです! 溶岩の熱で凝縮された鮭の旨味と、カイトさんの甘辛い味噌だれが、キャベツの甘みと完全に融合してます!!」
ケンタが、ミリタリー飯盒に山盛りにした白米にサーモンを乗せ、狂ったように掻き込んでいる。
そして、宴もたけなわ。
増設された【魔導絶叫テーマパーク・エリア】では、異世界の大物たちが新たなる絶叫マシンに我先にと乗り込んでいた。
「ふはははっ! ワームホール・コースター、最高ではないか!!」
ヴィルヘルム国王と魔王ゼノンが、最前列に並んで座り、次元の穴に突入しながら王の威厳も忘れて絶叫している。
「このマグマ・スプラッシュ、お肌の乾燥に効きそうですわね!」
四天王のセレスティが、マグマの滝壺に落ちながら楽しそうに笑っている。
しかし、その狂乱のテーマパークにおいて、もはや「日常風景」と化しつつある異様な集団がいた。
サイラスとファルコン率いる『世界食糧保全機構(配達部隊)』の精鋭たちである。
「(総員、安全バーのロックを確認しろ!! これより、我々は【ワームホール・スペース・コースター】に搭乗し、出前訓練を開始する!!)」
サイラスが、背中に特製ウー〇ーバッグ(中身は並々と注がれたホットコーヒー)を背負い、血走った目で叫ぶ。
「(次元跳躍の瞬間、空間の歪みによって発生する『予測不能のG(重力負荷)』! これを自らの体幹と魔力で完全に相殺し、コーヒーの水面を1ミリも揺らすな!!)」
「(ハッ! 忍法・絶対ジャイロ・ワームホール・デリバリー!!)」
ギュイィィィィィンッ!!
猛スピードで発進したコースターが、空中の次元の穴へと突入する。
空間がねじ曲がり、天地が逆転し、三半規管が崩壊するような異常なGが襲い掛かる中。
ミズホのシノビとアルカディアの暗殺者たちは、コースターの座席に座りながらも、上半身の筋肉と魔力制御を極限まで駆動させ、背中の箱の中身を『絶対的な水平』に保ち続けていた。
「(素晴らしいぞ皆の者!! これで、たとえ転移魔法の詠唱中に敵の妨害を受けて空間が歪もうとも、我々は完璧な温度と形のコーヒーを王城へお届けできる!!)」
「(ウオォォォォォッ!! 次元を越える出前至上主義!!)」
「…………あいつら、もうウー〇ーイーツじゃなくて、宇宙の神の配達員か何かだろ」
トウヤは、次元の穴に吸い込まれながらも完璧な姿勢を保つ暗殺者たちを眺め、幻影肉寿司を口に放り込んだ。
チキュウの遊園地と異世界の魔導技術が融合した最高の遊び場。
理不尽な環境すらも特訓の場へと変え、極上の飯で幸せな幻を見る絶対同盟の面々。
カロリーと絶叫、そして狂気的な出前術の探求は、いよいよ終盤へと差し掛かる迷宮の深淵へ向けて、止まることなく加速していくのであった。




