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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第154話:白熱の複合スポーツ施設と、ローラースケートを履いた最強配達員

### 第154話:白熱の複合スポーツ施設と、ローラースケートを履いた最強配達員

『悠久の大迷宮』第78階層――『白熱の転球アリーナ(ボウリング場)』。

チキュウのボウリングのルールを完璧に把握し、流れるような連続ストライク(ターキー)で隠しボスを出現させ瞬殺した『悠久の踏破者』の六人と三匹。

彼らは今、70階層台の最後尾に迫る、第79階層の黒曜石の大扉の前に立っていた。

「さーて。ユーエンチ、スイゾクカン、ボウリングと来て……いよいよ79階層だ」

トウヤが、大扉を見上げながら深く息を吐く。

「ここまで来ると、環境は完全に『チキュウのアミューズメント系施設』で確定だろうな。そして迷宮側も、俺たちが【増設キット】を狙っているのを完全に理解して、ボーナス付きの遊び場を提供してきている」

「ええ! 次はどんなチキュウの遊戯が待っているのか、楽しみで仕方ありませんわ!」

エリスが、重剣の柄を握りしめて目を輝かせる。

「ああ。だが、どんな遊び場であれ『ルール違反』は即死ペナルティに繋がる。今回も羅針盤の確認は中に入ってからだ。扉を開けたら、まずは一歩も動かずに俺の指示とルールの確認を待て。いいな?」

「「「了解イエッサーッッ!!!!」」」

トウヤの合図と共に、ガレスが巨大な扉を両手で押し開けた。

ギギギギギギ……ッ!!

扉の先に広がっていたのは、強烈なネオン管の光と、様々な音が入り乱れる超巨大な屋内空間であった。

カコンッ、カコンッ! というリズミカルな音。

カァァァンッ! という金属バットがボールを弾き返す音。

そして、ツルツルに磨かれた床を滑るタイヤの音。

「な、なんだここは……? 前回のボウリング場よりも、さらに色々なものが混ざっているぞ?」

ジンが目を丸くする。

そこには、緑色の小さな台を挟んで網が張られた『卓球エリア』。緑のラシャが張られた台の上で球を突く『ビリヤードエリア』。さらに奥には『バッティングセンター』や『ローラースケートのリンク』までが、ワンフロアに所狭しと並んでいた。

第79階層――『熱狂の複合遊戯アリーナ(某・複合スポーツ施設)』。

「(……やっぱりか。某スポ〇チャじゃねえか!!)」

トウヤは心の中で盛大なツッコミを入れつつ、静かに『天啓の美食羅針盤』を取り出した。

「(みんな、聞け。ここはチキュウの【複合スポーツ・アミューズメント施設】だ。様々なスポーツや遊びが一つにまとまった、娯楽の殿堂だ!)」

トウヤが小声で解説を始める。

「(羅針盤の反応を見る限り、各エリアで『遊戯のルール』を守って一定のスコアを出せば、隠しボスのフラグが立つ仕組みになっているみたいだ。……おい、奥のバッティングセンターの裏側に、特大の【プラチナ反応】があるぞ!)」

「(各種のスポーツを制覇して、隠しボスを引きずり出す……。望むところだ!)」

ガレスがニヤリと笑う。

「(よし! お前らの超人的な身体能力を見せつけてやれ! ただし、絶対に【道具を破壊しないこと】と【指定のエリア外から攻撃しないこと】! これだけは守れよ!)」

トウヤの指示を受け、異世界最強の美食家たちは、チキュウの複合施設へと解き放たれた。

**【卓球ピンポンエリア】**

「(行きますわよ、ジン! 渾身のサーブですの!)」

エリスが、小さなラケットに【渾身撃】の魔力を乗せ、ピンポン球を弾き飛ばす。

シュルルルルッ!! と、球が音速を超えて発光しながらネットを越える。

「(甘いぜエリス! 【幻影歩法・神速のスマッシュ】!!)」

ジンが、ブレイクダンスのようなステップで回り込み、残像を残しながら球を打ち返す。

チキュウの温泉卓球レベルの施設で、神話級の身体能力を持った二人が『ドラゴンボール』のような超次元ラリーを繰り広げ、システムから瞬く間に【最高スコア】を叩き出した。

**【ビリヤードエリア】**

「(ふむ……この棒で、白い球を突いて、他の球を穴に落とせばいいのだな)」

ガレスが、キューを構えて台を見る。

長年の大盾の扱いで「敵の攻撃をどの角度で弾き返せばどこへ飛ぶか」という【流転の盾】の反射角を極めている彼にとって、ビリヤードの球の軌道計算など造作もないことであった。

カキィィンッ!

「(【流転の突撃・ブレイクショット】!!)」

一撃で全ての球が完璧な軌道を描き、6つのポケットへと同時に吸い込まれていった。

**【バッティング・エリア】**

「(よし、最後は俺たちの番だ!)」

トウヤと、ルミナ、マリアがバッターボックスに立つ。

時速150キロで射出されるピッチングマシンの球。しかし、【神眼】を持つトウヤや、動体視力に優れた魔術師の彼女たちにとっては、止まって見えるに等しかった。

カァァァンッ!! カァァァンッ!!

的確に「ホームラン」の的を射抜き、システムにクリア判定を刻み込む。

ピロリロリンッ!!

全施設での圧倒的なハイスコアを達成した瞬間。

施設の中央に位置する巨大なローラースケートリンクの床が割れ、眩い光と共に超巨大な魔物が姿を現した。

『ブモォォォォォォォッ!!』

第79階層・隠しボス――『グランドスラム・エンペラー・ベヒモス(完全制覇の帝王魔獣)』。

その肉は、全ての部位が「神話級」と呼ぶに相応しい、究極のサーロインとヒレ肉を併せ持つ最強の牛肉である。

「(出たぞ!! リンクの上にいる魔物には、一切のルール無用だ!! 一撃で仕留めろ!!)」

トウヤの号令が飛ぶ。

「(【絶対零度・リンク氷結】!!)」

ルミナとマリアが、即座にスケートリンクの床を絶対零度で凍り付かせ、ベヒモスの巨体の足を滑らせて体勢を崩させる。

「(これでフィニッシュですわ!!)」

エリスとジン、そしてガレスが、凍りついたリンクの上を滑るように肉薄し、一糸乱れぬ三位一体の神速の斬撃と打撃を叩き込んだ。

ズバァァァァァァァァッッ!!!!!

ベヒモスは、悲鳴を上げる間もなく完璧なブロック肉へと解体され、絶対零度パッケージングによってアイテムボックスへと収納された。

カッ――――!!!!

【全施設制覇・隠しボス討伐完了。マナー遵守ボーナス獲得】

壮大なファンファーレと共に現れた宝箱。

そこには、約束された勝利の証……『神話級・アミューズメント増設キット(複合スポーツ施設版)』が燦然と輝いていた。

「ガッハッハ! 完璧な連携だったな! さあ、拠点に帰って美味い肉を食いながら、みんなで遊ぶぞ!!」

***

【同日夜――星繋ぎの迎賓館アストラル・ゲストハウス

大迷宮の底、地上の王城、地底魔国、ミズホの国を繋ぐ次元の交差点。

今夜の迎賓館は、増設されたばかりの『複合スポーツエリア』の熱気と、極上飯の強烈な香りに包まれていた。

「そぉいッ!!」

カーンッ!!

「おおおっ!! カイト殿、見事なホームランですぞ!!」

バッティングセンターのケージ内で、ミズホの国主であるカイトが快音を響かせ、ヴィルヘルム国王が拍手喝采を送っている。

「いやー、この『卓球』なる遊戯、魔力コントロールと反射神経の鍛錬に最適ですな!」

ガルド宰相が、眼鏡を光らせながら魔王軍の幹部と白熱のラリーを繰り広げている。

「みんなー! スポーツの後の『スポッチャジャンクフード』ができたぞー!」

トウヤと、エプロン姿のレオ、ケンタが、巨大なワゴンを押してエリアの中央にやってきた。

本日のメインディッシュは、隠しボス『エンペラー・ベヒモス』の極上肉を使った【神話級・極厚サーロインの鉄板ステーキ(特製ガーリックソース)】。

そして、レオとケンタが「複合施設ならこれだろ!」と意気投合して作り上げた、【アメリカン・メガサイズ・ホットドッグ】と、【とろけるチーズたっぷりの特盛りナチョス】であった。

「「「いただきますッッ!!!!」」」

「――――ッッ!! な、なんという肉の旨味だ!!」

ヴィルヘルム国王が、極厚のサーロインステーキを頬張り、目を見開く。

「噛んだ瞬間、肉汁がナイアガラの滝のように溢れ出してくるぞ! ニンニクの効いたソースが、さらに食欲を暴走させおるわ!!」

「トウヤさん! このホットドッグもヤバいですよ!」

ケンタが、顔の半分ほどもある巨大なホットドッグに齧りつく。

「極上の豚肉を使ったソーセージの『パリッ』とした食感! マスタードとケチャップの黄金比! サバゲーやスポーツの合間に片手で食う飯として、これ以上のものはない!!」

「魔王様、この『ナチョス』という薄いチップス、チーズと挽き肉が絡み合って、無限にビールが飲めてしまいますわ!」

四天王のセレスティも、すっかりジャンクフードの虜になっていた。

スポーツの爽快感と、カロリーの暴力。

迎賓館は、もはや世界で最も贅沢で狂気的なアミューズメント・パークとして完成しつつあった。

その時。

トウヤの視界の端を、信じられないスピードで横切る集団がいた。

「(右コーナー、減速なしで突入します!! スープの遠心力を相殺せよ!!)」

「(ハッ! 忍法・絶対ジャイロ・ローラー滑走!!)」

なんと、サイラスとファルコン率いる『配達部隊』の面々が。

全員が【ローラースケート】を履き、背中に出前のウー〇ーバッグ(中身は熱々のラーメン)を背負ったまま、リンクの上を猛烈なスピードで隊列を組んで滑走しているではないか。

「(素晴らしいぞ皆の者!! ローラースケートの滑走技術を極めれば、魔力を使わずとも地上から迷宮の底まで、最速かつ無振動で出前を届けることができる!!)」

「(ウオォォォォォッ!! デリバリー最速伝説!!)」

「…………」

トウヤは、手にしたナチョスをポロッと落とし、静かに天を仰いだ。

(あいつら、ついに【ローラースケート出前部隊】に進化しやがった……)

卓球の反復横跳びで回避力を鍛え、バッティングセンターで飛来する魔法弾を打ち返す動体視力を養い、ローラースケートで最速無振動の移動術を極める。

複合スポーツ施設すらも、最強の暗殺者たちにかかれば「宇宙最強の配達員養成所」に過ぎないのだ。

「まあ、いっか。……よし、肉も食ったし、俺もビリヤードでもやるか!」

トウヤは、全てを思考放棄してコーラを呷り、笑い声を上げた。

迷宮の理不尽を極上の遊び場に変え、カロリーと笑顔(と狂気の配達術)を無限に増殖させていく絶対同盟。

彼らの非常識極まりないキャンプは、いよいよ70階層台の集大成、そして80階層という未知の大台へ向けて、爆音のネオンと共に突き進んでいくのであった。


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