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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第150話:【閑話】迎賓館アミューズメントパークと、最強配達部隊のタクティカル出前術

### 第150話:【閑話】迎賓館アミューズメントパークと、最強配達部隊のタクティカル出前術

大迷宮の底、地上の王城、地底魔国アガルタ、そして絶海の和国ミズホを繋ぐ次元の交差点――『星繋ぎの迎賓館アストラル・ゲストハウス』。

本来ならば、各国の国家元首や最高幹部たちが集い、世界の行く末を左右する厳粛な会談が行われるはずのその神聖な空間は、第75階層のクリアボーナス【神話級・アミューズメント増設キット】の恩恵により、すっかりその様相を変えていた。

「ふんぬぅぅぅッ!! ガルドよ、見よ! 余の大胸筋が喜んでおるわ!!」

「素晴らしいパンプアップですぞ、ヴィルヘルム陛下! では私も、この『ランニングマシン』とやらで心肺機能を限界まで高めてみせましょう!」

迎賓館の東ウイング。全面鏡張りに改装された【24時間営業フィットネス・ジム】エリアでは、アルカディア国王と宰相が、汗だくになりながら鉄のウェイトと格闘していた。

その隣では、魔王ゼノン(田中太一)が魔王軍の幹部たちを引き連れ、「いいかお前ら! 魔力に頼るな! 筋肉との対話だ!」と熱血指導を行っている。

さらに南ウイングからは、強烈なユーロビートの重低音が鳴り響いていた。

「右! 左! ターンして同時踏みですわ!」

「すごいぞセレスティ! 魔術の詠唱をしながら、そのステップを完璧に踏みこなすなんて!」

【アーケード・リズムゲーム】エリアでは、四天王のセレスティをはじめとする魔術師たちが、足元のネオンパネルを華麗に踏み抜いていた。音楽に合わせてステップを踏みながら魔法の構築を行うことで、「詠唱中のステップ回避能力」と「マルチタスク処理能力」を飛躍的に向上させるという、画期的な(?)魔術訓練が行われていたのだ。

「……あいつら、俺がトラウマになったダンスゲームをめっちゃエンジョイしてやがる……」

トウヤは、遠巻きにネオンの光を見つめながら、ブルリと身震いして顔を引きつらせた。

「ガッハッハ! まあいいじゃねえか。皆、美味い飯をより美味く食うために、全力で腹を空かせてるんだからよ!」

ジンが、プロテイン・シェイカーを片手に笑い飛ばす。

だが、この迎賓館において最も熱気を放ち、そして異常な進化を遂げようとしている場所は、西ウイングに増設された【超巨大CQB(近接戦闘)フィールド】であった。

***

「――いいかお前ら! サバゲーにおける室内戦クリアリングの基本は『カッティング・パイ』だ! 扉や曲がり角を開ける時、壁を支点にして円を描くように少しずつ視界を広げ、敵の射線を潰していく!」

巨大なベニヤ板の迷路と化したCQBフィールドのスタート地点。

迷彩服にタクティカルベストを着込んだ第五の転生者・ケンタ(前世:サバゲーマー)が、自らのスキルで創造したペイント・アサルトライフルを構えながら、熱弁を振るっていた。

彼を取り囲むように整列しているのは、サイラス率いる『深淵の配達部隊』、ファルコン率いる『超人スパイ部隊』、魔国の暗部、そしてミズホのシノビたちである。

「なるほど! 姿を晒す面積を最小限に抑えつつ、安全を確保するチキュウの歩法……! 【パイ切り(カッティング・パイ)】ですね!」

サイラスが、目を血走らせながら手帳にメモを取る。

「そうだ! そして、味方が移動する時は必ず別の味方が『カバーリング(援護射撃)』を行え! ペイント弾の弾幕で敵をバリケードに釘付けにし、その隙に一気に距離を詰めるんだ! これがサバゲーの定石だ!」

ケンタが、ハンドサインを出しながら戦術を叩き込む。

ケンタにとって、彼らは「最高のサバゲー仲間」であった。

だが、暗殺者たちの認識は全く異なっていた。

「ファルコン殿、聞こえたか? 【弾幕で敵の視界を潰し、安全なルートを構築する】……。つまりこれは、戦場という最悪の環境下において、『出前の品を絶対に被弾させないための究極の護衛陣形』だ!!」

「ああ! 今までの我々は、個人の『無振動回避』に頼りすぎていた! だが、ケンタ殿のタクティクス(戦術)を取り入れ、部隊全体で【空間そのものを制圧】すれば、極上飯の安全マージンは飛躍的に高まる!!」

彼らの脳内では、ケンタのサバゲー戦術が全て「完全無欠のデリバリー(出前)マニュアル」へと自動翻訳されていたのである。

「よし! じゃあ実践だ!」

ケンタが、ゴーグルを下ろしてニヤリと笑う。

「今回のルールは『フラッグ戦』……じゃなくて、特別ルールだ! トウヤさんとレオさんが作った【特製・極厚ローストビーフのバゲットサンド(熱々コンソメスープ付き)】を、フィールドの最奥にあるテーブルまで、傷一つ、水滴一滴こぼさずに運搬しろ! 敵役(OPFOR)は俺と、自動ペイント砲台数十基だ!!」

「「「ウオォォォォォォッ!! 出前死守!! 空間制圧!!」」」

プァァァァン!!

開始のブザーと共に、配達部隊がCQBフィールドへと突入した。

「(敵影確認! 右前方のドラム缶裏! カバー入ります!!)」

ファルコンが、流れるような動作でペイント・サブマシンガンを構え、ケンタの潜むバリケードに向かって猛烈な制圧射撃(弾幕)を浴びせる。

ババババババババッ!!

「(うおっ!? 射撃精度エグッ!? 顔出せねえ!)」

ケンタがたまらず頭を引っ込めた、その瞬間。

「(射線クリア!! 運びデリバリー、前進!!)」

サイラスが、背中に『特製ウー〇ーバッグ』を背負ったまま、音もなく壁を蹴り、空中を滑空するように前進する。

その動きは、かつての「単独での無茶な回避」ではなく、ファルコンたちの完璧な援護射撃によって構築された「絶対安全圏グリーンゾーン」を悠然と進む、極めて洗練されたタクティカル・ムーブであった。

「(次の部屋、クリアリング行きます! 【パイ切り歩法】!!)」

ミズホのシノビが、扉の隙間からコンマ数秒で内部のペイント砲台の位置を把握し、死角から手裏剣(ペイント弾仕様)を放って砲台のセンサーを無力化する。

「(ツーマンセルで突入! スープの振動ゼロを確認!!)」

「(……マジかよ)」

監視カメラの映像でその動きを見ていたケンタは、戦慄していた。

前世で憧れた、特殊部隊(Tier 1)の流れるようなルーム・クリアリング。

それを、異世界の超身体能力を持った暗殺者たちが、完全に理解し、連携し、そして【出前の保温バッグを水平に保つためだけ】に実行しているのだ。

それはもはや、サバゲーの領域を遥かに超えた、究極の「VIP(飯)護衛部隊」の誕生であった。

「(目標地点到達!! テーブルに配膳します!!)」

サッ……。

最奥の部屋に到達したサイラスが、バッグを開け、真っ白なテーブルクロスの敷かれた机の上に、ローストビーフサンドとコンソメスープを美しく並べた。

スープの表面には、微かな波紋一つ立っていない。完璧な温度、完璧な形状である。

「ミッション・コンプリート!!」

「「「おおおおおおおッッ!!!!」」」

フィールドに、配達部隊たちの歓喜の雄叫びが響き渡った。

「す、すげえ……!!」

ケンタが、バリケードから出てきて拍手喝采を送る。

「お前ら、たった数時間でCQBの基本を完全にマスターしやがった! 制圧射撃のタイミングも、射線の切り方も完璧だ! これなら、どんな戦場でも無傷で飯を届けられるぞ!!」

「ケンタ殿!!」

サイラスとファルコンが、ケンタの前に進み出て、深く、深く頭を下げた。

「貴方様のチキュウの軍事戦術……まさに神の叡智! 我々『絶対同盟・配達部隊』は、本日をもって戦術的進化を遂げました! これでもう、大迷宮のいかなる階層であろうと、吹雪の中であろうと、トウヤ殿の極上飯を完璧な状態で地上へお届けしてみせます!!」

最強の暗殺術と、現代のCQB戦術。

それが「出前」という狂気の目的のために奇跡の融合を果たした瞬間であった。

***

そして、数時間後。

全アミューズメント施設での遊び(限界特訓)を終え、風呂で汗を流した絶対同盟の面々は、迎賓館の大宴会場に集結していた。

「さあ! 筋トレとサバゲーとダンスで消費したカロリーを、神話級の飯でガッツリ補給するぞ!!」

トウヤの号令と共に、レオとゴレ太郎が次々と巨大なトレイを運んでくる。

本日のメニューは、究極のチートデイ(爆食い)仕様。

『神話級・イベリコ豚の極厚スペアリブ(特製BBQソース)』。

『黄金の男爵芋とタクティカル蟹の濃厚マカロニチーズ』。

そして、レオが無限の小麦粉と魔王軍の火力を借りて焼き上げた、『直径1メートルの超特大・照り焼きマヨ・ピザ』である。

「「「いただきますッッ!!!!」」」

「うおおおおっ!! 運動の後の肉、五臓六腑に染み渡りすぎるゥゥゥッ!!」

ケンタが、スペアリブにかぶりつき、顔中をソースまみれにしながら号泣する。

「バルロア帝国の塩茹で肉なんて二度と食えねえ! キャンプBBQとサバゲーの組み合わせ、俺の前世の夢が全部叶ったぞ!!」

「ふははは! 筋肉が! 破壊された大胸筋が、この極上の豚肉のタンパク質を歓喜と共に吸収していくのが分かるぞ!!」

ヴィルヘルム国王も、ピザを二枚重ねにして豪快に貪り食う。

「トウヤ殿!」

サイラスが、ピザの耳を齧りながら誇らしげに報告する。

「我々配達部隊、ケンタ殿のタクティクスにより、飛躍的な進歩を遂げました! もはや、我がアルカディアと大迷宮の底を繋ぐ補給線は、チキュウの特殊部隊すら凌駕する鉄壁のデリバリー網です!」

「おう、それは頼もしいな!」

トウヤが、コーラで乾杯しながら笑う。

「なら、これからはもっとデカい魔物の肉も、丸ごと出前頼めるな! 今度、プラチナ食材のフルコースを地上のお城に届けてもらうから、よろしく頼むぜ!」

「「「ハッ!! 喜んでお運びいたします!!」」」

大迷宮の過酷な修練を「娯楽」へと変え、現代地球の戦術を「出前」へと昇華させた絶対同盟の面々。

増設された夢の遊技場(迎賓館)は、日夜彼らの笑い声とペイント弾の音、そして食欲をそそる極上の匂いで満たされ続ける。

盤石すぎる後方支援(デリバリー網)と、限界まで仕上がった究極のフィジカル。

全ての準備を完璧に整えた『悠久の踏破者』たちは、いよいよ未知なる領域、大迷宮の80階層台へと向けて、狂乱の歩みを進めていくのであった。


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