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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第132話:【閑話】シノビたちの地獄の配達修練と、『次元の靴』を懸けた最終試験

### 第132話:【閑話】シノビたちの地獄の配達修練と、『次元の靴』を懸けた最終試験

大迷宮の底に突如として出現した神話級の空間、『星繋ぎの迎賓館アストラル・ゲストハウス』。

次元を超えて世界中のVIP(トウヤの飯の虜たち)が集結した伝説の大宴会は、極上のミックスグリルやマヨネーズ牛丼を前に、狂乱と感動の渦を巻き起こしていた。

しかし、宴もたけなわとなった頃。

ミズホの国主とシノビの頭領は、出された『神嶺野牛の極厚ロッシーニ風ステーキ』を頬張りながら、ボロボロと涙を流していた。

「……ううっ、美味い。美味すぎる……。だが、それゆえに悲しい」

「ええ、御館様。この迎賓館の『食材の持ち帰り不可』という絶対のルール……。つまり、我々がミズホの国に帰れば、明日からまたこの味が食えなくなるということですぞ……!」

彼らは完全に【トウヤの飯ロス】の恐怖に直面していた。

もちろん、サイラス率いる『深淵の配達部隊』や、ファルコンの『世界食糧保全機構(超人スパイ部隊)』に出前を頼めば届けてもらえる。だが、他国の部隊に毎回毎食デリバリーを頼むのは、いくら同盟国とはいえ気が引ける(そして何より、自分たちのタイミングで最速で食いたい)。

ミズホの国主は、覚悟を決めたように立ち上がり、円卓の隅で控えていたサイラスとファルコンの元へと歩み寄った。

「……サイラス殿。ファルコン殿」

国主が、二人の超人スパイに向かって深々と頭を下げた。

「不躾なお願いであることは承知している。……どうか! 我がミズホのシノビたちを、貴殿らの『配達部隊』として鍛え上げてはもらえないだろうか!!」

「なっ……! 御館様!?」

シノビの頭領が驚いて立ち上がる。

「我々も、自らの足でこの大迷宮の深層へ赴き、トウヤ殿に調味料をお届けし、そして『極上の出前』を自国に持ち帰るための部隊が欲しいのだ! どうか、我らが誇るシノビたちに、貴殿らの【スープを一滴もこぼさぬ隠密術】を伝授していただきたい!!」

その懇願に、周囲の空気が一瞬静まった。

自国の暗部シノビの技術を、他国のスパイに明け渡し、教えを乞う。それは本来なら国家の威信に関わる大問題である。

しかし、ここで援護射撃が入った。

『いいじゃんか、サイラス! ファルコン!』

トウヤが、ジョッキを片手に笑って言う。

『カイトの街の奴らが直接出前できるようになれば、俺たちも「マヨネーズ」や「醤油」をもっと頻繁に貰えるようになる! 配達員(ウー〇ー)は多ければ多いほど助かるぜ!』

『そうだそうだ!』

魔王ゼノンも、口の周りにマヨネーズをつけながら同調する。

『我が魔王国の暗部もサイラス殿に鍛えてもらい、今や立派な【高速スピン配達員】として毎日地底と迷宮を往復している! ミズホのシノビたちも、絶対に立派な配達員になれるはずだ!』

カイトも身を乗り出す。

『俺からもお願い! シノビの人たち、身体能力はめちゃくちゃ高いから、絶対に良い配達員スパイになると思うんだ! トウヤさんの飯、ミズホの皆にもお腹いっぱい食べてほしいし!』

転生者三人の強烈なプッシュ。

サイラスとファルコンは顔を見合わせ、そして円卓の上座に座るヴィルヘルム国王とガルド宰相に視線を向けた。

「……陛下、いかがいたしましょう」

ヴィルヘルム国王は、鷹揚に頷いた。

「構わん! 我らはすでに絶対同盟の友! 技術の共有は喜ばしいことだ。それに、トウヤ殿の食卓(デリバリー網)が豊かになることこそが、我々同盟の最優先事項であるからな!」

「うむ! ファルコンよ、サイラスよ! 手の空いた者たちで交代でミズホへ赴き、シノビどもを立派な『歩く災害(配達員)』に鍛え上げてこい!!」

絶対同盟のトップからの正式な許可。

サイラスとファルコンは、ビシッと完璧な敬礼を決めた。

「ハッ! 承知いたしました! 我々が責任を持って、ミズホのシノビたちに『地獄のウー〇ー修練』を叩き込みます!!」

「「「おおおおおっ!! ありがとうございます!!」」」

ミズホの国主とシノビの頭領が、歓喜の涙を流して拝み倒した。

***

【翌日――和国ミズホ・天守閣地下修練場】

トウヤたちの深層への挑戦が再開された頃、地上のミズホの街では、恐ろしい修練が幕を開けていた。

「甘いッ!!」

ファルコンの怒号が、地下の修練場に響き渡る。

「貴様ら、それでも三百年の歴史を誇るシノビか! なぜ足音が鳴る! なぜ魔力の波紋が漏れる!! その振動で、トウヤ殿の『特製マヨ牛丼』の具が崩れたらどうやって腹を切るつもりだ!!」

「ヒィィィッ! も、申し訳ありませぬ!!」

シノビの精鋭五十名が、頭の上に【なみなみと水の入った木箱】を乗せたまま、泣きながら忍び足を練習していた。

「我々シノビの隠密術は、気配を消し、敵の命を刈り取るためのもの! 『物を揺らさずに運ぶ』ことなど想定しておりませぬ!!」

シノビの頭領が、木箱の水をこぼしながら悲鳴を上げる。

「言い訳は聞かん! 次は滝行だ!」

数日後、ファルコンと交代でやってきたサイラスが、容赦なく次のメニューを突きつける。

「ただ滝に打たれるのではない! 滝の猛烈な水圧を【絶対ジャイロ歩法】で受け流し、自らを高速スピンのコマと化して滝壷を逆流してみせろ! 摩擦と重力を克服するのだ!!」

「た、滝の中で回る!? そんな無茶苦茶な……!!」

「回れェェェッ!! トウヤ殿のおこぼれ飯(ミックスグリルの持ち帰り)を食いたくないのか!! 魔王軍の暗部は、すでに氷の上で完璧に回っているぞ!!」

「「「――――ッッ!!!!」」」

「トウヤの飯」という究極のニンジン(報酬)と、「他国の暗部に負けている」というプライドを刺激されたシノビたち。

彼らの瞳に、暗殺者としての冷徹さとは全く違う、「純度100%の食欲と狂気」が宿った。

「や、やります!! 忍法・絶対ジャイロの術!!」

「回れェェェッ!! すべては極上ステーキの出前を我が国に持ち帰るためにィィィッ!!」

かくして、ミズホの地下修練場は、頭に箱を乗せて超高速でスピンしながら滝を逆登りするシノビたちという、シュール極まりない地獄の特訓施設と化した。

***

そして、数週間の地獄の修練を経て。

シノビたちはついに、ファルコンとサイラスから「最終試験」を言い渡された。

「……よくぞここまで耐え抜いた」

サイラスが、泥と汗(とマヨネーズへの執念)にまみれたシノビたちを見渡して頷く。

「貴様らの体幹と衝撃吸収能力は、すでに我々配達部隊の及第点に達している。……だが、大迷宮の深層へ出前に行くには、不可欠な『装備』がある」

サイラスが自身の足元、宇宙のように黒く輝く靴を指差す。

「【次元歩行の靴】。あらゆる重力と摩擦を無視し、空間に魔力の足場を作る神話級のアーティファクトだ。これがない限り、深層の狂った物理法則を完全には突破できない」

「で、では、その靴を我らにも……?」

頭領がゴクリと唾を呑み込む。

「アルカディアの宝物庫には、まだいくつかの予備がある。だが、それを支給するには条件がある」

ファルコンが、一枚の羊皮紙を取り出した。

「これより貴様ら五十名には、大迷宮の第30階層『猛毒の腐海』へ向かってもらう! もちろん『次元の靴』は無しだ! その生身の状態で、階層に生息する『ポイズン・フロッグの極上ゼリー肉』を、【傷一つつけず、一滴の体液もこぼさずに】採取して地上へ持ち帰れ!」

「なっ……! 第30階層の猛毒地帯で、次元の靴なしで無振動捕獲を!?」

「そうだ。この【最終採取試験】を見事クリアした者にのみ、我々と同じ配達員の証である『次元歩行の靴』を授与し、トウヤ殿へのデリバリー部隊として正式に認める!!」

「「「ウオォォォォォォッ!! やってやる!! 俺たちは絶対に極上飯を食うんだァァァッ!!」」」

食欲によって完全にリミッターが外れたシノビたちは、雄叫びを上げて大迷宮への転送陣へと飛び込んでいった。

***

数時間後。

アルカディア王城の大迷宮入り口ゲート。

ズサァァァァァッ!!

「はぁ、はぁ……! と、とってきました!!」

ボロボロになりながらも、シノビの頭領をはじめとする精鋭たちが、背中の保温ボックスを死守したまま帰還を果たした。

サイラスがボックスを開けると、そこには猛毒の沼にいたはずのフロッグの肉が、一切の振動も毒の混入もなく、まるで宝石のような完璧な状態で保管されていた。

「……見事だ」

サイラスとファルコンが、同時に拍手を送る。

「次元の靴という補助なしに、猛毒と悪路の環境下でこれほどの鮮度を保つとは。……貴様らは今日から、立派な【ミズホ専属・超絶出前部隊(ウー〇ー・シノビ)】だ!」

「「「おおおおおおおッッ!!!!」」」

ファルコンから、合格の証である【次元歩行の靴】が一人一人に手渡される。

靴を履いた瞬間、シノビたちは自らの体が重力から解放され、空間そのものを蹴って跳躍できる圧倒的な全能感に震えた。

「す、凄い……! これが次元の靴! これさえあれば、どんな深層でも一瞬でデリバリーが可能になる!」

頭領が歓喜の涙を流す。

「よし! 合格祝いだ!」

サイラスが、別の保温ボックスを取り出した。

「トウヤ殿から、試験を頑張った貴様らへのご褒美(逆デリバリー)だ! 第64階層で仕留めた『神嶺野牛の極厚カツサンド(ミズホ特製マヨネーズ&ソース味)』だぞ!!」

「「「カ、カツサンドォォォッ!!?(よく分からんが美味そう!!)」」」

シノビたちは、泣き叫びながらカツサンドに群がった。

揚げたてのカツのサクサク感と、溢れ出す神話級の肉汁。そしてカイトが開発に成功した『特製ソースとマヨネーズ』の酸味とコクが、彼らの脳髄を完全に破壊した。

「うめぇぇぇっ!! 死ぬほど美味い!! 俺たち、配達員になって本当によかったぁぁぁッ!!」

かくして。

絶対同盟と魔王軍に続き、絶海の和国ミズホにおいても、次元を超えて飯を運ぶ最強の『回る配達部隊』が誕生した。

世界の全ての暗部スパイたちが、「極上の出前」という一つの目的のために連帯し、切磋琢磨する。

平和と同盟の絆は、トウヤの飯テロとマヨネーズの力によって、もはやいかなる武力でも切り裂けないほどに強固なものへと仕上がっていくのであった。


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