第131話:海と空のプラチナ食材と、次元を繋ぐ『星繋ぎの迎賓館』(そして伝説のオフ会)
### 第131話:海と空のプラチナ食材と、次元を繋ぐ『星繋ぎの迎賓館』(そして伝説のオフ会)
『悠久の大迷宮』第64階層――『陸海空の三界領域』。
数週間に及ぶ超長期サバイバルキャンプは、いよいよ大詰めを迎えていた。
第一のプラチナ食材である『神嶺野牛』を霊峰の頂で瞬殺した後。
トウヤたち『悠久の踏破者』の六人と三匹は、果てしなく広がる青き『大海原』へと足を踏み入れていた(正確には、ガレスの盾をイカダ代わりにし、水上歩行魔法で進んでいた)。
「ピィィッ!(兄貴、あの海溝の底! すっごくおっきな貝があるよ!)」
上空から海中を透視したクーの報告に、トウヤの【神眼の指揮】が光る。
「見えたぞ! 第二のプラチナ反応! 『アビス・メルト・オイスター(深淵の融解大牡蠣)』だ!!」
トウヤが海を指差して絶叫した。
「あいつ、深海の超水圧に耐えながら、何百年も極上のミネラルを溜め込んできた神話級の牡蠣だ! その身はミルクどころじゃない、噛んだ瞬間に海そのものの旨味が脳内を融解させる究極のクリーミーさを誇ってるぞ!」
「「「究極の牡蠣ィィィッ!!」」」
「だが注意しろ! 殻を無理やりこじ開けたり、衝撃を与えたりすると、身が縮んで旨味が水に逃げちまう! 深海の超水圧を『摩擦ゼロ歩法』でいなし、泥沼の『無振動』で殻の隙間から貝柱だけを正確に断ち切れ!!」
「「「了解ッッ!!!!」」」
エリスとジンが、水圧をものともせず深海へと潜行する。
「水圧など、トランポリンの反発力に比べればただの重しですわ! 【絶対衝撃吸収歩法・流転の潜水】!」
エリスが水の抵抗を完全に殺して牡蠣の正面に回り込み、その巨大な殻の僅かな隙間に大剣の先端を滑り込ませる。
「貝柱、もらったぜ! 【幻影歩法・水月抜き】!」
ジンが、一切の振動を起こさぬ神速の刃で貝柱をスパッと切断。
「「【完全密閉・瞬間氷結】!!」」
ルミナとマリアの魔法が、海水を巻き込むことなく、極上の大牡蠣だけを純白の冷凍ブロックに変えた。
ズドォォォンッ!! と、海中から天を貫く光の柱が立ち昇り、第二の隠れボスが討伐された。
「よし! 次は空だ!!」
勢いに乗った一行は、そのまま天空に浮かぶ巨大な浮遊島へと跳躍。
第三のプラチナ反応――『ストラトス・フォアグラ・グース(成層圏の極上肝鳥)』。
常に成層圏の薄い空気を飛翔し、極限の運動によって体内に『神話級のフォアグラ』を形成した巨大な怪鳥である。
「鳥が空の彼方へ逃げる前に、空中でバウンドの頂点を突け!」
「(ワゥォォンッ!)」
クロが雲の影を縫い付け、鳥の機動力を一瞬だけ削ぐ。
「(極上の肝、傷はつけませんの! 【渾身撃・無重力寸止め】!)」
空高く跳躍したエリスの刃が、怪鳥が羽ばたく瞬間の「無重力状態」を正確に捉え、痛覚すら与えずに首の神経を断ち切った。
カッ――――!!!!
天空の浮遊島からも純白の光の柱が打ち上がり、三界の領域に君臨した三体のプラチナ食材は、一切のストレスを与えられることなく、全てトウヤのアイテムボックスへと収められた。
「……ふぅ! 陸海空、完全制覇だ!!」
トウヤが、汗を拭いながらガッツポーズを決める。
数週間に及ぶキャンプの疲労も、アイテムボックスにギッシリと詰まった「神話級の赤身肉、大牡蠣、フォアグラ」の前では、最高のスパイスでしかなかった。
***
そして、第64階層の最奥。
いよいよ前半戦最後の大節目となる、第65階層(中ボス部屋)の扉の前。
「さて、65階層の中ボスだ。ここを抜ければ、いよいよ60階層台の後半に突入する」
トウヤが『天啓の美食羅針盤』を取り出す。
ピカァァァァァァァァッッ!!!!
盤面の中央に、目が潰れるほど強烈な『プラチナ色』の光が一つだけ点灯した。
「よし、中ボスの大部屋直行パターンだ! しかもこの輝き……超極上の当たりボスだぞ!」
トウヤが扉を蹴り開けると、そこは荒涼とした巨大な闘技場であった。
中央に鎮座していたのは、四つの頭(牛、豚、鶏、羊)とドラゴンの胴体を持つ、禍々しい合成獣。
第65階層中ボス――『カタストロフィ・キマイラ・レックス(厄災の合成獣王)』。
「うおおおっ!! あいつ、四種類の極上肉(ビーフ、ポーク、チキン、マトン)と、神話級のドラゴンの脂を併せ持った【奇跡の歩くミックスグリル】だぞォォォッ!!」
トウヤの神眼が、その肉質を解析して絶叫する。
「「「歩くミックスグリルゥゥゥッ!!!」」」
「全魔法と全ギミックを使ってくる凶悪なボスだが、肉が混ざり合う前に0秒で仕留めろ!!」
「「「了解ッッ!!!!」」」
中ボスが「グルルォォォッ!」と厄災の魔法を放とうとした、まさにその0.01秒前。
60階層台の泥沼、摩擦ゼロ、超弾力のトランポリン……あらゆる理不尽を食欲でねじ伏せてきた彼らの【集大成の連携】が炸裂した。
ジンが絶対ジャイロ歩法でマッハの速度で懐に潜り込み、クロが影を完全固定。クーの神眼が四つの頭の神経の『同期の瞬間』を完璧に見切る。
そして、エリスの大剣がトランポリンの衝撃吸収を応用した「無振動・流転の剣」で、四つの首を『同時に、かつ無音で』断ち切った。
間髪入れず、ルミナとマリアの絶対零度パッケージング。
カッ――――!!!!
ズドォォォォォォォォォンッッ!!!!!
開始から0.01秒。
厄災の合成獣王は、何の魔法も放つことなく、ただの「奇跡のミックスグリル・ファミリーパック」へと姿を変えた。
パパパパパーンッ!!
空間に、迷宮からの荘厳なファンファーレが鳴り響く。
そして、光の跡地に現れたのは、これまでの宝箱とは一線を画す、巨大な『家の形』をした神話級アーティファクトであった。
「な、なんだこれ?」
トウヤがその模型のような家を手に取ると、脳内に迷宮からの『瞬殺ボーナス(プレゼント)』の仕様が流れ込んできた。
「……おい、お前ら。迷宮の奴、俺たちが通信機でオフ会(宴会)ばっかりやってるのを見て、とんでもない設備をプレゼントしやがったぞ」
トウヤが、興奮で声を震わせる。
「これ、【星繋ぎの迎賓館】っていう魔道具だ! これを起動すると、俺たちが指定した相手の場所に『迎賓館への扉』が出現する! そして、その扉を開ければ、全員が【次元を超えて一つの食事会場に集まれる】んだ!!」
「「「えええええええッッ!!?」」」
「マ、マジですか!? つまり、地上にいる国王陛下たちも、地底の魔王様も、ミズホのカイト様も、直接ここへ来れると!?」
「ああ! だけど、迷宮のバランスを保つための『絶対の制限』がある」
トウヤが指を立てる。
「この迎賓館の扉から入った者は、必ず『元の場所の扉』からしか帰れない。そして、迎賓館の中で出された料理や食材は、一切【外へ持ち帰ることができない(アイテムボックス不可)】設定だ!」
「なるほど」ルミナが頷く。
「つまり、皆で集まってご飯を食べることはできても、食材のやり取りや、王城へのお土産を持って帰ることはできないのですね」
「そういうことだ! だから、後で自国でもその味を楽しみたい時は、今まで通りサイラスたちウー〇ー部隊に【出前】を頼むしかないってわけだ!」
「ガッハッハ! そりゃあサイラスの奴らも一安心だな! デリバリーの需要は絶対に無くならねえ!」
トウヤは満面の笑みで、その模型を高々と掲げた。
「よし!! 陸海空の極上食材も、ミックスグリルも手に入った! 今日は記念すべき日だ! この迎賓館を使って、全陣営を直接集めた【超絶・伝説のオフ会】を開催するぞォォォッ!!」
「「「ヒャッハー!! 大宴会だァァァッ!!」」」
***
【閑話:次元を超えた大宴会と、至高のミックスグリル】
その日の夜。
アルカディア王城の玉座の間、地底魔国の円卓の間、ミズホの国の天守閣。
それぞれの場所に、突如として光り輝く『豪華な両開きの扉』が出現した。
トウヤからの事前連絡を受けていた面々は、ゴクリと唾を呑み込み、そして震える手でその扉を開け放った。
「「「おおおおおっ……!!」」」
扉の先に広がっていたのは、王宮のホールすらも凌駕する、広大で豪華絢爛な『迎賓館』であった。
中央には、数十人が座れる巨大な円卓が置かれ、煌びやかなシャンデリアが空間を照らしている。
「こ、これが……次元を超えた迎賓館……!」
ヴィルヘルム国王とガルド宰相が、恐る恐る足を踏み入れる。
「うおおおっ! トウヤさん! ゼノンさん!」
別の扉からは、ミズホの国主と、興奮したカイトが飛び出してきた。
「兄弟! ついに、ついに直接会えたな!!」
さらに別の扉からは、魔王ゼノン(田中太一)と四天王たちが、威厳を保とうと必死に顔を作りながらも、嬉しそうに駆け寄ってきた。
そして、円卓の奥で彼らを出迎えたのは。
エプロン姿のトウヤと、『悠久の踏破者』の仲間たちであった。
「いらっしゃい! 皆、よく来てくれたな!」
トウヤがニカッと笑う。
「トウヤ殿……! 本物だ、本物の英雄殿だ……!」
ヴィルヘルム国王たちが、感動で涙ぐむ。サイラスたち配達部隊も、護衛として同席しつつ「出前以外でトウヤ殿の飯が食える」と密かに涙を流していた。
「あ、そうだ。この迎賓館、もう一つすげえ機能があってさ」
トウヤが指を鳴らすと、レストランの壁一面にあった巨大な窓の景色が、一瞬にして切り替わった。
「「「……ッッ!?」」」
窓の外に広がったのは、美しい淡い光を放つ【第57階層・燐光の巨樹遺跡】の絶景であった。
さらに指を鳴らすと、【第62階層・水晶塩の結晶平原】へと景色が変わる。
「おおおおっ!! こ、これが大迷宮の深層の風景!?」
「我々のような者が、一生見ることができないはずの神の領域……!」
地上の王や国主たちが、窓にへばりついて歓声を上げる。トウヤたちが実際に踏破した階層の風景を、安全なレストランからパノラマで鑑賞できる機能であった。
「さあさあ、景色もいいけど、まずは飯だぜ! カイトが送ってくれたマヨネーズと醤油を使って、三界の極上食材をフルコースにしたからな!」
円卓の上に、ゴレ太郎の完璧なサポートによって次々と大皿が並べられていく。
「前菜は『アビス・メルト・オイスターの殻焼き(特製ポン酢マヨ添え)』! そしてメインは『神嶺野牛とフォアグラの極厚ロッシーニ風ステーキ(ミズホ醤油の和風ソース)』だ!」
最後にドンッ! と置かれたのは、第65階層中ボスを使った『カタストロフィ・奇跡のミックスグリル(牛・豚・鶏・羊の全種盛り)』であった。
「さあ! 全陣営揃って、乾杯ッッ!!!!」
「「「いただきますッッ!!!!」」」
魔王ゼノンが、フォアグラの乗った赤身ステーキを口に放り込む。
「――――ッッ!! うめぇぇぇぇぇっ!! フォアグラの濃厚な脂が、赤身肉の旨味を包み込んで、和風の醤油ソースが全てを神の領域に昇華させてやがる!!」
ゼノンは、四天王の前で再び号泣しながら肉を掻き込んだ。
カイトも、大牡蠣の殻焼きをハフハフと頬張る。
「熱っ! うまっ! なんだこのクリーミーさ!? 俺のマヨネーズが、ただの万能調味料から『神の粉』みたいになってる!!」
カイトの隣で、ミズホの国主とシノビの頭領が「オ、オイスター……恐ろしい食べ物だ……」と白目を剥いて昇天していた。
ヴィルヘルム国王とガルド宰相は、ミックスグリルの豚肉にむしゃぶりついた。
「なんという柔らかさ! そして噛むほどに溢れる肉汁! これが深層の中ボスの味……! ガルドよ、この味を覚えておけ! 明日、絶対にサイラスたちに【このミックスグリルの持ち帰り(出前)】を依頼するのだ!!」
「ハッ! 国家予算を削ってでも、この味を王城で再現させますぞ!!」
持ち帰りができないという仕様は、完全に彼らの「後で絶対に出前を頼む」という強烈な飢餓感(デリバリー需要)を煽る最高のスパイスとなっていた。
「いやー、美味い! やっぱり皆で食う飯は最高だな!」
トウヤが、カイトやゼノンとグラスをぶつけ合う。
大迷宮の底に作られた『星繋ぎの迎賓館』。
そこは、種族も、身分も、次元の壁すらも超えて、全ての者が「美味しい」というただ一つの真理の下に集い、笑顔を分かち合う【究極の平和の空間】であった。
絶品の料理と、窓の外に広がる深層の絶景を肴に、伝説のオフ会は夜遅くまで続く。
世界を完全に胃袋で平定した『悠久の踏破者』たちの物語は、さらなる未知の深層(60階層台後半)へ向けて、最高のコンディションで幕を開けるのであった。




