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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第125話:超弾力のトランポリン樹海と、歴史に刻まれた『転生者』の痕跡

### 第125話:超弾力のトランポリン樹海と、歴史に刻まれた『転生者』の痕跡

『悠久の大迷宮』第62階層――『水晶塩の結晶平原』にて、規格外の神話級熟成ティラノサウルスを最高の状態で仕留めたトウヤたち『悠久の踏破者』。

水晶塩のサイコロステーキを堪能し、魔王ゼノンからの「スイーツ要望」という新たなミッションも受注した彼らは、次なる第63階層の黒曜石の大扉の前に立っていた。

「さーて! 60階層台もいよいよ中盤戦だ。次はどんな美味い飯が待ってるかな!」

トウヤが、ワクワクとした表情で『天啓の美食羅針盤』を取り出す。

魔力を流し込むと、羅針盤の盤面に多数の『黄金色』の光がパァァッと点灯した。

「おおっ! 今回も黄金反応がギッシリだ! 食材の質は文句なしの上々だな!」

だが、ジンが盤面を覗き込んで眉をひそめる。

「……なぁトウヤの兄貴。光の点灯はいいんだが、針の動きがおかしくねえか?」

ジンの言う通り、羅針盤の針は小刻みに「ビヨン、ビヨン」と、まるでバネのように奇妙な上下運動バウンドを繰り返していた。

「……なるほど。54階層の乱高下や、58階層の高速回転と同じパターンだ」

トウヤが羅針盤を懐にしまい、気を引き締める。

「食材は最高だが、環境は再び俺たちを試す【理不尽ギミック階層】ってことだ。心してかかれよ!」

「「「了解イエッサーッッ!!!!」」」

バンッ!!

トウヤが勢いよく大扉を押し開けた。

――ポヨォォォンッ!!

「うわぁっ!?」

「きゃああっ!?」

扉の中に一歩足を踏み入れた瞬間。先頭を歩いていたエリスとマリアの体が、足元の地面によって『強烈な反発力』を喰らい、トランポリンで跳ねるように上空十メートルへと弾き飛ばされた。

「ピィィッ!?(兄貴、地面がすっごくプニプニしてるよ!)」

クーが上空から叫ぶ。

第63階層――『大反発の菌糸層とトランポリン樹海』。

そこは、地面の全てが「超高弾力の巨大な菌糸(キノコの傘のような材質)」で覆われた、歩くことすら困難なバウンド空間であった。一歩踏み出すだけで体重の数十倍の反発力が生まれ、上空のトゲだらけの茨の天井へと串刺しにされそうになる凶悪なトラップフィールドである。

「なるほど、これが針がバウンドしてた理由か……!」

トウヤは空中で体勢を立て直し、【次元歩行の靴】で魔力の足場を作ってなんとか着地する。エリスたちも空中で一回転し、ジンにキャッチされて事なきを得た。

「ワゥッ……(ポヨォォン)」

クロが四つ足で着地しようとするが、肉球のクッションを弾き返されてボールのようにポンポンと跳ね回っている。

「おい、トウヤの兄貴! あそこを見ろ! 巨大な鳥が跳ねてやがる!」

ジンが指差した先。超弾力の地面を利用し、ゴム鞠のように高速でバウンドしながらこちらへ向かってくる巨大な影があった。

「あれは『スプリング・マッスル・ターキー(超弾力筋肉の七面鳥)』だ!」

トウヤの【神眼の指揮】が、跳ね回る巨大鳥の肉質を解析する。

「常にあのバウンドの衝撃に耐えているおかげで、筋肉繊維が極上のバネのように発達してる! だが熱を通せば、その反発力が全て『噛み切れないほどの弾力と、溢れ出す濃厚な肉汁』に変わる神話級のターキー(七面鳥)だ!!」

「「「神話級の、ターキーィィィッ!!!」」」

「だが注意しろ! あの弾力筋肉に力任せに刃を入れると、武器ごと弾き返されて肉の細胞が傷つく(不味くなる)! 地面のトランポリンの反発を完全に殺し、空中でターキーのバウンドの【頂点(無重力になる一瞬)】を狙って、一切の抵抗なくスライスするんだ!!」

「「「了解いただきますッッ!!!!」」」

摩擦ゼロや重力異常を乗り越えてきた彼らにとって、これしきの環境異常はもはや『新しい調理(解体)法を学ぶための楽しいアスレチック』でしかない。

「力で押すから弾かれるのですわ! 衝撃を吸収して流す……! 【渾身撃・柳の構え】!」

エリスが、着地の瞬間に膝と全身の関節を極限まで柔らかく使い、トランポリンの反発力を「ゼロ」に殺してピタリと静止してみせる。

「ターキーの頂点、もらったぜ! 【幻影歩法・無重力ゼロ・グラビティスライス】!」

ジンが、あえて地面の反発力を利用して弾丸のように跳び上がり、ターキーがバウンドの頂点に達して空中で静止した『コンマ一秒』の隙に、双短剣で滑らかに首の神経を抜き取った。

「プルルッ!」

リルが空中で弾力菌糸の胞子を浄化し、ルミナとマリアがターキーの落下前に氷結パッケージングを完了させる。

「よし! 肉へのストレスゼロ! 完璧だ!!」

この日もまた、トウヤたちのストイックな【環境適応&収穫修練】が幕を開けた。

***

それから数日。

トランポリン樹海でのバウンド制御を完全にマスターし、極上のターキー肉をアイテムボックスに山ほど溜め込んでいたトウヤたちの元に、頭上から「お客様」が降ってきた。

「――お、お届けに上がりま……ポヨォォォンッ!?」

「隊長ォォォッ!? 止まりません、弾きますぅぅぅッ!!」

空間跳躍で第63階層の空中に出現したサイラス率いる『深淵の配達部隊』三十名が、着地した瞬間に地面の大反発を喰らい、三十個のピンボールのように空間をカンカンと跳ね回り始めたのである。

「おっ、サイラス! 待ってたぜ!」

トウヤが、空中で錐揉み回転しながらも背中の保温ボックスだけは死守しているサイラスをヒョイッと受け止める。

「ハァ、ハァ……。ト、トウヤ殿、お見苦しいところを……」

サイラスが目を回しながらも、ビシッと敬礼した。

「ご要望の品、魔王殿のためのスイーツ作りに必要な『極上のバニラビーンズ』と『特級の生クリーム』、そして同盟国中の最高級砂糖を集めてまいりました!」

「最高だ! これで魔王の度肝を抜く特大プリンとショートケーキが作れるぞ!」

トウヤが満面の笑みで荷物を受け取ると、ニヤリとサイラスたちを見回した。

「さて、サイラス。お前らもこの『超弾力トランポリン空間』の洗礼を受けたようだな。……配達員たるもの、どんなに足場が弾もうとスープをこぼしちゃいけないよなぁ?」

「……ッ!! 左様であります!!」

「よし! お前らも今日から修練に参加だ! 地面の反発力を完全に吸収し、ターキーのバウンドの頂点を突く【絶対衝撃吸収歩法】を叩き込んでやる!」

「「「了解イエッサーッッ!!!! 全てはトウヤ殿のおこぼれ飯のために!!」」」

かくして、地上で3000人の暗部を「高速スピン」で鍛え上げている最凶の教官サイラスたちも、迷宮の底ではトウヤたちの熱血指導の下、泥だらけになってバウンドを殺す特訓に明け暮れることとなった。

「膝だ! 膝のクッションで地面の反発を食え!」

「ハッ!! (ポヨォォン)……ぐはぁっ!!」

サイラスたち配達部隊は、数日の地獄のバウンド修練を経て、ついに「どれだけ高い場所からトランポリンに落ちても、一切音を立てずに衝撃をゼロにする」という、もはやスライムのような異常な体術を獲得するのであった。

***

【同日夜――星の箱庭・リビング】

ターキーの極上ローストを囲み、サイラスたちと共に大宴会を開いた後のこと。

トウヤは、魔王用のスイーツの仕込みをゴレ太郎に任せ、大型の通信アーティファクトの前に座っていた。

「――おーい、陛下。ガルドのおっさん。生クリームとバニラビーンズ、無事に届いたぜ。いつもありがとな」

通信の向こうに映し出されたヴィルヘルム国王とガルド宰相は、いつものように歓喜の涙を流すかと思いきや、本日は極めて真剣な、そして興奮を抑えきれない顔つきであった。

『おお、トウヤ殿! デリバリーの無事、何よりであります! ……しかし、本日は我々からトウヤ殿に【重大なご報告】があるのです!!』

ヴィルヘルム国王が、身を乗り出して口を開く。

「重大な報告? ああ、そういえば先日頼んでおいた『他の転生者』の探索の件か?」

トウヤがエールを飲みながら尋ねると、ガルド宰相が深く頷いた。

『左様でございます! トウヤ殿からご相談を受けて以降、我々絶対同盟は歴史省の学者を総動員し、過去の文献を徹底的に洗い出しました。……その結果、歴史上に【明らかに異世界の知識を持っていたと思われる人物】の記述がいくつか発見されたのです!』

「マジか!」

トウヤが身を乗り出す。「どんな奴だ?」

『今から約三百年前、突如として現れ、一部の地域に「独自の農法(二毛作など)」と、「魚を薄く切って酢飯に乗せる『スシィ』という奇妙な料理」を広めた『東の賢者』と呼ばれる人物です。彼は特殊な曲刀カタナを振るい、独自の文化を築いたと……』

「(寿司に刀……間違いない、日本人(転生者)だ!)」

トウヤの目が輝く。

「その『東の賢者』ってのは、今も生きてるのか?」

『いえ、寿命を全うしたと記録されています。……ですが、ここからが本題です』

ヴィルヘルム国王が、通信機越しに一枚の羊皮紙の地図を広げた。

『我が同盟の誇る超人スパイ部隊(ウー〇ー)が世界中を駆け回り、辺境の地に至るまで調査を行った結果……海洋通商連盟オロスのさらに東、絶海の孤島群に、【歴史から完全に隔離された、極めて独特な文化を持つ街】が現在も存在していることを確認したのです!』

「独特な文化?」

『はい。スパイの報告によれば、その街の住人たちは、我々のような洋服ではなく『キモノ』と呼ばれる布を纏い、街のあちこちに『公衆浴場オフロ』なる湯舟が存在するとのこと。そして何より……』

ガルド宰相が、ゴクリと唾を呑み込む。

『彼らは、黒い豆を発酵させ、トウヤ殿の持っておられる【ショウユ】と全く同じ製法で『黒き万能の塩水』を街全体で醸造しているというのです!!』

「「「――――ッッ!!!!」」」

トウヤだけでなく、横で聞いていたジンやエリスたちも息を呑んだ。

それは紛れもなく、トウヤの故郷(地球・日本)の文化そのものであった。

「……醤油の醸造街……和風の街並みに、お風呂文化……」

トウヤは、歓喜のあまりブルブルと震え始めた。

「陛下! その街には今、転生者が生きてるのか!?」

『確証はありませんが、その可能性は極めて高いと思われます! 現在、ファルコン率いるスパイ部隊の精鋭が、街の内部へ潜入調査を進めております!』

「でかした!! 最高の報告だぜ陛下!!」

トウヤが通信機の前でガッツポーズを決める。

「俺以外の転生者が作った『日本町』がこの世界にあるなんて……! しかも醤油の醸造までやってるなら、絶対に美味い和食の食材(米や海鮮)が山ほどあるはずだ!!」

『トウヤ殿がそこまでお喜びになられるとは……! 我々絶対同盟も、総力を挙げてその街との接触(および調味料の確保)を急がせます!』

大迷宮の底で、魔王に振る舞うスイーツを作りながら聞いた、最高にワクワクする「故郷」の痕跡。

トウヤの頭の中は、すでに『その街の醤油を使った海鮮丼』や『熱々の温泉』のことで頭がいっぱいになっていた。

未知なる転生者の存在と、和の文化が息づく街。

大迷宮の過酷な攻略と並行して、世界の裏側で進む「同郷探し(グルメ探索)」の歯車が、トウヤの非常識なスローライフをさらにスケールの大きな物語へと巻き込んでいくのであった。


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