表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
122/510

第122話:魔王専属配達部隊の結成と、世界を繋ぐ超絶修練(そして61階層の卒業)

### 第122話:魔王専属配達部隊の結成と、世界を繋ぐ超絶修練(そして61階層の卒業)

『悠久の大迷宮』第61階層の安全地帯。

【星の箱庭】のリビングには、宇宙一美味い『ギャラクシー霜降り肉のすき焼き』と、その極上の残り汁を最後の一滴まで吸い尽くした『究極の締めカレーうどん』を平らげ、腹を限界まで膨らませた二つの陣営の姿があった。

「ふぅ……食った食った。まさかカレーうどんの汁まで一滴も残らないとはな」

トウヤが、空っぽになった特大の土鍋を見て満足げに笑う。

「ゲフッ……。いや、見事な采配であった、英雄殿。……我が魔国の料理長にも、この味を見習わせたいものだ」

漆黒の玉座……ではなく、ふかふかのソファに深くもたれかかっている魔王ゼノン(前世:田中太一)は、必死に魔王としての威厳を保ちながらも、その顔は完全に「昇天寸前のサラリーマン」のそれであった。

(うおおおおっ……! カレー! カレーうどん最高ォォォッ!! 最後に卵を落としたあのマイルドな辛さ、俺の数十年の地底生活の苦労が全部報われた気分だ!!)

ゼノンの隣では、鬼将軍ゴウラや宰相セレスティたち四天王も、口の周りをカレーで黄色く汚したまま、幸せそうに白目を剥いてソファーに沈み込んでいる。

「さて、そろそろお開きの時間だな」

トウヤが立ち上がり、魔王たちへ向き直る。

「ゼノン、今日は楽しかったぜ。平和同盟も結べたし、またいつでも飯を食いに来てくれよな」

「うむ。私も大変有意義な時間(最高のオフ会)を過ごせた。また近いうちに……」

ゼノンが立ち上がりかけた、その時である。

「お、お待ちください、トウヤ殿!!」

宰相セレスティが、弾かれたように立ち上がり、トウヤと、その傍らに控えていたサイラスに向かって深々と頭を下げた。

「どうした、セレスティ?」

「トウヤ殿、そしてサイラス殿。……不躾ながら、我が地底魔国から一つ、切なるお願いがございます」

セレスティは、真剣な眼差しでサイラスを見つめた。

「我が魔国にも、諜報や暗殺を専門とする『黒きシャドウ』という精鋭部隊が存在します。しかし、彼らの隠密技術は、先ほどサイラス殿たちが見せた『次元跳躍』や『絶対ジャイロ歩法』に比べれば、児戯にも等しい」

セレスティはゴクリと息を呑んだ。

「どうか! 我が魔国の暗部を、サイラス殿の『深淵の配達部隊』の弟子として修練させていただけないでしょうか! そして彼らを……【魔王様へ極上飯をお届けする、魔国専属の配達部隊】として育成していただきたいのです!!」

「なっ……!?」

その提案に、一番驚いたのは魔王ゼノンであった。

(せ、セレスティィィィッ!! お前ってやつは……なんて気が利く部下なんだ!!)

ゼノンの内心のテンションは限界突破していた。

自分が「また出前して」とは魔王の威厳的に言い出しにくかったところを、部下の方から「魔王様のために配達ルートを確立しましょう」と提案してくれたのだ。

(最高だ! これで俺は、地底の玉座に座りながらトウヤさんの和食(ウー〇ー)を週一で頼めるようになる!!)

しかし、ゼノンは必死に顔の筋肉を引き締め、わざとらしく腕を組んだ。

「……フッ。セレスティよ、余計な気遣いを。私とて、そこまでこの飯に執着しているわけでは……」

ゼノンがチラッとトウヤに「頼む、断らないでくれ」という決死の目配せを送る。

トウヤは、そんな同郷の兄弟ゼノンの涙ぐましい努力と配慮に気づき、ニカッと笑った。

「いい提案じゃねえか! なぁ、サイラス。それに、通信の向こうの陛下と宰相のおっさん!」

トウヤは、通信機越しに一部始終を見ていたヴィルヘルム国王とガルド宰相に呼びかけた。

「魔王国への配達ルートが確立すれば、向こうの美味い食材トリュフとかと地上の調味料のトレードもスムーズになる。何より、人間と魔族の暗部が一緒に修練すれば、隠し事なしの本当の『平和同盟』になるだろ?」

『お、おおおっ! まさにその通りだ、英雄殿!!』

ヴィルヘルム国王が、通信機越しに歓喜の涙を流した。

『魔王国の精鋭が、我が同盟の配達部隊の下につくというのだ! これ以上の強固な和平の証があろうか!!』

「サイラス、お前の方はどうだ? 人数が増えて指導が大変かもしれないが……」

サイラスは、ビシッと完璧な敬礼を決めた。

「問題ありません。荷物を揺らさず、お客様に熱々の料理をお届けするという【配達員の魂(ウー〇ー・スピリッツ)】に、人間も魔族も関係ありません。地底の悪魔だろうと、私が責任を持って『最強の配達員』に鍛え上げてみせます」

「よし、決まりだな!」

トウヤがパンッと手を叩く。

「ゼノン! 楽しみに待っててくれ! 次は地上の調味料と魔界の食材を使った、最強のコラボ弁当を出前してやるからな!」

「……うむ。同盟国の誠意、確かに受け取った。(よっしゃぁぁぁぁっ!! トウヤさんマジ神!!)」

魔王ゼノンは、威厳に満ちたマントの翻しと共に、しかし足取りは信じられないほど軽やかに、サイラスたちのエスコートで地底魔国へと帰還していった。

***

【閑話:地底魔国アガルタ・暗部訓練施設】

数日後。

太陽の光が届かない地底魔国の巨大な訓練施設に、魔王直属の暗殺部隊『黒きシャドウ』の精鋭五十名が集められていた。彼らは皆、影に溶け込み、音もなく命を刈り取る魔界の恐るべきアサシンたちである。

その彼らの前に、腕を組んで仁王立ちしているのは、人間の配達員・サイラスであった。

「……いいか、魔族のヒヨッコども。貴様らが今まで培ってきた暗殺術など、今日この瞬間から全てドブに捨てろ」

サイラスの低く冷たい声が、地底の空洞に響き渡る。

「我々がトウヤ殿から預かった使命はただ一つ。どんな極限環境だろうと、【スープを一滴もこぼさずに魔王様へお届けすること】だ!」

「フン、人間ふぜいが偉そうに」

シャドウの部隊長である四つ腕の魔族が、鼻で笑った。

「我々魔族の身体能力と隠密魔法があれば、熱々のスープを運ぶなど赤子の手をひねるような……」

「ならば、やってみせろ」

サイラスが指を鳴らすと、魔族たちの頭の上に『なみなみと水の入った木箱』が乗せられた。

「魔法の使用は禁止。自身の体幹のみで、その水を一滴もこぼさずにこの訓練室を一周してみろ」

「舐めるなよ!」

部隊長が、素早いステップで駆け出した。

……しかし、彼らは「殺すための動き」には慣れていても、「衝撃を完全に殺して物を運ぶ動き」には全く慣れていなかった。

チャプッ。

たった三歩目で、木箱から水がこぼれ落ちた。

「不合格だ、ゴミが!!」

サイラスの怒声が爆発した。

「貴様のその雑なステップのせいで、トウヤ殿の『極上カレーうどんの汁』がこぼれたらどうするつもりだ!! 魔王様がどれほどその汁を白飯にかけて食べるのを楽しみにしているか、貴様には分からんのか!! 万死に値するぞ!!」

「ヒィッ!?」

「いいか! 次は第58階層の『摩擦ゼロ・超音速の暴風空間』を想定した修練だ! 氷の床の上で、頭に箱を乗せて超高速でスピンしろ! ジャイロ効果で体軸を固定するんだ!! 回れ! 回らねば飯は運べんぞ!!」

「な、なんだその狂った物理法則は!? 魔界の常識を超えているぞ!?」

「回れェェェッ!! トウヤ殿のおこぼれ飯(逆デリバリー)を食いたくないのか!! 先日のお前らの上司(四天王)は、美味さのあまり泣きながら皿を舐め回していたぞ!!」

「「「――――ッッ!!!!」」」

あの誇り高き四天王が、泣きながら皿を舐めた。

その衝撃の事実は、魔族の精鋭たちの心を完全にへし折り、そして同時に「純度100%の食欲と好奇心」を爆発させた。

「や、やります!! 人間にできることが魔族にできないはずがない!!」

「回れ! 箱を落とすな! 全ては極上のおこぼれ飯のためにィィィッ!!」

かくして、地上の『世界食糧保全・警備機構(3000名)』に続き、世界の裏側である地底魔国においても、数十名の【頭に箱を乗せて高速スピンする魔族の暗殺者たち】が誕生した。

彼らはサイラスの地獄のシゴキに耐え抜き、やがて空間を跳躍し、重力を無視して魔王の元へ弁当を届ける『魔界最強のウー〇ー配達員』へと進化を遂げていくのであった。

***

【第61階層・泥濘の腐海】

魔王たちを見送り、サイラスたちが地上(と地底)の修練へ戻っていった後。

トウヤたち『悠久の踏破者』は、再び第61階層の過酷な泥沼へと足を踏み入れていた。

「よし! 魔王の接待も終わったし、俺たちも気を取り直して迷宮攻略に戻るぞ!」

トウヤが、重力3倍の泥沼の中で【神斬りの業物】を構える。

「ええ! 魔王様があれほど喜んでくださって、私まで嬉しくなりましたわ。……でも、私たちも負けていられませんの!」

エリスが、泥の反発力を利用した滑らかなステップで、沼から飛び出してきたポイズン・マッド・スライムを大剣の峰で綺麗に弾き飛ばす。

「ああ。魔王やサイラスたちが裏で頑張ってるんだ。俺たちは、あいつらに食わせるための『最高の食材』を見つけるためにも、どんどん深層へ進まねえとな!」

ジンが、泥の上を滑るように駆け抜け、腐食の触手の関節をノーモーションで断ち切る。

この数日間、彼らはハズレ階層であるこの61階層を、「もしこれが極上食材だったら」という極限の縛りプレイで戦い抜いてきた。

その結果、彼らの動きは重力3倍の泥沼という劣悪な環境においても、一切の無駄な振動を起こさず、魔力の波紋すら立てない『完全な自然体』へと昇華されていた。

「トウヤさん! リルちゃんと一緒に、周囲の泥跳ねの浄化も完璧です!」

マリアとルミナが、スライムの体液を一滴も周囲に飛び散らせることなく、完璧な氷結パッケージングを完了させる。

「よし! 合格だ!!」

トウヤが、泥沼の中で高らかに宣言した。

「この重力と泥の環境下での『完全捕獲シミュレーション』は、全員完璧な水準に達した! これなら次の階層でどんな理不尽な環境と極上食材が来ても、絶対に傷つけずに仕留められるぞ!!」

「「「うおおおおおっ!! やったぜ!!」」」

「これで泥まみれの修練ともお別れですわね!」

ハズレ階層での地味でストイックな修練を、圧倒的な練度でクリアした六人と三匹。

彼らは泥を完璧に浄化し、いよいよ未知なる第62階層の扉へと歩を進める。

世界の裏側の魔王すらも胃袋で平定し、世界規模の配達網(平和同盟)を完成させた彼らの非常識なスローライフは、さらなる極上の飯と未知の冒険を求めて、大迷宮の深淵へと絶好調で突き進んでいくのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ