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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第104話:豊穣の紅葉連峰と、練度MAXの秋覚悟(飯テロ)収穫祭

第104話:豊穣の紅葉連峰と、練度MAXの秋覚悟(飯テロ)収穫祭

『悠久の大迷宮』第51階層――『迷い草の広葉樹林と清流のせせらぎ』。

大迷宮の折り返し地点を過ぎたトウヤたち『悠久の踏破者』の六人と三匹は、数日間にわたる「原点回帰の連携訓練」を無事に終えようとしていた。

かつての「力任せのタイムアタック」から一皮剥け、彼らの動きは【極上食材(魔物)の細胞を1ミリも傷つけずに狩る】という、異常なベクトルで究極の洗練を遂げていた。

「よし、ジン! エリス! タイミング完璧だ! ガレスの盾の弾き方も、獲物に無駄なストレスを与えない最高の角度になってるぞ!」

トウヤが、満足げに手を叩く。

「ワゥッ!」

漆黒の影狼クロが、獲物の死角から音もなく影を縫って動きを封じ、透き通る青色の浄化スライム・リルが「プルルッ」と周囲の汚れを即座に分解していく。

彼らはもはや、どんな強敵が現れようとも「流れ作業」ではなく「一流の職人技」として迷宮の生態系を処理できる絶対の自信を身につけていた。

「ふぅ……。数日間の修練のおかげで、体が羽のように軽いですわ!」

エリスが『竜殺しの重剣』を軽々と肩に担ぎ、晴れやかな笑顔を見せる。

「ガッハッハ! これでどんな神話級の肉が出てきても、最高の鮮度を保ったまま食卓に並べられるぜ!」

「よし! 準備は万端だ。いよいよ第52階層へ進むぞ!」

トウヤの号令で、一行は黒曜石の大扉の前へと移動した。

未知の階層へ挑む前の恒例行事。トウヤが懐から『天啓の美食羅針盤』を取り出し、そっと魔力を流し込む。

彼らの視線が、期待を込めて盤面に注がれる。

……ピカァァァァァァァァァッッ!!!!

「おおおおおッ!!!」

「黄金色の光が、盤面いっぱいに広がっていますわ!!」

トウヤが羅針盤を握りしめ、ニヤリと笑った。

「大当たりだ! これだけ広範囲に黄金の反応があるってことは、またしても広大で、極上食材がウジャウジャいる『当たり階層』ってことだ!! 修練明けの最初の狩り場としては最高だぜ!」

「ヒャッハー! 早く開けようぜトウヤの兄貴! 腹が減って死にそうだ!」

ジンが双短剣を打ち鳴らして急かす。

「行くぞ!!」

バンッ!! トウヤが力強く第52階層の扉を押し開けた。

――その瞬間、扉の先から吹き込んできたのは、ひんやりと澄み切った涼風と、鼻腔をくすぐる『芳醇なキノコと木の実の香り』であった。

第52階層――『豊穣の紅葉連峰と清冽なる秋の川』。

見渡す限り、山々は燃えるような赤や黄金色の紅葉に染まり、足元にはふかふかの落ち葉の絨毯が広がっている。そして山間を縫うように、水晶のように透明で冷たい川が勢いよく流れていた。

まさに「実りの秋」を体現したかのような、美しい大自然の絶景。

「ピィィィッ!(兄貴! あっちの森に、すっごく美味しそうな匂いがするイノシシがいるよ! 川の中にもおっきな魚!)」

トウヤの頭上で、クーが上空から索敵を行い、念話で報告を飛ばす。

トウヤの【神眼の指揮】が、紅葉の森と清流の生態系を的確に解析していく。

「おい、お前らァァァッ!! ここは『秋の味覚の宝石箱』だぞ!!」

トウヤの歓喜の絶叫が、紅葉の山に響き渡った。

「あの落ち葉をあさっている巨大な猪! あれは『アングリー・エイコーン・ボア(激怒の団栗猪)』だ! 極上の魔法団栗どんぐりだけを食べて育ったせいで、肉質は最高級のイベリコ豚を遥かに超える! 脂身から信じられないくらい香ばしいナッツの甘みがするぞ!!」

「「「最高級の、イベリコ豚ァァァッ!!」」」

「さらに! あの森の奥を歩いている巨大なキノコの魔物! 『キング・マツタケ・トレント(松茸王の樹人)』だ! 噛めば溢れる極上の出汁と、秋の全てを濃縮したような究極の香りを放つ神話級のキノコだ!!」

「「「究極の、マツタケェェェッ!!」」」

「それだけじゃない! 川を遡上している体長五メートルの巨大魚! 『フォール・シルバー・サーモン(秋の銀鱗鮭)』だ! 産卵前で極限まで脂が乗っている上に、お腹の中には宝石のような『極上イクラ』がパンパンに詰まってやがるぞォォォッ!!」

「「「極上イクラァァァァァッ!!!!」」」

イベリコ豚、松茸、そして脂の乗った秋鮭とイクラ。

和洋問わず、食欲の秋の覇者とも言える極上食材のオンパレードに、美食家たちの理性が完全に紅葉の彼方へと吹き飛んだ。

「イクラ丼! どんぶり一杯のイクラと鮭の親子丼ですわぁぁッ!!」

エリスがヨダレを拭うことすら忘れ、大剣を構える。

「待て! いきなり暴れるな!」

トウヤが鋭く制止する。

「せっかく51階層で連携訓練をしたんだ! まずはあの『団栗猪ボア』の群れで、俺たちの新しい連携が通用するか、肉に一切の傷をつけずに狩れるかを確認するぞ!!」

「「「了解いただきますッッ!!!!」」」

六人と三匹が、静かに、そして恐るべき殺気(食欲)を完全に隠蔽しながら、巨大な団栗猪の群れへと包囲網を敷く。

「……行きますわ」

エリスがマグマの闘気を完全に内側に留めたまま、足音一つ立てずに虚空を蹴る。

「ブモォォォッ!?」

気づいた時には遅かった。

「クロ! 足止めだ!」

「ワゥッ!」

クロが影から飛び出し、団栗猪の足元の影を縫い付けて動きを一瞬だけ完全に停止させる。

「関節、いただきます! 【幻影歩法・千刃の舞・極】!」

ジンの双短剣が、まるで風のようにボアの急所を撫でる。肉の繊維を1ミリも傷つけることなく、神経だけを寸分の狂いもなく切断。

「仕上げですわ! 【渾身撃・寸止め・脳天落とし】!」

エリスの重剣の峰が、脳が痛みを感じるよりも早く、完璧な力加減でボアの脳天を揺らし、巨大な猪を深い気絶状態へと陥らせる。

「マリア! ルミナ!」

「「【ホーリー・アブソリュート・バースト(完全密閉版)】!!」」

周囲の紅葉を一切凍らせず、対象の猪だけを包み込む美しき純白の光。

カッ――――!!!!

ズシンッ……。

そこに残されたのは、外傷ゼロ、ストレスゼロ、鮮度100%のまま完璧に瞬間冷凍された『激怒の団栗猪』のブロック肉であった。

戦いの痕跡すら、リルが「プルルッ」と落ち葉の上の砂埃ごと浄化していく。

「……完璧だ」

トウヤが、その美しすぎる冷凍肉を見て震えた。

「肉質チェック……最高評価プラチナだ!! お前ら、連携訓練の成果はバッチリだぞ! 力任せに狩っていた頃より、肉の旨味が完全に閉じ込められてやがる!!」

「「「うおおおおおおおッッ!!!!! やったぞォォォッ!!!」」」

自らの修練が「究極の美味」へと直結したことを確認した瞬間。

彼らのタガは、今度こそ完全に外れ去った。

「よし! 連携の確認は終わりだ!! これより、第52階層の極上食材を根こそぎ刈り取る【秋の超絶・大収穫祭】を開幕するぞォォォッ!!」

「「「ヒャッハー!! 鮭だ! 猪だ! 松茸だァァァッ!!」」」

修練によって技を極めたキャンパーたちは、もはや迷宮の魔物にとって「天災」を超えた「神の理」であった。

清流に飛び込んだガレスとジンが、暴れる秋鮭サーモンを水しぶき一つ上げずに次々と神経締めし、トウヤが空間魔法で川から直接アイテムボックスへ【イクラごと】収納していく。

森では、エリスとクロが巨大なマツタケ・トレントを切り倒し、芳醇な香りを放つ極上キノコの山が築かれていく。

広大な紅葉の山脈を駆け回り、彼らは一切の妥協なく、しかし圧倒的な速度で「秋の味覚」をアイテムボックスの限界まで詰め込んでいった。

***

そして、夕暮れ時。

紅葉の山々が夕日に染まり、最も美しい景色を見せる清流のほとりに、【星の箱庭】の拠点が展開されていた。

「いやー、大豊作! マジで大豊作だぜ!!」

トウヤが、特大の土鍋と炭火コンロを前に、満面の笑みで腕まくりをする。

先日サイラスたちのウー〇ー配達で届いたばかりの『千年熟成醤油』や『幻の天日塩』などの高級調味料が、ずらりと並べられている。

「さあ食え!! 今夜のメインは二つ! まずは『激怒の団栗猪(極上イベリコボア)とキング松茸の究極・秋色すき焼き』!!」

ジュワァァァァァッ!!

熱した鉄鍋に団栗猪の分厚い脂が引かれ、そこに醤油と砂糖、そして山のようなどっさりとした松茸が投入される。暴力的なナッツの甘い脂の匂いと、松茸の芳醇すぎる香りが爆発した。

「そしてもう一つ! 獲れたての『秋王鮭の極厚バター醤油ホイル焼き』と、輝く『神・イクラの醤油漬け丼』だァァァッ!!」

「「「いただきますッッ!!!!」」」

ジンが、どんぶりから溢れんばかりに盛られたイクラ丼を、音を立てて掻き込む。

「――――ッッ!! うめぇぇぇぇっ!! プチッと弾けた瞬間に、濃厚な旨味が口の中で大津波を起こしやがった! 熟成醤油のコクがイクラの甘みを何百倍にも引き立てて……これ、噛まなくても飲めるぞ!!」

「んんんんん〜〜〜ッ!!」

エリスが、すき焼きのイベリコボアの肉と松茸を一緒に口に放り込み、両手で頬を強く押さえて天を仰いだ。

「豚のお肉が信じられないくらい甘いですわ! そしてこの松茸……噛むと中から極上の出汁が溢れ出して、お肉の脂と完全に一体化して……もう、私、この紅葉の山で一生暮らしてもいいですの!!」

「ガッハッハ! 鮭のホイル焼きも最高だ! フワッフワの身にバターと醤油が染み込んで……無限発酵蔵の冷えたビールが水みたいに消えていくぜ!!」

ガレスが樽ジョッキを一気に飲み干し、豪快に笑う。

クロとクー、そしてリルも、トウヤが用意した極上の「特製ボア肉入りペットフード」を夢中で貪っている。

連携訓練を終え、真の力(美しく狩る技術)を手に入れた『悠久の踏破者』たち。

彼らの後半戦の旅は、極上の秋の味覚と、醤油の焦げる香ばしい匂いと共に、かつてないほどの美味しさと大満足の笑顔に包まれて、華々しくスタートを切るのであった。

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