第19話 これが「恋」なのか自信が持てなかった ♀
活動報告にキャラクターヴィジュアルイメージを掲載し始めました。最近ハマってる流行りのAI生成イラストです。作風コロコロ変わると思います。都度更新予定です、もしよければご覧下さい。
色んな想いが一度に胸の奥へと押し寄せてきて、まるで嵐の中に一人取り残されたみたいに心がぐちゃぐちゃになってしまい、自分でもどうしていいか分からないまま私は彼の前で子供みたいに声を上げて泣いてしまっていた。
堰を切ったみたいに涙が溢れて止まらなくなってしまって、きっとすごく情けない顔をしていたと思うのに、それでも奏多君は困った顔をしながら優しく声をかけ続けてくれて、その声がまた涙を呼んでしまって、結局私は泣き疲れるまで彼の前でぐずぐずしてしまった。
泣き止んだ後もすぐに元の自分に戻れるわけもなく、ぼんやりとしたまま彼に背中を撫でられたり、落ち着けるように静かに話しかけてもらったりしているうちに、気付けば窓の外の光は夕方の色に変わっていて放課後の時間になってた。
奏多君の体調も良くなかったから、家の者を呼んで車で彼を自宅まで送り届けて、別れ際も何だか夢の中みたいにふわふわした気持ちのまま手を振って、私もそのまま自分の屋敷へと帰宅した。
そして今――
夜中に自室のベッドに丸まった私の頭に、突然の彼の告白が何度も反芻する。ちょっと、今日はゲームができる精神状態じゃない。
『俺は、愛芽莉たんが好きだ!大好きだ!!』
『俺は、愛芽莉たんの身も心も全部抱きたい!丸ごと全部、君の全てを食べちゃいたい!』
「~~~~っ……!」
思い出してはボッと顔が一気に熱くなって、枕に顔を押し付けてしつけて足もじたばたしてしまう。
すごく嬉しかった、信じられないくらい嬉しかった。あんなに真っ直ぐな愛の言葉を向けられたのは生まれて初めてで、胸の奥がぽかぽか温かくなって何度思い出しても自然と頬が緩んでしまう。
丸ごと食べられちゃいたいっ!
でもね――同時に分からなくなってしまったの、自分の気持ちが。心が混乱してる。
「わ、私は、奏多君の事が、好きなの……?愛してるの……?」
私は彼の獣のような視線に惹かれ、どうしようもないほど欲情してしまって、とにかく抱かれたかった。明らかに性欲が先だった。これって、どうなの?愛と言えるの?
これが「恋」なのかどうか、自信が持てなかった。
長い間、両親の愛を諦めて心に蓋をしてきた。そして愛を渇望する感情が、性欲に変貌してしまった。そのせいか、愛情や恋愛というものが良く分からなくなっている。そんな自分に今頃になって気が付いた。
体の関係は恋人同士の愛ゆえの行為、という常識は流石に知ってはいる。けれど正直、恋愛を意識して奏多君を見てはいなかった。そんなの度外視に、私は堪らなく彼に抱かれたかった、完全に性欲、何て淫らな女なんだろう。
それだというのに、彼が他の女を見ることには凄く嫉妬した。マグマのように怒りが込み上げてくる。奏多君を独り占めしたくて誰に渡したくない。これも性欲なの!?愛と性、これって何なの!?
「あぁー!自分の心が分からない!!」
『好きになってもらえるように頑張るから!いつか、俺に恋させてみせる!』
『だから、今は抱けない。自分を大事にして、本当に愛する人とこういう事はするべきだよ』
頭を抱えてごろごろ転がってると、彼の告白をまた思い出す。真剣な視線は私への気遣いと愛情に溢れていた。彼はきっと、そんな私に気付いていたから、あのように言ったんだ。何て、何て、優しい人……私を大事に、愛してくれてる……。
「……優しすぎるよ……」
トクントクンと、切なく心の音が響いて、ほわんほわんと頭が揺れちゃう。
でへぇ~と蕩けに蕩けていたら、コンコンと扉がノックされて使用人の美咲さんが部屋に入って来た。救世主のようなタイミング、彼女だったら絶対に答えをくれる!
「お呼びですか?お嬢様」
「今日は迎えに来てくれてありがとう!それでね、また相談があるんだけど……」
「はい、何なりと」
私はベッドから立ち上がって、いつもの落ち着いた微笑みを浮かべる彼女と向き合った。そして聞きづらい事を意を決して口を開いた。
「ええと、ちょっと悩みがあって……あのね……愛と性って、何かな……?どう違うの?」
「はい?……と、申しますと?」
「だ、抱かれたいと思っちゃう人が居るんだけど……それが恋愛感情なのか分かんなくて……!」
「……?……ああ、なるほど!」
「か、身体を求める気持ちが、それが恋心なのか分からないの……そういうことってあるのかな……?」
「ふむ……お嬢様も大人への一歩を踏み出されたのですね」
美咲さんは人差し指をピンと立てて言った。
「簡単な話です、愛情と性欲は表裏一体です。その感情は基本的には同じもので、切り離せません」
「そ、そうなの!?」
彼女は立てた指先で、横に一本の線を描いた。
「ただし、その割合があるのです。一つの横ゲージがあるとして、左端が愛情、右端が性欲とします」
「あっ……!」
「きっと、お嬢様は右の性欲寄りにそのゲージの針が傾いているのでしょう」
「な、なるほど……!」
ふふっ、と美咲さんは微笑みながら続けた。
「そして、このゲージは好意を持った相手にしか現れません」
「……っ!と、いうことは!?」
私、やっぱり奏多君を……!
疑問に曇っていた心が、ぱぁっと晴れた。
「男女の営みとしては、バランスよくゲージの中央に針があるのが一番いいんでしょうね」
「つ、つまり、私はおかしな状態なのね?」
「いえ、そんなことありませんよ、人ですから。針がどの位置に向くかは人それぞれです」
「えっ?」
「状況もあります、じゃないと浮気や不倫なんて成立しません。大人は皆、性欲を持つのです」
なるほど……!やっぱり美咲さんは優秀だ!
「だから、お嬢様はおかしくありません。愛情と性欲、それをひっくるめて恋心と言えます」
「じゃ、じゃあ、私の気持ちも……恋と言えるのね!?」
「ええ、そうです。何も悩まなくていいのですよ、そういうお年頃なのです」
「よかったぁ!」
美咲さんはにこやかに微笑んでくれた後に、悪戯っぽく尋ねて来た。
「そういえば、先ほどご学友の男子をご自宅に送りましたよね~」
「~~~~っ!!」
顔が一気に赤くなる、奏多君のことバレちゃった!……けど、美咲さんならいいや!
「うふふ、まあそれはさて置き、前にご相談された”意識されたいご学友”の件、効果は如何でございましたか?」
「えっ!?……こ、効果抜群でした……!」
「ふふっ、でしょう?それでそれで?どうやったんですか?」
「ええ~!?も、もうっ、聞きたいの~!?」
女子会のように美咲さんが聞いてきたので、惚気て身振り手振りで話しちゃう。
「ま、前のボタンを外して、こんな風に胸元大きく開いて、前屈みで見せつけたのっ」
「……えっ?そ、そんなに……!?ボ、ボタン外したんですか?」
「うんっ!彼ったら、目を白黒させて顔真っ赤だったわっ!」
「……!?」
唖然とした表情の美咲さんだったけど、恋バナが楽しくてウキウキしながら話を続けた。
「お弁当はね、お互いにあ~んして、食べさせ合ってるの!」
「へ、へええ……だ、大胆ですねぇ?」
「こんな風に、餌付けするように一口齧ったご飯を食べさせ合うのよ!」
「は、は、はぁ!?」
「おいしいお弁当、いつもありがとう!美咲さん!」
キャピキャピと話してたら、美咲さんが裏返った声で更に驚いた様に大きく目を広げて私を見てる。何か、化け物でも見たかのような表情で。初めて見る彼女の様子が可笑しくて笑っちゃう。
「……ええと、お嬢様……?お付き合いは、恋人関係は始まったのですか?」
「ううん、まだだけど……でもね、でもね、なんと今日!……告白されたのぉ♡」
「さ、左様でございますか……そ、それはようございました……」
「これも美咲さんのおかげね!ありがとう!」
こほん……と、美咲さんは小さく咳をして尋ねて来た
「ご学友の彼は、失礼ながら割と普通な男子に見えましたが、どこに惹かれたのですか?」
「え~と、やっぱり、視線かなぁ……視線がスゴいの……♡」
「し、しせん……!?」
「えへへっ」
動揺してる美咲さんを見るのは初めてだったけど……夜遅くまで生まれて初めての恋バナに花が咲いて止まらなくって、ずっと美咲さんに話を聞いてもらった。
そして眠りにつく前に、私は一つの決意した。
自分の心にちゃんと向き合って、彼への想いに自信が持てた時。
その時が来たら――今度は、私から奏多君に告白しよう!
静かに決意しながら、私は少しだけ大人になった気持ちで眠りについたのだった。
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