32話 竜王の許可
ミルフィを連れて竜の国へ戻った俺たちは、竜王にイグル王国での出来事を伝えた。
それを受け、竜王は鷹揚に頷いてみせた。
『ふむ、そうか。ではルーナにレイドよ、そのミルフィという水精霊の面倒をしっかりと見てやるといい。レイドに至っては竜の世話より楽と感じるかもしれんがな』
「その、構わないのですか? 勝手に連れて来た分、少しお叱りを受けるかと思っていたのですが」
そう尋ねると、竜王は不敵に笑ってみせた。
『古竜とは強き者。そして強き者は弱き者を守護するのが世の道理よ。それに精霊も古竜も同じく希少な種族同士、困っているなら助けてやるのが人情ならぬ竜情であろう』
竜王からミルフィが竜の国に滞在する許可を得た俺とルーナは、それからミルフィとロアナのもとへ向かった。
二人は池のほとりでのんびりと談笑しつつ、ミルフィが水を練ってあれこれと芸を見せているらしかった。
「ミルフィ凄い! あたしも魔術とか魔法とか使ってみたいなぁ〜」
「……猫精族は魔術が使えない分、力が凄いと聞いた。わたしからすれば、そっちの方が羨ましい」
「そうなの?」
ロアナが聞き返すと、ミルフィは服の裾を握って答えた。
「……わたしが強ければ、捕まらずに済んだ。精霊なのに不甲斐ない、へっぽこ」
やはりミルフィも奴隷として捕まっていたことには思うところがあるのだろう。
そして彼女は俺が来たことに気づいたらしく、こちらを向いて言った。
「……だからレイドには感謝している。へっぽこなわたしが頑張っても、あの首輪は外れなかったから」
「へっぽこって、そんなことないさ。誰だって最初は弱い。これから強くなっていけばいいだろう? しがない竜の世話係な俺だって協力するから」
俺も魔術を扱えるし、ミルフィの修行相手くらいにはなれる。
そう言うと、ミルフィは柔らかく微笑んだ。
「……ありがとう。そう言ってもらえると嬉し……っ!?」
ミルフィが話している途中、くぅとお腹が鳴った。
彼女は腹を抑えて、恥ずかしそうにしている。
「竜王様にミルフィの件も話してきたし、食事にしよう。それで服も変えようか、少し汚れちゃってるし」
ミルフィは奴隷として扱われていた期間、かなり乱雑に扱われていたらしく服も所々が汚れていた。
擦り傷も手足にうっすらと見え、そちらも手当てをしなくては。
「……レイド、ありがとう。魔力供給も含めて、感謝しかない」
「んっ、魔力供給……ああ、テイムしたから俺の魔力がミルフィに流れているのか」
テイマーはテイムした対象を強化するため、自動的に魔力を供給する力も持つ。
と言ってもほんの微量ではあるので、俺の活動に支障が出ない程度だ。
「……精霊は魔力の塊だから、魔力を供給されると調子も良くなる。今、久々に悪くない気分。テイムもこのままでいい」
「分かった、ミルフィがそう言うならテイムは解除しないでおくよ」
それからこの日は、ミルフィの身の回りを一日かけて整えていった。
ミルフィも顔色が出会った当初より良くなっていき、俺としても一安心だった。
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