33話 魔王軍四天王の襲来
イグル王国での出来事から一週間ほど経過し、ミルフィも竜の国での生活に慣れて来た頃。
「ふんっ!」
「せいっ!」
……ロアナとミルフィは修行だと言い、目の前で手合わせをしていた。
ミルフィが水で作り出した防壁を、ロアナの拳が力技で砕く。
バシャン! と水が爆ぜて粉々になるが、直後にミルフィが水弾を生成して射出。
ロアナがそれをバク転で回避し、距離を取る。
「こ、子供の手合わせじゃない……」
古竜の鱗を磨きつつ呟けば、その古竜も『同意』と首肯した。
『しかしレイドさん。あんたの歳も彼女らと数歳離れている程度では?』
「そりゃそうなんだけど、だからって俺があの子たちくらいの頃、あそこまでアクロバティックな手合わせはしてなかったなぁと」
苦笑しつつ二人を見守っていると、ルーナが息を切らせて駆けて来た。
『レイド、至急共に来て欲しいのですが構わないでしょうか』
「どうかしたのか?」
古竜の鱗磨きを中断して聞くと、ルーナは言った。
『竜の国のすぐそこまで、魔物の群れが迫っています。聞けば群れを率いている者は、魔王軍四天王と名乗っているとか』
「魔王軍四天王って、魔王のおとぎ話にある奴らか」
四天王とは文字通り、魔王直属の配下にして最精鋭とされる四人の魔族だ。
かつては魔王と共に大陸中を荒らし回り、壊滅状態にまで追いやったと聞く。
魔族は魔物でもなく猫精族のような亜人種でもないとされるが、一体どんな奴なのか。
「最近魔物が活発化しているのは魔王復活が近いからって説もあるくらいだ。その四天王が本物かどうか拝みに行ってやろう」
『一緒に来てくれるなら心強いです、ぜひ』
古竜の姿となったルーナに跨り、狭い渓谷を抜け、一気に竜の国を飛び出した。
するとオーガやコボルトの群れを前に、古竜たちや俺のテイムしたグリフォンたちが激しく威嚇し、互いに硬直状態となっていた。
そして魔物の群れの先頭に立っているのは、爆炎と扇情的な衣装を纏った赤髪の少女だった。
朱色の瞳の顔立ちはよく整い、すらりとした体つきに反し、胸元は大きく柔らかに膨らんでいる。
神竜帝国の宮廷と言えど、あそこまでの美人を探すのは難しいと思えるほどだ。
少女は好戦的な笑みを浮かべ、古竜たちを見据えて言い放った。
「妾は魔王軍四天王が一人、爆炎のアイル! 貴様らがイグル王国より連れ去った水精霊を今すぐに差し出せ。さすればその命、痛みを感じることなく散らしてやろう!」
「……何だ、ミルフィが目当てなのか?」
上空で滞空するルーナの背でそう呟けば、ルーナは『そのようですね』と答えてくれた。
「でもあいつ、目の前の古竜たちに夢中で真上の俺たちに気づいていない。となればだ」
『……やってしまいましょうかね』
互いに目を合わせ、にっと笑う。
意見が一致した俺たちの行動は早かった。
「封印術・蛇縛鎖!」
詠唱と共に魔力解放、魔法陣を展開。
遠距離型の封印術が起動し、アイルと名乗った少女の直下より、素早い蛇のように封印の鎖が絡みつく。
「なっ、魔力を封じる鎖だと!? 馬鹿な、一体どこから……あああぁ!!??」
『はぁっ!!!』
動きと魔力を封じられたアイルが狼狽えた瞬間、ルーナが上空よりブレスを叩き込む。
竜の国へ攻め込んできた不届き者に対し、ルーナは一切の手加減なしだった。
鎖に縛られた自称魔王軍四天王のアイルは回避もできず、光の奔流に飲み込まれてゆく。
……それを見た古竜たちの動きもまた、素早かった。
『野郎ども! 蹴散らせぇぇぇぇぇぇ!!!』
『『『おおおおおおおおお!!!!』』』
『『『フォーン!!』』』
若い古竜の声を皮切りに、古竜とグリフォンが魔物の群れへと突撃を仕掛けた。
最前列の魔物をブレスでなぎ払い、後続を爪と牙で引き裂き、尾を振るって撥ね飛ばす。
司令官を撃破された魔物の群れは、最早烏合の衆と化し、次々に葬られてゆく。
俺とルーナは、それを上空から眺めていた。
『我ながら見事な不意打ちでしたが、少々良心が痛む気もしますね』
「でも竜の国に攻め込んできた以上、奴らも不意打ちされたって文句は言わないだろう」
そう話しつつ、俺たちも上空から古竜たちを支援して魔物の群れを撃退していった。
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