鯰の拳士の矜持
「シャアッッ!!」
鯰の拳士の拳が、アオハルに迫ってくる。
先程の開示の念とやらが、拳に圧倒的な威圧感を纏い、アオハルの生命を奪うほどの威力を拳に乗って、顔面を穿つ筈だった。
しかし、アオハルは刀の柄で、拳を逸らし、そこから、突きを見舞った。
只の突きではない。
突きは、一太刀の筈なのに、無数の刃となって鯰の拳士に襲ってくる。
「ガッッ!!」
片膝をついたのは、鯰の拳士だ。
「貴様…強いな…我にここまで傷をつけるのは、まさか、ここまでの力量の持ち主とは…」
「きさんは、知らないだろうが、ワシはこの世で最も強い人を知ってる…その人に比べたら、きさんら、十二の角もワシの相手では、ない…まあ…それも一対一の話しだが…おい!!隠れてないで出て来い!!」
暗い道から、ヌッと出てくる人影が、一人…その者は、アオハル達が立っている、屋形船の屋根の上に降り立った。
「きさんは…見覚えがあるぞ、確か…二刀流使いの奴バイ」
「どうも、どうも、覚えにあずかり光栄です、某、毒蛇でございます、某の気配に感づくとは、流石、伝説の黒鬼でございますね」
「ふん、隙を見て、二人がかりでワシを抹殺する魂胆だったバッテン、状況が悪くなり、コイツを回収に来たんやろ」
「素晴らしい!流石です、流石です、こちらの企みもお見通しとは…では、どうします?このまま、某と戦いますか?」
腰に差した異国の二本の剣を抜くと、アオハルと睨み合いになる。
「シャムシールだったかのう、その見慣れない剣は…、きさんはそれに毒を塗って、以前、戦った時は、やりづらかったバイ」
「フフ…今度は、その命を手土産に、正義様から褒美をたんまり頂きますね」
「まてい!!!!」
鯰の拳士が間に、入った。
「毒蛇よ、我に恥をかかせるなよ!!この男は我が倒す」
その様子に毒蛇は、剣をしまう素振りをしたが、二本目をしまうかと思いきや、そのまま、鯰を背中から斬った。
「貴様ァァ」
「フフ…某、誇りとか矜持とか、嫌いなのですよ…それに、今、斬った、剣には肉体を強化する秘薬を塗っているのですよ、感謝してもらいたいですね」
「何処まで、我を愚弄するか…」
「愚弄?正義様に力を貰って、誇りとかを大事にするなんて、矛盾しているのですよ、目の前の相手を見なさい、あの忌まわしき黒鬼は、己の力のみで正義様と我らを相手にしているではありませんか…」
「そんな事は百も承知よ、我は全て、捧げて、この力を手に入れた…毒蛇よ、貴様みたいに、生まれから恵まれて、出世も思いのままの奴に我の何が分かると言うのだ、貴様のは正論では、ない、ただ自分の思い通りにいくポジショントークに過ぎん、我は貴様のそう言う態度が好かん」
「別に貴方に好かれなくても、ただ事実ですから…っでどうするんですか?戦うんですか?」
やるっと一言、アオハルに向かう、鯰
の拳士には、迷いは無かった。




