鯰の拳士の矜持弐
「シャァァ!!」
鯰の拳士の蹴りが、アオハルの顔面を狙い蹴るも、それを紙一重で避けるが、耳に掠り、擦り切れ、血が滲む。
強いな…アオハルは思った。
だが、肉体強化された相手を前にして、まだ、余裕がある事を、自分でも違和感がある。
こんなにも、戦いがやりやすいのは、異常ではないかと、自分が、感じてる違和感はなんだ?眼前の敵に集中しなければいけないのに…アオハルは、嘗ての師、塚原一刀斎の言葉を思い出す。
「アオハルよ、戦いとは常に苦節の道だと、心得よ、戦いにおいて、何が、大事か…人が人を斬るとき、それは、大事なものと引き換えに、失くす行為なのだ、斬りやすいとか斬って当然という心理は、自分が人から、それこそ鬼へと至る道だと思え…」
「しかし、師匠…師匠も人を斬ったでは、ありませんか…正義が率いる、あの大軍を、それでは…」
「左様、わしもその道に浸かっている、だがな、最後は、思いとどまらないと、いかんとよ、それが自分が鬼になったとしてもじゃ」
「鬼になっても…」
「それが戦いにおいて枷になっても…わしらが生きている内にはだな、正論を振りかざして、人殺し、人斬りと呼ばれても、反論する事に意味はない」
塚原一刀斎の言葉がアオハルの思考に割り込んでくる、こ、これは、何だ、アオハルは、動揺してる。
「混乱してるようだな…黒鬼よ、我の能力の内、鯰の電気操作よ、本来なら水場でこそ真価を発揮する技だがな、過去の記憶とかを、今、この瞬間に割り込ませる…先程、我の蹴りが掠ったときに仕込ませて貰った、我も、最早、なりふり構わん、悪いが勝たせて貰うぞ!!」
「そうか…そうだったのか…きさんの能力か…いや、大事な事を思い出しくれたよ、鯰の拳士よ、ワシはきさんの貪欲さに敬意を評す」
一礼し、アオハルは刀を鞘にしまうと、居合いの構えを取る。
「きさんの矜持が勝つか、ワシの執念が勝つか、この一刀で、示す!」
その様子を見ている、毒蛇が笑っていた、この男にとってはどちらが勝とうとも、どうでも良かった、あわよくば、アオハルを倒せれば僥倖であり、鯰が勝てば、手負いのコイツを始末し、正義から褒美を独占する腹づもりだ。




