人外の生贄肆
「ちょっとお客さん、いきなりは入れませんよ」
入ろうとすると、老婆がアオハル達を引き止める。
何でも初めての客は引手茶屋を仲介してから、遊女とは遊べないらしい。
黒木は例の件で、遊郭にも情報が入ってるらしく、もう上客としては扱えないみたいだ、黒木も頬かぶりや、以前とは違う雰囲気であちらにも気取られてないみたいだ。
引手茶屋に移動して、そこでどのお店に行くかと、大見世、中見世、小見世のどれだいと聞かれ、アオハルは、黒木に
「黒木さん、どれを選ぶとですカ」
「俺は、中見世だったな、散茶の遊女に入れんこんでいてなぁ…東雲という遊女にな、彼女は、呼び出しにも劣らぬ、器量でなぁ、知識も豊富だったな」
懐かしそうに、それでいて諦めと哀愁を漂せていた。
「一応、その人を指名してみるとよかでス」
「ああ」
アオハルに促され、引手茶屋の人間に指名を言い、中見世のお店に入り部屋まで案内されると、何と現れたのは
「ああ……東雲…」
本人だったみたいだ。
「もしや…黒木様…でごさいますか?」
東雲は口を覆い、黒木を何とも形容しがたい様子で見ていた。
「君は……密告したのだね」
「…」
「何とか…言えよ、俺はこの様だ、たんまり報酬も貰ったのだろう」
「お金が必要だったのです…」
「それなら、言ってくれたら…俺の力で幾らでも」
「その…あの…実は…何とお伝えしたら…」
「ああぁ!!」
「黒木さん、彼女の言い分も聞かんとバイ」
「うるさい!!…いや、俺が言えた立場ではないな、スマン、東雲よ、何故…」
「正義公です」
アオハルは眉間に皺を寄せ、黒木は空いた口が塞がらなかった。
「正義公への献上をご存知でしょう…それが…ウチの妹に目を付けたようで…まだ、十歳になったばかりなのに…あの子を守る為には…お金が必要だったのです…それが、誰かを不幸にしても…黒木様…貴方が恨むのは、当然だと思います、その腰の刀でウチを斬られたらいいのです」
「正義…何とも度し難い…やはり、二年前に…」
腰に差した刀を力いっぱいに握りしめるアオハルは…その顔に憎悪を滲ませている。
「献上…五年毎に、正義が指定した地域、場所から正義が気にいった女を献上する、そして献上した所には、正義の恩恵を享受する、正に生贄…」
「そうです…正義公の噂を聞き及んでます、大奥でも、正義公の猛りを鎮める…おぞましい…あんな化け物に…」
そう言った瞬間、部屋に
「無礼者!!」
と誰かが押し入て来た、額には角を一本生やした鬼如き風貌の者達だ。
「きゃあああああ」
叫ぶ、東雲をその者達は、斬りかかると、その斬撃を受け止める者がいた。
アオハルだ。
「鬼和番だな…こんな所にも潜んでいるとは、趣味の悪い、ワシは、今、気分が悪いんや、引かねば…」
アオハルから鬼和番と呼ばれた、集団は部屋に七人いる、その一人が
「引かねば、どうだと言うんだ、我らは正義公の名誉ある天下の鬼…ぎゃああああああ」
アオハルは受け止めた刀を流しながら、そのまま、一回転し、鬼和番の一人を袈裟斬りにした。
「正義の使い魔め、ワシ、いやこのオレが、この世から消し去ってくれる!!!!」
アオハルは、刀に付いた血を払い脇構えに構えた。




