塚原アオハルの過去弐
塚原アオハルは頬を引っ叩いた時、昔を思い返していた。
二十一年前、霞姫の母であり、血が繋がってないアオハルを引き取ってくれた人がいた。
その人は、霞姫とアオハルを連れて、知り合いである塚原一刀斎の道場に流れ着いた。
道場に、着くとその人は、塚原一刀斎の前に正座をし、お辞儀をする。
「どうか…この子達を引き取って頂けないでしょうか…塚原殿…」
「頭を挙げてくだされ…事の顛末は聞き及んでいます、御年寄からね、ワシの道場までわざわざ使いまで出してな、陽光院様」
陽光院、霞姫の母であり、アオハルにとっても実母に等しい人の名前であった。
「陽光院様、貴方様がワシの所に来たのは、上臈の入れ知恵でしょうが…率直に申します、その判断は正しくもあり、間違えています」
「左様でございますか…天下の剣神、塚原一刀斎ならば、正義も手が出せないと聞き及んでいました」
「正義に勝てるか否かと聞かれれば、勝てるでしょう…っが、問題は…その後です」
「と申されますと? 」
「人は争う生き物です、確かに正義の下、無辜の民が犠牲になっています…然し…正義を討ち、権力を今のバクフが取り戻すとして…各地のダイミョウが、おとなしくしてるでしょうか…この千年も正義に服従してきたバクフを腑抜けと断じ、革命が起こるでしょう…その際にまた多くの血が流れるのは、自明の理でしょう…」
「そのような…」
「然し、希望もあります…次代の若者です、そちらの幼子が成長し、成人し、正義の驚異になれば…或いは…」
「どうだと言いたいのです…」
「この年寄りが、力任せに倒した世より、若者が悪知恵でも、倒した世ならば、如何に混沌とした世でも活路を見出せる…もし革命でも起きれば、若者が主導であれば、良き世になるやも知れません」
「矛盾してませんか…」
「左様、その矛盾も人の世にありふれたもの、二枚舌もある国もあるぐらいです、この年寄りには、次代の若者を育てるのが、一番の責務だと心得てます」
塚原一刀斎は、そう言い終えると、陽光院達を道場に匿う事になったのだ。




