霞姫、奪還作戦弐
アッハハハハとこだまする、鯰の笑い声を受けて黒木の一言が、静止させる。
「知っているよ、結界の事は、だから…対策も打ってある」
「何だと、貴様如きが知っている訳が…」
「十二の角の一人、猿の呪術師の結界、縄張りの陣は、特定の人物、正義を除いて発動する、結界に反応しなくなるのは、この紋所だよな? 」
「何故、それを!?」
黒木が出したのは、三葉葵の紋所の印籠だった。
「俺は勘定所の二席だが…特別にね、貰ったんだよ、勘定奉行からな、一つだけではない、三つある…まあ、貰った理由としては、風邪薬の常備薬としてだな、容れ物がいるからと、この印籠を貰った」
「成る程、三葉葵の紋所を刺繍された衣類を着た、城の者には、結界は反応しないので、それと同様の効果を持つ、その印籠を懐に忍ばせれば良いと…流石だ、黒木殿」
「城に勤めた頃、ある日な、三葉葵の紋所を刺繍してない袴を着た部下がいてな、案の定、十二の角の奴が現れてな、毒蛇だったか、奴が、部下を見るや、舌打ちして、侵入者じゃないことにご立腹だったよ、然しだ、鯰よ、お前は下手をうったな、あくまで、俺はこれを仮説で出したのを…お前が驚いた、お陰で確信に至れたよ、ありがとう」
黒木の皮肉に、鯰は、チッと舌打ちをした。
「あとは…黒木殿、今、頬かぶりしているが、それをとってはくれぬか、髷を力任せに引きちぎってだったな、武士として恥ずかしいかも知れぬが」
「ああ、構わぬよ、もう俺は、只の黒木貞治だから…武士ではないし」
「うむ、実はだな…髪がまだ、残ってる部分も剃ってだな、僧侶の格好をしてくれないか」
「紀数の旦那さん、俺に奥坊主のふりとして、城内を散策させるつもりかな」
「話が早い、そうだ」
「然しだな、紀数の旦那さん…先程、言いかけたように、霞姫様や菊は、大奥にいるんだろう、俺や塚原君がいては、かえって、邪魔ではないだろうか? 」
「姉上は、特別に大奥とは違う場所にいるタイ、以前、行った時がそうやった」
「そうなのか? それでは…」
「コイツが言った事が事実なら、城の表、中奥、大奥の中奥のショウグンの徳河慶信公の寝室に軟禁されとるはずバイ」
「そうね、アオハルの言う通りかも…御庭番の皆も言っていたし」
「ようし、ならば、ようやく実行するぞ、手筈はさっき言った通りだ、アオハル君、黒木殿、紅葉君」
紀数が、先程の段取りをする為、当月の中旬から準備し、下旬に作戦を決行するとアオハル達に言った。




