黒木貞治の憂鬱
黒木貞治は、困っていた。
この場にいいのだろうかと…自分が出来る事など、もうないのでは、ないかと。
腕はそこそこだが、塚原アオハルや紅葉っと言った、面子には、圧倒的に劣るし、財力は、紀数がいる以上、自分はお払い箱ではないかと。
「塚原君、泣いてる所、悪いんだけどさ、俺は…俺に出来る事は、もう無いと思うんだ、つまり、お役御免になるんじゃ…ないかと思うんだよ」
「うん、黒木さんは、この先いない方がいいかも」
「えっ!?」
「これからは、十二の角と本格的に戦うし、ここまで、よく付き合ってくれた、黒木さんは」
「……」
「でもね、黒木さんのお陰で、紀数さんやこうやって紅葉とも合流出来たとワシは思っとる、復讐もいいが、それだけが人生ではないかも知れない」
「……」
「初めて会った時、黒木さんは「俺には死しかない」って、それだけは、改めて否定する」
「……」
「ここまで言っといてアレだけど、黒木さん、あんたがいないと実は困るんよ…実はね」
「えっ、そうなのか? 」
「そりゃ、そうバイ、城には、以前潜りこんだ時、そこには、十二の角以外にも、働いている侍もいたバッテン、彼等との戦闘は、出来うる限り、避けたい、そこで黒木さん、あんたの出番タイ」
「俺がか…」
「いくら、正義の圧政下でも、元同僚は、斬りにくいと思うんジャ」
「それは…無いよ…彼等だって生活かかってるんだから…俺ぐらいなら彼等は斬るよ」
「我もそう思う」
鯰が、会話に割ってはいる。
「黙らっしゃい、きさんは、人の情を軽く見すぎジャ」
「ほーう、正義様の圧政に屈した、今のバクフの体たらくぶりは、どう説明するつもりだ、人は所詮、権威に屈せれば、あとは家畜も同然よ、人の情などつけ入る隙はない」
鯰の言葉に黒木は表情が曇る、確かに、所詮、自分など…
「千年続いてる圧政、それは、揺るぎようのない事実、だが、その圧政下でも、抵抗し、融通を利かし、紀数さんのような商人とも繋がりを作った…人たらし貞治、そのような人もいた事も事実」
「あっ!」
そうだった、そんな渾名も確かに付けられていたな、黒木は、思い返す。
貞治! 貞さん さっさん さっちゃんって呼ばれていたな、この青年は、確か、触った相手の心が分かると言っていたが、本当だと黒木は改めて思い知らされた。
「笑わせるなよ、鬼殺しよ、コイツは圧政下とは言え、自ら、所属している組織で汚職していたに過ぎん、抵抗? 融通? 繋がり? はっ、人の情とやらは、不正をする為の方便に聞こえるな、俺は認めんぞ、こんな奴」
「きさんに、認められようが、認めらないようが、関係ナカ、あるのは、人間同士の信頼よ」
アオハルは、黒木の両肩に手を置き、顔を覗き込む。
「自身の無力を誇ってはいけません、あんたの力を借りたい」
「俺は…俺は…俺は、正義に復讐したい!! 塚原君、改めて微力ながら、手伝おう!!」
黒木は、自身の尊厳を取り戻す為、そして…なにより、家族の為、復讐の炎を燃やし、誓った。
こ の 身 が ど う な ろ う と も 達 成 し て み
せ る と




