鬼の目にも涙
「じゃあ…城の中身とかは、変わってないんやな? ワシが二年前の襲撃した時と」
「ああ、変わってない、正義様は変える必要はないと、おっしゃってたからな」
屋形船の広間で縛られている鯰は、アオハルの尋問に答えていた。
アオハル、黒木、紀数、紅葉がその場にいる。
「貴方は、十二の角の中で、どのくらいの強さなの?」
「さあな、中の上くらいじゃないか、我より明確に強いのは、龍の剣士、鷹の侍、兎の闘士の三強だな」
「ワシが戦った事あるのは、鷹の侍ジャナ、アイツは、確かに強かった、しかも本気で戦っていない感じやったし、まだ、手の内を隠しているバイ」
「そうだろうな、あやつは、気まぐれの気性がある、黒鬼、いや、鬼殺しか、貴様は、怖くないのか? これだけの猛者がいて尚も挑むのか? 」
アオハルは、真顔で
「怖い、恐ろしい、だが、姉上の身を考えると、そんな感情は、引っ込んでしまう」
「ちょっといいかい? 」
紀数が手を挙げ、疑問を投げつける。
「その…十二の角とやらは、なんの為にいるんだい、正義だって強いんだろう? あれだけの人外が何故、そんなに組織を作るんだい」
「正義様も恐れているものがあると、言う事さ、それこそ、二十年前から始まった、正義様が徳河慶信に布くように命じた女人献上令も正義様が女と交わる事で、生命力増幅する為に布いたのだ…大奥にもいない、処女で生命力が強いおなごを選別してな、鬼和番も十二の角もそれこそ、めぼしいおなごの選別為に作られた経緯もある」
「慶信公は、苦渋の思いで、布いたんだけれどね…わたし達、御庭番も全国を回って、人身御供であるこの制度を崩す為、そのめぼしい女の子には、路銀を渡して旅に出させてるわ」
鯰の発言に紅葉は被せるように言った。
徳河慶信への忠誠心がそうさせてたのだろう。
「あとよ…アオハル君、君は、触った相手の事が分かるって能力は…いや、聞かんでも良いんだろうが、気になるんだ、生まれつきなのかい? 」
「いや、四年前に修業してた時に、山伏のおっさんに教えてもらったんよ」
「そうなのかい、いや、私も身につければ商売が捗ると、思ってな…いや…そんな…そんな目で見ないでくれ」
「紀数さん…商売魂が逞しいのは、いいけど、これを身につけるのは、中々、難しいとよ…それに、誰でも分かるわけじゃなかと」
「分かった、分かった、そんな目で見ないでくれ、これをあげるから」
紀数は、アオハルの訝しむ目線に動揺し、アオハルに何か渡した。
それは、羊羹だ。
「これは…金時屋の羊羹じゃなかバイ」
「よく分かったね、食べた事あるのかい? 結構珍しい羊羹だけど」
「あるとよ…昔、師匠から…姉上と一緒に食べた…」
アオハルの目から、涙が溢れ、涙が羊羹にかかる。
「ふん、鬼殺しが鬼の目にも涙って奴か…」
鯰が皮肉混じりに呟く。




