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死にゲーに転生した僕、自分だけでも助かろうとしたらボスキャラたちに好かれた………いや、何で?  作者: オク
第三章

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第四十五話 真なる宴

(何が起こっているんだろう)


 いきなりエスに連れていかれたと思ったら、フロントで【帝王】がなんか戦っていた。『白夜』、『暗黒騎士』、『六華』、『ハンドレッド』と一部の騎士団と滅茶苦茶殺し合ってる………いや、何で?そこの四組織よ、君等は敵対関係じゃなかったのかい?どうして徒党を組んでいるんだよ。


 それに騎士団諸君、こんな状況で仲間割れは止めてほしい。最も、常日頃から仲間割れをしている【帝王】が一番言う資格ないんだけどね。てか、カネサダ達は?幹部いればこの状況もどうとでもなる………あっ、なんか大鎌持ったのと戦ってる。


 おーい、さっさとそいつ倒して加勢してくれー。もう僕、今日は全身筋肉痛確定でしんどいから、何もしたくないんだ。任せっきりで申し訳ないんだけど(通常運転だったわ)、どうにかしてくれー………。


「………全く、情けないわね。最も、私もその一人なんだけど」


 隣にいたエスが、ポツリと呟き鞘から剣を抜き放った。


「オーマ。私は殺り合ってくるから、後はお願いね」


 「何のこと?」と聞くよりも先にエスが飛び出していった………あのー僕の護衛は?ここにも本当は来たくなかったのに、エスが無理矢理引っ張ったから渋々ついてきたんだよ?


 『王族《ロード・》の盾《シールド》』もない、『帝王《キングス・》の槍《ランス》』もない、丸腰同然の僕に何をしろと言うんだい。そもそも僕、筋肉痛で碌に動けないから『帝王の槍』を杖代わり支えているんだよ。そんな僕の思いも届かず、エスが急に戦場全体に響き渡るように叫んだ。


「私達の最強が来たんだもの。アンタに、アンタ達に勝ち目はない―――傾聴なさい、【帝王】よ!偉大なる御方からの御言葉よ!!」


 僕を見つめたエスに導かれるよう、その場にいた全員が僕を見てくる………しんどいっ!いきなり注目されると緊張するからやめて!!僕はできることなら目立たず、波風立てず、平穏に生きていきたいんだ!!心の中で切実な願いを叫んでいると、【帝王】に所属している冒険者が揃って僕に跪いた。あの、本当に勘弁してほしい。僕はそんな立場じゃないから。


(ど、どうしよう………)


 皆、僕の言葉を待っている感じなんだけど………現在進行形で戦闘中なの分かってる?僕のことなんて無視して、戦っていいからね?脳内が完全にパニックに陥っている中、僕はあることを思い出した。そうだ、僕にはアイツがいる!普段は疎ましく思っているけど、こんな状況だからこそ活躍するアイツを!


「王命を下す―――疾く蛆を片付けろ、戦士共(ゴメン、誰か医務室連れて行ってくれる?)」






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――






(馬鹿な………)


 『白夜』所属、ボス直属の親衛隊長であるマラムは、目の前に広がる悪夢のような現実に言葉を失った。終始優勢だった、『白夜』、『暗黒騎士』、『六華』、『ハンドレッド』をはじめとした【帝王】のクランハウスを落とす為に集められた合同部隊。


 忌々しい【帝王】の居城に泥を付けることだけを目的とし、わざわざ『白夜』から見れば取るに足らない弱小組織や、かつては敵対関係であったが、すっかり落ちぶれ壊滅間近だった『白夜』と並ぶ列強組織を引き込み、この大部隊を編成したのだ。当然、数だけで落とせると考えてはいなかった。


 だから、あの不気味な『神の使徒』などと名乗るペトロを部隊に入れ、ペトロから渡された天授物《アーティファクト》を存分に使った。とある吸血鬼の根城から持ち込まれた『支配《マリオネット・》の紅石《ジェル》』で、騎士団を操り不意打ちを仕掛け、精密機器を抑え込むことができる『抑制刃』で【王城】に備え付けられていた砲台を無力化し、事前に指定された対象以外を弱体化させる『失墜《アベースメント・》の砂時計《ウェーラー》』で【帝王】の動きを遅くさせた。


 奇襲に成功、地の利は封じた、理不尽なくらい強い【帝王】の面々も明らかに精彩をかいていた。負ける道理など、ないに等しかった。


「そうだ、負ける筈がない………だというのにッ!!」


「どこを見ているッ!」


「くたばれ!!」


「グゥ………ッ!」


 背後から襲いかかってって来た【帝王】の攻撃を間一髪で避ける。槍を持ったエルフの女と斧を持った猪人の男。幹部でもないこの二人だって、つい先程までは後手に回っていた筈だ。それがどうして―――。


「偉大なる王の命。応えられないものに、王の手駒を名乗る資格なし」


「不甲斐ない我等の為に、あの御方はわざわざ戦場に御姿を見せられた………ここで奮起しないものなど、【帝王】には誰一人としているものか!!そうだろう、レミリア!?」


「うるさい。少し黙れ、グラン。貴様の声は癇に障る」


「大声を出すことの何が悪い!?サバルト様とガラン様は常に声を張っているぞ!!」


「き、貴様!それを持ち出すのは禁句だろう!?」


(な、何なんだコイツ等………?)


 いきなり目の前で喧嘩し始めた………舐めているのか?だが、お陰で完全に注意が逸れている、今なら逃げれる筈。この戦は完全に負けだ、今後の為にもさっさと退くに限る。足の筋肉に力を入れて、一目散に逃げようとする。しかし、敗残者を易々と見逃す者など、【帝王】には誰一人としていなかった。


「逃がすわけなかろう!」


「なっ!?」


 地震でも起きたかのように大地が大きく揺れた。足場が不安定になり、踏ん張りがきかずにいると、地面が隆起した。石畳が割れ、空中に放り投げられ―――氷槍が心臓に突き刺さった。弓矢で狙いすまし方のような一射に、驚く間もなくマラムの心臓は凍り付いた。


「間抜けめ。幹部の方々に遠く及ばずとも、私が塵風情に後れを取る訳ない」


「良い連携だったぞ、レミリア!やはり我等は最高の相棒《パートナー》だな!」


「ふ、ふざけるな!?誰が貴様などと………」


 【吹雪《ブリザード》】レミリア・ネヴァーデル。グラン・クェイク【地震《ザルサール》】。どちらも【帝王】の幹部候補として名を連ねる、二つ名持ちの古参冒険者。本来、二つ名を持っている冒険者は珍しくとても貴重であり、冒険者ギルドが有能であると認めた証だ。


 他派閥ならば間違いなく幹部入り、下手したらクランマスターにもなれる程の実力があるのにもかかわらず、この二人は【帝王】の平社員という立場でいる。この二人以外にも、【帝王】外ならば今より良い待遇をされるであろう冒険者が多数いるが、誰一人として【帝王】から抜けようとしない。その理由はただ一つ。


「王の言葉がなければ、共闘などしていない!変な勘違いをするな!!」


「わざわざ言われなくとも、分かっている!ほら、次行くぞ!」


 オーマ・グライアンド、彼の役に立つためだけに彼等彼女等は【帝王】に所属している。【帝王】の幹部でもない構成員達の在り方は富と名声よりも、御恩と奉公を取ったとでも言うべきだろう。意気揚々と次の獲物を探し出すグランの後を、微妙な顔をしたレミリアが不服そうに追う。


「だ、ダメだ………勝てない!!」


「は、速く逃げて―――」


「「「逃がすか蛆虫共!!」」」


 【帝王】の本気を知った連合軍は、戦意を失い我先にと逃げ出そうとするが、それを見逃す訳もなく。散々好き放題に暴れた連合軍を斬り、突き、燃やし、凍らせ、潰し、打ち抜き、貫き、穿ち、両断。決して腕を止めることなく、操られているであろう騎士団を除き、全てを殺して回った。その圧倒的な蹂躙を前に、ここに来るまでずっと【帝王】を見下していた騎士団は、顔面真っ青になり、中には失神するものまで現れた。


(((もう【帝王】馬鹿にするのやめよう)))


 ギリギリ意識を保っていた残りの騎士は、心の底から【帝王】に歯向かうことを辞める誓いを人知れず立てた。


「………大勢は決した。後は―――」


 連合軍に嬉々として飛び掛かるグランを後方から見つめながら、もう一つの戦場に目を向ける。『神の使徒』と【剣姫】、【刃葉】、【聖女】、【雷拳】の激しい攻防戦。今はまだ届かない戦い、あの戦場に立てない自らの実力不足を心底悔やみながら、レミリアは目を細める。


(いつか、あの領域に至る。だが、今はそれよりも―――)


「おいレミリア!お前も暴れたりないだろう!こっちに来いよ!!」


「………うるさいぞ、野蛮な猪がっ」


 不愛想な自分に付き纏う、あの宿敵との決着をつけるのが先だ。悪意が何一つ含まれていない嬉しそうな呼びかけに、悪態を付きながら自分でも口角が上がっていることに気づかず、レミリアはグランの横に並び立つのだった。

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