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死にゲーに転生した僕、自分だけでも助かろうとしたらボスキャラたちに好かれた………いや、何で?  作者: オク
第二章

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第十四話 灰狼は駆ける

「遅いんだよ、鈍間共ッ!」


 罵倒と共に槍を振るう。襲い掛かって来た二人の犯罪者を血に染め上げる。白装束を着ているせいか、倒れ伏した敵の血の滲みが余計に目立つ。倒れ伏した敵を一瞥し再び駆ける。何故こんな状況になったのか、時は少し遡る。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「オーマお兄ちゃん、遅いね………」


 フェリスが何処か不安げに言葉を溢す。ボスが買い出しに行ってから結構な時間が経った。カネサダは既に戻っているが、ボスは一向に帰ってこない。


「………何かあったのかな」


「御屋形様のことです。問題ないとは思いますが………」


 ルナとカネサダは心配そうに眉を顰めている。それは俺も同じだ。ボスは、最強だ。実力者揃いの【帝王】のトップに君臨できるのは、実力は勿論、知性、カリスマ性、運も全て最高峰のレベルだからだ。強者特融のオーラこそ纏っていないが、それは全てブラフだ。


 過去、【帝王】全員が戦っても無理だと判断した戦があった。その戦いを制したのは、オーマ・グライアンドだった。その功績から、本来なら名付けられない、特別な意味を持った【英傑】の二つ名がつけられたのだ。あの光景は、今も【帝王】全員の脳裏にこびりついて剝がれない。


本人は、「アレはズルしたって言うか………僕は大したことしてなくて………(天授物アーティファクト頼りだったとは言えないよなぁ)」なんて自分はまだまだだと、常に上を向く姿勢を見せていた。自分の力に満足せずに努力を怠らない姿を見て、改めてこの人に付いていきたいと思わされた。」それほどの力を持ったボスの事を疑うなんて、馬鹿馬鹿しいと一笑するところだが………。


「………クソッ」


 不安だ、どうしようもなく不安だ。戦いにおいては完璧なのだが、ボスは何処か抜けているところがある。数年の付き合いだからこそそれを知っている、故に不安なのだ。お人好しだから人助けをしている可能性もある、顔が広いから知り合いに絡まれている可能性もある。


(いや、もしくは―――)


 その思考に行きついた時、爆発音が聞こえてきた。それは自分の考えが間違っていなかったことを証明していた。舌打ちと共に既に行動に移していた。何が起こったのか分かっていなさそうなフェリスを背負い、最高速でクランハウスまで送り届ける。


「フェルス殿、ここら一帯は我々が」


「………直ぐ片付けるよ」


 最後にカネサダとルナとそんなやり取りをして、クランハウス【王城】へと駆ける。建物の上を飛び交う中、地上に目を向けると白い装束を着た集団が暴れ回っていた。いきなり戦場と化した王都、常人なら慌てて戸惑い、無様を晒すだろう。


 だが、俺達は、【帝王】は違う。何時如何なる時も冷静で行動する、それができないものに、未来を見通すと言われている【英傑】、オーマ・グライアンドについていけやしないのだから。そんなことを考えながら、【王城】に着くと、そこもすでに行動を起こしていた。副クランマスターのロゼが外に出て、クランメンバーに指示を飛ばしているのが遠目に見えた。


「ロゼッ!」


「ッフェルスさん!」


 鋭い声に反応するように、ロゼが呼び返す。俺の姿を確認するや否や駆けてきた。背中にいるフェリスを見ても驚くことなく手慣れた手つきで保護する。矢継ぎ早に互いの知っている情報を共有し合う。


「状況は?」


「軽く見ただけでも五十は超えていた、コレが王都全体で起こっているんだとしたら、三百はいるだろうよ」


「犯罪組織にしては多い………よりによってこのタイミングでっ」


 ロゼが苦虫を嚙み潰したよう顔で吐き捨てる。そう、【帝王】の大半が、今王都に居ないのだ。ダンジョン遠征、依頼などで誰もが外に出ている。普段なら顔を見ただけで殺したくなるのに………こういう時ばっかりはいないと面倒だ。


「動ける幹部は俺、ルナ、カネサダ………後誰がいる」


「サバルトさん、エスさん、スロートさん、エレンさん、ザックさん、ソフィアさん、クロスさん、ゼクスさんだけです」


「チッ、半分もいねぇのか!」


 ボスとロゼも含めても半分にギリギリ届いていない。クソめんどくせぇ、この規模のテロ、鎮めるのにどれほどの時間がかかるのか。


「他のクランとも共闘すればどうにか―――」


「あの使えねぇ連中に期待するだけ無駄だ、俺達だけでどうにかする」


 その時、懐から何かが震えた。幹部のみ持つことを許されたアーティファクト、『通信石』。効果はその名の通り、同じ『通信石』を持つ者同士との会話を可能にする。ボスからの連絡か、と急いで黒光りする石を取り出す。


『聞こえるかい、【帝王】諸君』


『あぁ?何の用だクソ剣士』


 聞こえてきた声は、望んでいた人の声ではなく―――忌々しい相手だった。【帝王】の幹部の大半から嫌われている、幹部の一人【剣聖】クロス・レイリウス。


『何でアンタ?オーマじゃないの?』


『オーマ不在の今、私が指揮を執る。それだけさ』


『あぁ?テメェがトップ張る理由は何だ?』


 エスと俺、クロスを目の敵にしている俺等が真っ先に喰いつく。ボスの代わりだ?舐めた事抜かしてんじゃねぇぞ。


『オーマにはさっきから通信を取ろうとしている。だが繋がらない………となれば、オーマから「僕の不在時には指揮を任せる」と言われている私がやるだけさ』


『『『チッ』』』


 俺の舌打ちと呼応するように他の奴等も舌打ちをするのが聞こえた………気持ちは同じか、それはそれで気色悪ぃ。ボスからの信頼が厚い、それだけでムカつく。ボスに相応しい戦士は、横に立つのはただ一人でいい、それが全員の共通認識だからだ。だからボスに頻繁に頼られるクロスを皆揃って嫌っている。最も理由はそれだけじゃないが。


『フェルス、君は王都全体を回ってくれ。敵の正確な数を把握したい』


『何で俺にやらせんだ、ゼクスにやらせればいいだろ』


『ゼクスが得意とするのは諜報、だが隠密行動が必要とされていないこの状況では、足の速い君が適切だと判断したまでさ』


『………クソがッ』


 腹が立つ、アイツの良いように利用されるこの状況に。怒りで頭が熱くなる。だが、今ばっかりは従おう。妹の不安そうな顔を取り除く為にも。ただ一つ、言うとするのならば。


「後で殺す」


「………何でウチの幹部はこんなに仲が悪いんでしょうか」


 理由は分かっているけど、とロゼは溜息を吐きながら一瞬で姿を消したフェルスのいた後を見ていた。

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