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死にゲーに転生した僕、自分だけでも助かろうとしたらボスキャラたちに好かれた………いや、何で?  作者: オク
第一章

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第十一話 闇夜姫/生命の危機()

 幻想の時間が終わる。在りし日の温かな記憶から目覚め、冷たくなるのを感じる。


「ルナ嬢、いえルナ様。我々の話を聞いていただきたく―――」


「今、吸血鬼は絶滅の危機に瀕していて―――」


「どうか、我等の光となって―――」


 私の周りを囲んだ三人の吸血鬼が必死に熱弁しているが、そんなことはどうでもいい。


(………オーマを、取られた)


 なんで、どうして、何故オーマは抵抗しなかった、いや違う私が悪い、力が足りないから、それを気づかせる為に敢えて、また守れない、救えない、私のせいで、大切な人を奪われて―――。


(嫌だ)


 手に無意識に力がこもる。


(絶対に、嫌だ)


 抑えていた魔力が全身に迸る。


(もう二度と、奪われせたりしない)


「ルナ様、落ち着いて―――」


「大人しくして頂ければあの男の命は―――」


「うるさい」


 キーキー喚いていた三人の吸血鬼を一秒で処す。吸血鬼はほぼ不死身だ、幾ら傷を負っても、たちまちの内に回復する。吸血鬼を倒すには弱点を的確に突かなけらばならない―――そんな当たり前に囚われる必要はない。


 回復するなら、回復を超える速度で切り刻めばいい。至極当然なことだ。最もそんなことができるかどうかが問題だが………【帝王】のメンバーはそれを問題としない。オーマに相応しい配下になるには、常識なんて覆し続かなければいけないのだ。


(相応しい、か)


 そう考えてみれば、私はオーマに相応しくない。吸血鬼、家族、そんな言葉を並べて自分は強いんだ、オーマの傍にいていいんだと言い訳していただけだ。全く度し難い。そう考えれば、今回のオーマの動きは私にそのことを気づかせる為だったのかもしれない。いやきっとそうだ。そうでなければオーマが捕まる訳ない。


「………分かった、なら見ててオーマ」


 オーマに歯向かった塵屑共、全員纏めて蹴散らすから。


 殺戮の限りを尽くした、廃墟に住まう魔獣と吸血鬼を一匹も残さずに狩る。血飛沫が飛び、悲鳴が木霊する。何度か同族が説得を心掛けたが、そんなこと知るかと全て等しく死に送った。


 吸血鬼が絶滅寸前?旗頭が必要?知らない、そんなこと。何故名も顔も知らない相手の為にそんなことしないといけないのか、甚だ理解に苦しむ。そんなことの為に―――私から大切な人を奪うのか。怒りがより増し、抑えることができない。感情に支配されるまま、冷酷な処刑人になって殺し回る。


 吸血鬼は魔人族の中でも最上位の戦闘種族、弱点の多くが露呈したせいで弱く見られがちだが………私は違う。弱点の殆どが無効化された生まれながらの最強の吸血鬼、それが【帝王】の幹部の一人、【闇夜姫ナイト・クイーン】ルナ・ヴァイアなのだ。


 普段隠している吸血鬼の羽をさらけ出し、吸血鬼特有の戦闘法、血液操作で血を自由自裁に操る。時には剣に、槍に、斧に、盾にして敵を斬り、穿ち、跳ね、潰す。遠方から攻撃しようとする間抜けには、血液を固めた光線を放ち尽く撃ち落とす。


 そして、最上階。他の有象無象と比べたらマシなオーラを放っている部屋、ここにオーマがいる。他は全て潰して回ったので後はここしかない。


 扉を勢い良く開けて―――十字架に張り付けられているオーマを見て、頭が冷えたのを感じた。思い浮かべたのはかつての村。毎日気軽に話しかけてくれた優しく明るい吸血鬼の大人達が、十字架に張り付けられて殺されていた姿。その光景がフラッシュバックし、血を固めて作った血鎌を片手に駆けた。


「来たな、【闇夜姫】ルナ・ヴァイアッ!さぁ、この男の命が惜しいなら私との契約に応じて―――」


「死んで」


 光悦とした表情でのたまう塵屑以下を一瞬で切り刻んだ。塵一つ残さない、その思いで何回も、何十回も、何百回も数秒の間にやってのけた。自分でも驚く程の冷徹な死別の声を残し、その吸血鬼を殺した。


 跡形もなくなった塵屑以下に一瞥もくれず、オーマを縛っている縄を切り裂く。誤って傷を付けたりしないよう、それでいて最速で開放する。どこかボーっとした顔のオーマは十字架から落ちてしまう。


 慌てた表情をして、あわあわと手をばたつかせたオーマを急いで抱きしめる。傷はない、縄に縛られていたせいで少し痣らしきものはあるが、それ以外は何も。オーマの無事な姿を見て、漸く私を支配していた殺意から解放された。


「オーマっ………良かった………」


「あーうん………ありがとうね、ルナ」


 涙ぐみながらオーマをこれでもかと抱きしめると、躊躇いがちに抱きしめ返してくれる………温かい、生きてる、良かった。オーマは申し訳なさそうに謝罪をした。


「ごめんね、あっさり捕まって」


「………ううん、私こそごめん」


「えっ?」


「あの程度の塵屑以下に遅れをとったりして、オーマの期待に答えられなくて、ごめんなさい」


「あっ、いや」


「オーマは、私に成長してほしかったんだよね」


「へっ?」


 素っ頓狂な声を上げて不思議そうな顔をするオーマ………全く、名役者にも程がある。私の力不足を責めず、自分のせいにして私を悲しませないようにしてくれているのだろう。そういう優しさは嬉しくもあるが、同時に情けなくもある。


 今回の依頼で学んだ、私はまだまだだった。どこか慢心していた、油断していた。そのことをオーマは自らを囮にして気づかせてくれた………いつまでたっても彼には、兄には敵わない。兄より優れた妹はいないというのはこのことだろう。


「………オーマ、私強くなるよ。今以上にもっと………だから」


 顔を上げて、オーマに誓うように満面の笑みで告げる。


「強くなったら、いっぱい褒めてね、お兄ちゃんっ!」


「………あっ、ハイ」


 私の宣誓に何だかいまいち伝わっていないような、微妙な反応をされた。おかしい………そうか、私には無理だというのか。いいだろう、そっちのほうが燃えるし、やりがいがある。度肝を抜かしてみせる、覚悟することだ。その後、オーマを二度と離さないよう手を繋いで帰った………ふふん。





 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 おかしい、何かおかしい。絶対勘違いしてるよこの子。機嫌良さそうに僕の手を繋いでいるルナを見ながら夜道を歩く。高難易度ステージ『月光の邸』を攻略した僕達(ほとんどルナのお陰)は、クランハウスへと帰っていた。


(なんか、どっと疲れた)


 感情のジェットコースターみたいな感覚だ。最初は余裕だと高を括っていたら、簡単に捕まってしまい焦っていた。その直後、ルナがドン引きするくらい無双していて呆気にとられるのと軽い恐怖を感じた。そんな少女が今僕にべったりくっついて甘えてくる。もうだめだ。脳のキャパオーバー、今日は考え事できない。


 ぐったりとしながらクランハウスに入る。ロゼが出迎えてくれた。ごめんよ、依頼の詳細は明日話すから、今日は休ませてください。今にでも寝たいが、流石にお風呂には入りたい。僕は大の風呂好きなんだ。一日の疲れと汚れを落とさなくては、今日を終えることは出来ない。


 怠い体を叩き起こし、服を脱ぐ。ロゼが事前に、僕専用風呂にお湯を張ってくれたみたいなので直ぐに入れる。ありがたい、本当にありがたい。


「ハァーーー………」


 シャワーで軽く体を洗い湯船に浸かる。ついお爺ちゃんみたいな野太い声が出るが、別に誰もいないしいいだろう。


 ボーっと水面を眺めていたら脱衣所から物音が聞こえてきた。なんだ、敵か?いや、侵入できるわけない。ここのセキュリティは完璧なんだ。空耳かと目を瞑って今日の出来事を振り返る。今日はいつも以上に忙しく、濃い一日だった。明日はゆっくりしよう。お祭りやってるけど関係ない。


「あぁー………体洗うのさえ面倒だ」


「私がやるよ」


「ありがとー、助かるよ………え”っ?」


 あ…ありのまま今起こったことを話すぜ!僕は今、体を洗う事の不満を口に出したら隣から聞こえてきた声に反射的に返事をしていた。さっきまで一人しかいなかったのにだ、何時の間にか僕の湯船にタオルを巻いた金髪紅目の美少女がいて………僕は衝撃のあまり溺れた。泡と照明の光しか入らない視界の中でそうやって現実逃避していたが、流石に生命の危機を感じて慌てて浮かび上がった。


「ぷはっ!?」


「あっ、大丈夫?」


 お湯でぼやけた視界の中、心配そうに僕の顔を覗き込んでくるルナがいて………急いで顔を背けた。


「な、な、何で居るの!?」


「………いちゃ駄目?」


「駄目でしょ!?今っ、僕が入っているんです!男の人がいるお風呂に入る女の子がどこにいるって言うんですか!?」


「………ここにいる」


「現在進行形でいたよっ!!」


 夜中だというのに行儀悪く叫んでしまう。ご近所の方々、申し訳ございません。ですがどうか許してください。この状況で叫ばない方がおかしいと思うんです。はい。心の中で謝罪していると、ルナが慎ましい胸を僕の背に押し付けてきた。いつ覚えたんだ、そんなはしたない事を。


「………私が洗ってあげる」


「結構です」


「………大丈夫、きちんと洗う。背中は勿論、前も念入りに」


「話聞いてるっ!?」


「………お風呂から上がったら、一緒に寝よ?」


「寝ないよっ!?」


 なんだこの娘、何時の間にこんなにアグレッシブになったんだ!?首に手を回し、僕の耳元に妙に艶のある声で囁いてきた。


「………安心していい。ちゃんとリードするし、天上の木目数えている間に終わらせるから。兄妹なら当然」


「何する気だよお前っ!!?後、兄妹でヤるのはマズいからね!?」


「………義理だし平気」


「そういう問題じゃないと思う!だ、誰かーっ!?助けてくださーい!!?」


 色んな意味で生命の危機を感じる!ついさっき言った「強くなったら、いっぱい褒めてね、お兄ちゃんっ!」って発言は何処にいったんだ!義兄妹でこんなことするとか絶対におかしいから!!

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