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結末3

 日が沈み始める現実世界で目を覚ました私は、見知らぬ天井を見つめていた。


「……ここは? まだ戻ってきてない?」


「ミーナ……ちゃん?」


 声が聞こえた方向に目を向けると、そこには今にも泣き出しそうな表情を浮かべているジークが、私の右手を握りしめていた。


「ジーク……良かった。ちゃんと帰ってこれたみたいな」


「はい……本当に……本当に、戻ってくれて……良かったです」


「珍しいわね……アンタが泣いているなんて。心配してくれて、ありがとう」


「ミーナちゃんにもしものことがあったらと思うと……昔を思い出してしまって……ごめん」


 ジークは涙を拭い、私はジークの手を握り返す。


「ジーク……私ね」


 ヒビキさんに会ったとジークに報告したかったが、私の口から言うべきことじゃないと判断し、口を閉ざし、ジークから視線を逸らす。


「ごめん……何でもない。ところで、ここは?」


「王宮の休憩部屋です。クロノ様が手配してくれました」


「クロノ……」


 クロノの名前を耳にした瞬間、私はフレイアの言葉を思い出した。


「そう言えば……フレイアの雫は? あれはどこにあるの?」


 涙を浮かべながらジークは笑みを浮かべ、窓際に指を向ける。


 ジークが指差す方向に目を向けると、ガラスケースに保管されているフレイアの雫があった。


「クロノ様がミーナちゃんが目覚めるようにって祈りを込めて、この部屋に置いてくれたんだよ」


「フレイアの……フフフ。そういうことね」


 上半身を起こそうと体を動かすが、体全体に痛みが走り、私は顔を歪める。


「ミーナちゃん……無理しなくてもいいんだよ?」


「何なの……これ」


 体の不調に疑問を抱いていると、入り口の扉がノックされ、私はジークに出迎えるよう、目で合図する。


「……どちら様ですか?」


「私だ。ジアスだ。サロミアも一緒だ」


 ジークが私に視線を向けてくるが、私は即答で首を縦に振る。


「失礼する」


 腕と脚が再生していた母だったが、うまく歩けないのか杖をつき、祖父の肩を借りて歩いていた。


 そして2人は私の顔を見て、微笑を浮かべる。


「目が覚めたようだな。気分はどうだ? ミーナ」


「……体が思うように動かせない。最悪ね」


「無理もない。使い慣れない力である上、強力な力だ。反動が出たのだろう」


「ミーナちゃん……貴女、1週間も寝ていたのよ? びっくりでしょ?」


 1週間……普段3時間寝れば十分回復するのに。あの力の反動……か。


「その程度で済んだのなら、安いものよ」


 私は杖をついている母を見て、目を細める。


「再生しているのに歩けないの?」


「ええ。私も歳かしらね? 再生してもすぐに動けないわ。参ったわね」


「人の心配してる場合? 私よりも重症じゃない」


「突然意識を失う方が重症よ」


 ごもっともね。


「目が覚めて早速で申し訳ないが……近日中に継承式の続きを行うそうだ。その際、クロノ国王が国を救ったお前たちに勲章を送りたいと仰っているが……どうする?」


「のんきなものね。市街地の復興が終わってからでも遅くないんじゃないの?」


「それが思いの外、復興はかなり進んで、来週には市街地も元通りになりそうよ」


 窓の外に目を向けると、暗くなり始めてるにも関わらず、復興作業を行なっている国民と兵士たちが目に映った。


 そして、そこにはシャフリたちの姿もあり、ミストレーヴ家のメイドたちも総出で手伝っていた。


「……そう。それは良かった」


「で? どうする? クロノ様は是非参加してくれと言っているが?」


 チラッとジークの方に視線を向けると、ジークは笑みを浮かべてコクリと頷く。


 私も笑みを浮かべて、祖父と母に答えを伝える。




 ◇◇◇




 時は過ぎ、完全復興したアルカディアの王宮では改めて継承式を行なっていた。


「それでは……新国王、クロノ・アルカディア様から一言いただきたいと思います」


 正装に身を包んだクロノが歓声を上げる国民たちを見渡し、深呼吸を行った後、スピーチを始める。


「まずは皆様に、復興の協力と私を国王として支持してくれていることを感謝します。そして……国のために身を捧げた父と義兄に1分間の黙祷を願います。それでは……黙祷!!」


 1分間の沈黙が流れ、目を開けたクロノは思いを口にする。


「私は父と違って聡明ではありません。反旗を翻した義兄と違って力はありません。ですが……2人に負けず劣らず、この国を愛しており、この国のための理想は描いております。この先、決して楽なことばかりではないことは覚悟しています。皆様に支えてもらい、こらからも皆様と共に歩んでいく所存です。今一度、お願いです。この未熟な王に、力を貸してください!」


 クロノが深々と頭を下げると、国民たちは拍手とエールを送り、それを受け止めたクロノは満面の笑みを浮かべ、空を見上げる。


「お父様……義兄様……手段は違っていましたが、最終的に行き着く理想は私と同じだったと思っています。命を賭けて……2人が思い描いていた国に導きます」


 天にいるであろう2人に誓いの言葉を口にし、クロノはそっと瞼を閉じる。


「心に響くお言葉、ありがとうございます。続きまして、先刻の戦いにて、アルカディアを守った勇気ある方々に、勲章の授与があります。早速ですが、授与の方々をお呼びします」


 司会進行を務める大臣が勲章授与予定の人物1人1人の名前を呼び上げる。


「まずは元アルカディア騎士団の一員で、クロノ様と前国王、ヨハネス様に最後までお力を貸してくれました、ソフィア・グラン様。サラス・ツェリーゼ様」


 王宮の奥からソフィアとサラスが姿を現し、国民たちとクロノに深々と頭を下げ、クロノに促され、横に並ぶ。


「続きまして、国民の皆様の安全を確保し、臆することなく防衛線の最前線に立ち、被害を最小限に抑えてくれました、シャフリ・ハル・クリスティ様。シオン・ディーズ様」


 緊張で動きが硬いシャフリ。そんなシャフリの手を握って待機位置に連れて行くシオン。


「ご……ごめんね。シオンくん」


「シャフリお姉ちゃん……緊張、しすぎ」


「人前に立つのは昔から苦手でね……」


 シオンに目を向けた際、シャフリはクロノと目が合い、クロノはニッコリと笑みを浮かべる。クロノの笑みを見て、シャフリはさらに緊張し、そばにいるシオンの声すら届かない状況に陥る。


「……手汗がすごい」


「そして……アルカディアを救った英雄が2人。ジーク・アルヴェルド様。ミーナ・アリスト・ミストレーヴ様」


 大臣がジークとミーナの名前を呼んだが、返事はなく、2人が姿を現すことはなかった。

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