ミーナと竜人族4
ジークが戻るまでの間、私はシャフリが用意してくれた朝食を口にする。
「どうかな? 美味しい?」
「……うん。まあまあね。ジークには及ばないけど、美味しいわよ」
「ジークさんと比べられるのはちょっと……でも、良かった」
手を止めることなく、黙々と食べ続ける私。
完食寸前のところでジークが姿を現し、私は手を止めて、ジークに視線を向ける。
「帰ってきたわね」
「勝手なことをしてしまい、申し訳ございません」
「そのことは不問にしたはずよ。それ以上謝らないでよ」
「失礼しました」
ジークは深々と頭を下げ、私は呆れ顔で息を吐く。
「まあ、良いわ。取り敢えず紅茶を頂戴。シャフリったら紅茶の淹れ方分からないらしいのよ」
「だって紅茶は……それこそジークさんと比べられるもん」
否定はしないわ。ジークの味を超える紅茶はないもの。
「お任せください」
ジークは自分の左手をハンカチで隠し、右手で指を鳴らす。その後、ハンカチを取ると、左手には紅茶が入っているティーカップがあった。
「わ! 凄い!」
シャフリが率直に感想を口にし、一度見たことある私は頬杖をついて、目を細める。
絶対種も仕掛けもあるはずなのに、全く分からない……執事というか、マジシャンになってない?
いや……元から掴みどころのない奴だからマジシャンで合ってるわね。
「お待たせしました。お嬢様」
ジークは紅茶を差し出し、私はゆっくりと紅茶を楽しむ。
「……相変わらず、最高の味ね」
「恐れ入ります」
「私も欲しいです!!」
挙手をしながらシャフリは紅茶を求め、ジークは笑みを浮かべて対応する。
「どうぞ」
シャフリは一気に紅茶を飲み干し、気の抜けた顔を浮かべる。
「はぁ〜……ホント、最高」
「一気飲み……火傷しないの?」
私の呟きはシャフリに届いておらず、シャフリはジークに紅茶のおかわりを要求する。ジークは困った表情を浮かべることなく、紅茶が入ったポットを手に持ち、シャフリのティーカップに紅茶を注ぐ。
笑みを浮かべる2人を見て、私も思わず笑みを浮かべる。
そんな時、食堂の扉がゆっくり開き、ある人物が姿を見せる。
「は〜い。食事中、失礼しま〜す」
「構わないわ。丁度終わるところよ。サラス」
残りの料理をサッと食べ終えた私は紅茶を飲んで、用件を聞く。
「どうしたの? アンタが来るなんて。いつもはソフィアなのに」
「それがですね……また近づいているみたいなんですよ」
私たち3人は同時に目を細くし、私は言葉の続きを待った。
「そう……お母さんたちがいないのに面倒ね。それで数は?」
「それが……ですね」
サラスは私から視線を逸らし、ただ事じゃないと察した私はジークに目を向ける。私の思考を理解したジークは姿を消し、私はサラスに報告の続きを促した。
「サラス。ちゃんと話してくれる?」
「……はい」
◇◇◇
門の前で超聴覚を使用して、周囲の様子を伺うソフィア。
そこにジークが現れ、ジークはソフィアと同じ方向に目を向ける。
「……聞きましたよ。来ているんですよね?」
「はい。確かに兵士の足音が近づいています。ですが、見張りのメイドたちは姿を確認できないと言っています」
「姿が? まさかと思いますが……」
「アルカディアの隠密部隊で、姿を消す魔法装備を開発していると耳にしていましたが……完成しているのであれば、厄介な相手になります。自分や超視力のあるシャフリ様なら対応できるかもしれませんが……」
「自分たちはかなり不利ですね。奥様たちに通信バットを飛ばしていますが……間に合うかどうか」
ソフィアは一歩前に進み、左腰に携えている剣に手をかける。
「林道に差し掛かっています。私が足止めをします」
「自分も足を引っ張らない程度に手伝います」
ジークは両手に鬼神を纏い、ソフィアと並ぶ。
「ミーナお嬢様の側にいなくても良いのですか?」
「そのお嬢様の命令でここにいます。余計な心配は命取りになりますよ」
ソフィアは微笑み、剣を少し鞘から出す。ジークは深呼吸をしてから、ソフィアと共に林道へと向かった。
◇◇◇
サラスとシャフリに、ジークたちの援護をお願いした私は、地下室の扉を開けていた。
「ミーナ? どう……した?」
「シオン。ごめんなさい。ここは大丈夫って言ったけど、状況が変わったの」
シオンの両腕の拘束を解いた私は、優しく頭を撫でる。
「ミーナ。顔……暗い」
「ごめん……こっちに来て」
シオンの手を引っ張りながら、私は地下室の廊下を駆ける。
見晴台までシオンを連れて行き、私はシオンに布袋を手渡す。
「ミーナ……これ」
「3日分の食料は入っているわ」
「……え?」
「アンタは逃げなさい。怪我を治せなかったのは心残りだけど、ここにいたら怪我だけじゃ済まないわ」
「ミーナ……どうして?」
「……安心して生きられる場所を見つけなさい」
シオンの肩を優しく叩き、私は吸血鬼の姿に変わる薬を飲んで、翼を広げる。
「ミーナッ!!」
「元気でね」
翼をはためかせ、私はジークたちの元へ向かった。
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