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ミーナと竜人族3

「ほら。とっとと私の朝食用意しなさいよ」


 腕を組み、右足を揺すりながら、シャフリを急かす。


「ごめんって……もう驚かせないから、ゆっくり作らせて〜」


 違う。驚かせたのも許せないけど、それ以上に……。


「秘密……誰にも言わないでよ。絶対に!」


「みんな知ってることだよ〜」


「知ってる訳ないじゃない! 強いて言うならソフィアくらいよ!」


「うう……酷い」


 酷いのはどっちよ。私とジークだけの秘密にしてたのに……あー、もう! 最悪! イライラする〜!!


「手が止まってるわよ!! お腹空いてるんだから早くして!!」


「ヒィィィッ!!」


 慌てて動いているシャフリから目を逸らし、ため息をついてジークに声をかけようとするが……。


「……あれ? ジーク?」


 少し前まで隣にいたジークの姿がなく、私は周囲を見渡す。


「……どこ行ったのよ」


「ミーナちゃ〜ん! もう出来るよ〜」


「あそう。食堂まで持ってきて」


「ええッ!? 少しは手伝ってよ〜」


「秘密を知った罰よ。つべこべ言ってないで持ってきなさい」


「うう……分かったよ」


 ジーク……ホント、何考えているのやら。




 ◇◇◇




「ミーナ……叫んでた。大丈夫……かな?」


 ベッドの上で天井を見続けるシオンは、ミーナの叫び声を聞いて心配する。


「何か……あったのかな?」


 呟き続けていると扉が開き、シオンは顔を上げる。


「お体の方は大丈夫ですか?」


「この匂い……お前!! 人間!!」


 地下室に入ってきたジークを見て、シオンは殺意を抱く。


「鋭い目つきに圧倒されそうな殺気……幼くても、流石竜人族ですね」


「何しに来た!!」


「落ち着く……訳ないですよね。安心してください。自分は人間ですが、貴方に危害を加える人間ではありません」


「人間!! 信用できない!! 人間!! 卑怯!!」


 聞く耳を持たないシオンに対して困るジークだったが、仕方なさそうな表情を浮かべて、シオンに近づく。


「来るな!!」


「そういう訳にはいきません。独断ですが、貴方のためを思っての行動なので、ご理解を」


 ジークはシオンの服に触れようとするが、シオンは暴れて抵抗する。


「触るな!! 近づくな!!」


 拘束されている両手を振り回すが、ジークは冷静に捌いて、シオンの背後を取る。


「失礼しますね」


「や、やめろ!!」


 シオンの服を脱がし、背中を観察したジークは笑みを浮かべる。


「うん。この程度なら大丈夫ですね。シャフリ様の薬の効果もあるかもしれませんが、人外種は傷の治りが早いですね」


「な、何を!!」


 再びシオンは抵抗しようとしたが、背中の一点に温かい感覚があり、背中全体に伝わっていく。


「え?」


 シオンは限界まで首と目を動かし、背後にいるジークが何をしているのか確かめる。


「冷たくないですか? それとも熱いですか?」


「あう……何を?」


「数日間、お体を洗ってませんよね? 臭ってはいませんが、気持ち良くなってもらおうと思って、お体を拭かせていただきます」


 いつの間に用意したのか、ジークの横にはお湯が入った桶とタオルがあり、ジークは優しく丁寧にシオンの背中を拭いていく。


 体が拭かれていく内に、シオンの気持ちが落ち着き始め、抵抗する力が弱まっていく。


「気持ち良いですか?」


「……うん」


「それは良かったです」


 体全体を拭き終え、綺麗になったシオンの体を見て、ジークは新しい服をシオンに着せる。


「はい。これで終わりです」


 体も心もスッキリしたシオンは、再び横になり、後片付けをしているジークに声をかける。


「あの……その」


「はい? 何でしょう?」


「あ……ありが、とう」


 シオンから感謝の言葉を聞いたジークは、ニッコリと笑みを浮かべ、言葉を返す。


「どういたしまして」


「どうして……僕の、体を?」


「貴方が人間嫌いなのは存じております。人外種にしか関わりを持ちたくないと思いますが、この屋敷の人外種は女性しかいません。不愉快かもしれませんが、貴方の尊厳を守るために、人間ですが男性である自分が体を拭かせてもらいました」


 ゆっくりと立ち上がるジークから目を逸らしたシオンは、布団で口元を隠しながら、再び感謝を口にする。


「あり……がとう……えっと」


「名乗り忘れていましたね。自分はジーク。ジーク・アルヴェルドです。このお屋敷のご令嬢、ミーナ・アリスト・ミストレーヴ様専属の執事です」


「ミーナの……執事。ジーク……お前、良い奴。人間……だけど、良い奴。僕は……」


「シオン・ディーズ様……ですよね?」


「名前……どうして?」


 笑みを保ったまま、ジークは出入口の扉を開け、名前を知っている理由を教える。


「執事として、屋敷にいる人物の名前を知っておくのは当然のことです。それでは、失礼します」


 部屋を出た瞬間、ジークの前に通信バットが現れ、ジークは指を差し出し、通信バットを止まらせる。


『言いつけを守らないなんて、らしくないんじゃない? ジーク』


 通信バットからミーナの声が流れ、ジークは笑みを浮かべたまま、言葉を返す。


「申し訳ございません。ですが、自分にしか出来ないことだったので……罰は何でも受けます」


 通信バットからため息が聞こえ、数秒の沈黙が続いた後、ミーナの声が再び流れる。


『まあ、良いわ。何事もなかったみたいだし、今回は許してあげる。さっさと戻ってきなさい』


「寛大な処置……恐れ入ります」


 通信バットが飛び去り、ジークはミーナの元へ戻っていった。

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伊澄ユウイチです!


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