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ミーナと竜人族1

「これをこうして……よし! 出来た!」


 竜人族の少年に食べさせる料理を作ったシャフリ。


 隣でサポートをしていたジークが笑みを浮かべて、拍手を送る。


「良い出来ですよ。一応万人受けの味付けをしましたが、口に合うか……」


 完成した料理をマジマジと見た私は、思わず食べたいと思ってしまう。


「シチューにパン。野菜たっぷりのサラダにスクランブルエッグ……見ただけでお腹が空いてきた」


「夕食の時間にはまだ早いのでしばらく我慢を」


 苦笑いを浮かべて我慢を強要してくるジークに、私はジト目で見つめる。


「食べてくれるかな?」


 不安そうなシャフリを見て、私は胸を張って言葉を返す。


「食べさせるわ。アンタたちが一生懸命作ったんだもの。殴ってでも食べさせるわ」


「それはちょっと……」

「加減してくださいね」


 2人が作った料理をワゴンに乗せ、私はゆっくりと調理場を後にする。




 ◇◇◇




 地下室の扉を開けると、横たわっている竜人族の少年が、私に視線を向けてくる。


「起きてたの? 具合はどう?」


 私の呼びかけに言葉を返さない少年。


 私は特に気にする事なくワゴンを押して、少年の横に立つ。


「お腹空いているでしょ? 食事できる?」


 少年がワゴンをチラッと見ると腹部が鳴り、私は思わず笑ってしまう。


「強がっているようだけど、体は素直ね。食べさせてあげよっか?」


「……お前。本当に、人間?」


「まだ疑ってるの? さっきも言ったでしょ? 半分人間で半分吸血鬼だって」


「見た目……人間」


 私は部屋に設置されている時計に目を向け、現時刻を確認して笑みを浮かべる。


「そろそろね」


 時刻が6時になり、私の姿が人間から吸血鬼に変わる。その瞬間を目の当たりにした少年は目を丸くし、驚きの表情を浮かべる。


「これで分かってくれた?」


「人外……お前は」


「余計な事を言ってないで、食べようよ? 冷めちゃうと美味しくないよ?」


 腕以外の拘束を解いてあげて、少年の上半身を起こしてあげる。起こす途中、顔を歪めていたが、痛みをこらえて何とか起き上がってくれた。


「どれから食べたい? パン? それともサラダ?」


 少年は言葉を返さず、両腕をパンに伸ばそうとする。


 私はパンを手に取り、一口サイズに千切り、彼の口に運ぶ。


「はい。口開けて」


「な……」


「何してるの? さっさと開けなさいよ」


 少年は私から視線を逸らすが、絶えず鳴り続ける腹部を鎮めるために、口を開ける。


 開いた口にソッとパンを入れ、少年はゆっくり咀嚼を始める。


「美味しい?」


 少年はコクリと頷き、私はシチューの皿を手に持つ。


「それに合うシチューもどう?」


 スプーンでシチューを掬い、少年はゆっくりと口を開ける。シチューを口にした瞬間、少年は目を見開き、無意識に口を少し開ける。


「どうしたの?」


 尋ねた瞬間、少年の目から涙が流れ始め、ボソッと言葉をこぼす。


「……美味……しい。美味しい……父さん。母さん」


 呟き続ける少年の頭を、私は優しく撫でる。


 私の手の温度を感じた瞬間、少年は表情を崩して泣き始める。


「辛かったでしょ? ここは大丈夫だよ。安心しなさい」


 再び彼の口にシチューを近づけ、少年は無我夢中で食べ進める。


 ジークとシャフリが作った料理を食べ終えた少年は再び横になり、食器をワゴンに片付けた私は彼に視線を向ける。


「また持ってくるからね。今日はもう寝なさい」


 言葉を残して部屋を出ようとすると、少年が口を開ける。


「……シオン」


「え?」


「シオン……ディーズ。名前」


「シオン・ディーズ……シオン。明日も持ってくるから待っていなさい」


 シオンに笑みを送った私は部屋の明かりを消し、今度こそ部屋を後にした。


「ふぅ……疲れるわね。人に食べさせるって……ねえ。ジーク」


 廊下の陰から笑みを浮かべたジークが現れ、私はため息をつく。


「お見事です。お嬢様。一口の量も多くなく、早くもなく、遅くもないペースで食べさせていましたよ」


「……ずっと覗いていたの?」


「お嬢様の身に万が一のことがあると思うと……失礼ながら見守らせてもらいました」


「はぁ……心配しすぎ。でも、感謝しているわ。アンタとシャフリが料理を作ってくれたおかげで、あの子は落ち着きを取り戻してくれたわ」


「大変恐縮です。ところでお嬢様……あの少年はどうするおつもりで?」


 ワゴンを押しながら、私はジークに言葉を返す。


「お母さんたちが帰ってきてから相談するけど、私はここで匿うつもりよ」


「そのお気持ちは?」


 珍しく問い詰めてくるわね。


「……アンタの昔話を思い出してね。このまま放っておく訳にはいかない気がしてね」


「自分の……ですか?」


 ジークはキョトンとした表情を浮かべる。


「それと……あの子から、アンタやシャフリ、ソフィア、サラスに似たようなものを感じたの。それが理由よ」


 ジークに背を向けて廊下を歩き続ける私。ジークは笑みを浮かべて、私の後を追ってくる。


「……なるほど。そういうことですか」


「そういうこと。あー、お腹空いた。ジーク。夕食の準備は出来てる?」


「出来ております。食後のデザートも用意しておりますよ」


「……やった!」

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伊澄ユウイチです!


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