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雨天訪問2

「そんな……お義兄様が」


 現実を受け入れられないクロノは何度も「嘘だ」と呟くが、エディックの沈黙が、彼に現実を突きつける。


「……旦那様。近くに来ています」


「ヨハネス……やっと来たか」


 エディックとカーリーが扉に目を向けた瞬間、勢いよく扉が開き、ヨハネス国王が飛び込んでくる。


「エディック……一体どうしたのだ?」


「ヨハネス。事実確認をしておきたい。リギルは何をしようとしている?」


 エディックの問いに答えようとするヨハネスだったが、クロノが落ち込んでいる姿を見て、視線を下に向ける。


「……分からない。だが奴はここを飛び出し、数百の兵士を連れて行った。それが事実だ」


 ヨハネスが言葉を言い切った瞬間、クロノはヨハネスに抱きつき、涙を流しながら思いを口にする。


「父様! お義兄様を止めてください! エディック様の言っていることが本当なら……アルカディアは滅んでしまいます!」


「クロノ……」


「人と人外種が手を取り合うことを望んでいるのに……このままでは、国民に不安を抱かせてしまいます! お願いです! お義兄様を……」


 クロノが必死にリギルの捜索を頼もうとした瞬間、ヨハネスの体がゆっくり傾き、異変を察したエディックとカーリーはヨハネスを支える。


「父様?」


「エディ……ク」


「無茶をするな。かなり……ヤバいんだろう?」


「父様! どうかなされたのですか!?」


 冷や汗を流す父を見て、クロノは不安そうな顔を浮かべる。


「……クロノ様には話してないのか?」


「……ああ」


 声を振り絞って返事をしたヨハネスは、そのまま意識を失う。


「ヨハネス? ヨハネス!!」


 大声を出すエディック。その声に反応するように、カーリーが近くの兵士を呼ぶ。


「父様!!」

「ヨハネス!! しっかりしろ!!」




 ◇◇◇




「……かなり酷いな。ここら一帯、魔法で焼かれてしまっている」


 竜人族が襲われたであろう場所に到着したサロミアとジアスは、胸に手を当てて、亡くなった竜人族に祈りを捧げる。


「……全滅ね。不意を突かれたのね」


「サロミア。私は周りの様子を見てくる。その間にお前は……」


「分かりました。お父様」


「頼むぞ」


 ジアスと別れたサロミアは、絶命した竜人族の1人に触れて、瞼を閉じる。


「メモリー・スキャン」


 触れている者の記憶を覗き見ることができる、サロミアの特性。その特性を利用して、サロミアは竜人族の記憶を見る。


「……なるほど。遠距離魔法で焼かれて、1人の戦士にやられたのね……これって? ……やはりそうだったのね」


 サロミアは瞼を開け、触れている竜人族が握りしめている物を見つめる。


「アルカディアの旗……その切れ端ね。貴方たちは立派よ。アルカディアを信じて、誰も反撃しないなんて……ヨハネスは幸せ者ね」


「サロミア」


 ざっと様子を見てきたジアスが、サロミアから記憶の内容を聞く。


「そうか。やはりリギルがやったのか」


「はい。それも無抵抗の彼らを躊躇うことなく……」


 顎に手を当てて考え込むジアス。


 サロミアはエディックに事を知らせようと、通信バットを手にする。


「アナタ……エディック? あら?」


「どうした?」


「エディックと連絡が取れないの。王宮に行っているはずだけど……どうしたのかしら?」


「何があっても、エディックくんは大丈夫だ。しばらくしてから、また連絡しよう」


 細めた目で通信バットを見つめ、サロミアはため息をついた後、ジアスに目を向ける。


「もう少しで夕暮れになります。屋敷に戻ると夜中になりますが……」


「仕方あるまい。近くの街の宿にでも入るとするか」




 ◇◇◇




 自然と瞼が開いた少年は、見知らぬ天井を見つめる。


 体が重く、起き上がろうとするが、思うように体が動かなかった。


「……ここは? どこ?」


 首は何とか動かせたが、部屋の中が薄暗く、どこに何があるか、全く分からない状況だった。


「あら? 目が覚めた?」


 薄暗い部屋の奥から誰かの足音が聞こえ、少年は体を動かそうとする。しかし、体は言う事を聞かず、横たわった状態のまま、声の主と対面する。


「まだ動かない方が良いわ。傷がかなり深かったみたいよ」


「お前! あの時の……人間!」


「私はミーナ。ミーナ・アリスト・ミストレーヴ。悪いけど、傷が開かないように拘束させてもらったわ」


 少年は自分の腕と足が拘束されているのを知り、無理やり動かそうとする。


「やめなさい。傷が開いたら、今度こそ死ぬらしいわよ」


「くッ……」


 死ぬという言葉を耳にした少年は暴れるのをやめ、天井を見つめ続ける。


 その時、ミーナから何かを感じ、率直に尋ねる。


「お前……違う。匂い……人間。違う……人間じゃない?」


「あら? 鋭いね。教えてあげる。私は半分人間で半分吸血鬼。いわゆる混血ってやつよ」


「こん……けつ?」


「何があったのか分からないけど、私たちはアンタの味方よ。だから……落ち着きなさい」


 ミーナは優しい笑みを浮かべるが、少年はそっぽを向く。


「……しばらく休んでいなさい。後でまた来るわ」


 少年に言葉を残したミーナは部屋から出ていき、少年はミーナが出て行った扉に目を向ける。


「……ミーナ」

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