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ディメンションブレイク  作者: 凧39
一章 日常編
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ロク話 ファイターになった理由(櫻井視点)

この戦いはいつ終わるのかな。いくら金が欲しくても疲れた。


俺、櫻井さくらい あき。世界ランク11位のファイターだよ。

世界ランクとは、単純な強さではない。攻略履歴やファイター限定の大会で結果を残したり、総合力などから、順位が決まる。順位が高ければ高いほど、報酬が増えたり、高難易度のディメンションに積極的に挑戦できるようになる。勿論、知名度も上がる。


知名度が高くなる事が、嬉しいか嬉しくないかは人それぞれだが、俺はあんまり嬉しくない。何故なら、あまり目立ちたくない性格だし、有名人扱いは疲れる。それに、メディアに出演するメリットが薄いなど、理由はいろいろある。一番は犯罪者の家族として、見られてきたから。


なんでファイターをやっているか、それには理由がある。

俺の家は莫大な借金があった、約四十五億円の借金だ。何故こんなことになったかというと、俺が一歳の時、父がビルを複数爆破して倒壊させた、その結果多くの犠牲者が出た。父は指名手配されたが、未だに捕まっていない。裁判の結果、俺たち親族が慰謝料を払うことになった。その結果に当然納得していないが、受け入れるしかなかった。


俺は、犯罪者の親族として、差別されてきた。勿論苦しい事も沢山あった。


「来るなよ、犯罪者」

「うるさい!俺は犯罪者じゃない」

「親がダメなら子もダメなんだよ」


学校では虐められたし、時には、暴力も振るわれた。


「死ね!」

「やめてよ!」


暴力は、肉体的にも精神的にもきつかったが耐えていた。地元は地方だったから、街の住人はみんな知り合いって感じだった。だから街の住民からも陰口を言われた。


「あの子よねぇ」

「近寄らないでほしいわ」


そんな中、アナザーディメンションが出現して世界は大混乱に陥った。数日後、この街にもディメンションが出現して、街の住人がパニックになっていた。当時、ファイターがこの街にいなかったから、攻略出来ず、いつエンティティが出てくるか、分からないという恐怖があった。そのことは俺にとってはどうでも良かった。むしろ、こんな街無くなってしまえと思っていた。


この時まだ十五歳、全世界にディメンション出現した"始まりの日"から、一週間しか立っていなかった時、その時は、丁度、梅雨の時期だったから、自宅のアパートで一人漫画を読んでいた。その時の格好は、すごく貧乏だったから、使い古された父の黒いシャツとクリーム色のズボンだった。将来のことを考えながら漫画を読んでいると、炎で出来ている人型の何かが突如、俺の目の前に現れた。そいつが危険なエンティティかどうかはわからなかった。


この時は、ディメンションやエンティティについて未知の部分が多く、攻略よりも調査が優先されていた。多分、コントラクターと呼ばれる存在だと思う。これが噂に聞いていた契約というものだと確信した。すぐに契約したかった。やっと、運命が俺の味方をしてくれた気がした。


「君は、誰?」

「私の名前はフレイだよ!契約してくれる?」

「契約って何?」

「契約って言うのは、私は死後、あなたの肉体を依代にして復活できて、あなたは私の能力を扱えるようになったり、身体能力が向上するよ。どう、私と契約してくれるかな?」

「君が死んだら、俺の体を乗っ取るの?」

「大丈夫、死なないし、死んだとしてもそんなことしないから」


テンションが低い自分とは対照的に、フレイはギャル並みにハイテンションだった。自分の人生に光が見えなかったが、この時初めて希望が本当にあるんだなと思った。どうやら契約をすると、新しい事が出来るらしい。


「契約するよ、君が俺の希望になってくれ」

「もちろん!!私があなたの希望になれるよう頑張るね!」


フレイが、右手で胸部から心臓を取り出す、反対側の手で俺の心臓を取り出す。スルリと抜け心臓が取り出される。フレイの心臓が俺の中に入る。その瞬間、今まで感じてこなかった高揚感が俺の身体を支配した。最高の気分だった。ここまでの興奮を今まで感じてこなかったから。すっかりフレイを気に入ってしまった。

フレイは俺の心臓を、自分の胸の中に入れる。ドクンという音。その瞬間。世界が、燃えた気がした。


「君の名前は?」

「あき」


聞かれたので答えた。フレイは興味津々で聞いていた。若干引いてしまったが、フレイはこういった。


「いい名前だね、また会おうよ、あき」

「ありがとう、フレイ」


フレイは何処かに行ってしまった。生まれて初めて母さん以外に名前を呼ばれて、嬉しかったことを今でも覚えている。フレイは俺をただ対等な個人としては接してくれた。

今までは、犯罪者としか呼ばれなかったから、新鮮な気持ちだった。でも、記憶はそこで途切れていた。疲れて眠ってしまったらしい。


次に目を覚ますと、病院のベッドの上にいた右横には、母さんがいて、安堵の笑みを浮かべている。話を聞くと、四日ぐらい目が覚めなかったらしい。母さんからある提案をされる。


「あなたは、ファイターになったから、ファイター登録しにいきなさい」

「金がかかるから‥」

「いいから東京に行ってきなさい。お金は何とかするから」


俺の言葉を遮って、母さんがこう返す。後日東京にてファイター登録をした。街に戻りディメンションを攻略する、この時のレベルは2だった。別の場所にも同じレベルのディメンションが、一つ新しく出現していたので攻略した。最初は炎が赤色で不完全燃焼だった、扱いもまだ慣れていなくて、暴発が連続したけど、運良くエンティティを倒す事ができた。光を浴びて、ファイターになった事を実感した。


この事がきっかけで、俺たち家族は学校や街で差別されることは、無くなった。本当に中身が薄い連中だと思ったが、そんなことはどうでもいい。今までの恩を母さんに返そうと思っていた。ずっと感じていた怒りの感情は日に日に薄まっていく。取るに足らない存在を見ている時は、こういう気分だろう。復讐したいとすら思わなかった。


数年後、高校を卒業して、上京した。父が残した借金を返済することを目的にファイターをやっている。それは、今でも変わらない。そして、いつか父に会って話をしようと思っている。本当は会いたくないが、合わなければならない。


上京して初めてのディメンション攻略、この頃から柄が悪いと言われ続けた。その格好が好きだったから周りの意見は気にしない。出現した場所に辿り着く。扉の前に立ち、深呼吸をする。レベルは3、ピンク色の扉のドアノブを押して開ける。


「山?」


見渡す限り山脈だった。探すのが大変だと思ったが、ディメンションに入ったら基本的に、ボスが近くにいるはず。


爆炎領域(フレイム・フィールド)


俺の周り半径九メートルを炎で包み込む。煙が晴れると、辺りは焼け野原になっていた。何もなかったので、別の場所を探そうとした時、空中から気配がしたので上を見上げると、鳥型エンティティがいた。隼に似ているが翼が四本あり、5〜6倍でかい。


鋭い目つきで俺を睨み、急降下してくる。耳を劈く奇声を上げながら噛みつこうとする。それに対して、炎を放射して、焼き尽くす。


「焼き鳥になれよ」


そういったとき、急速に羽ばたいて、炎をかき消した。その勢いでエンティティが体当たりをしてくる。


「チッ!」

 

横に跳ぶ。地面が爆ぜて、遅れて衝撃が来た。Uターンしてきて、また接近してくる。体勢が悪く、避けきれない。叩きつけられる。骨が軋む。

 

「……ッ!」

 

呼吸が、できない。攻撃が重い。

さらに、羽ばたき、ミニサイズの竜巻を作り出す。閉じ込められて出られなくなった。


爆炎領域(フレイム・フィールド)


もう一度技を繰り返すが、風に弾かれてしまった。次の手を考えていると、風が止む。油断はしていなかった。先ほどより速いスピードで突進してきて、反応できず、直撃してしまった。

肋骨にヒビが入った、とても痛い。


エンティティはまた竜巻を作り出し、俺を閉じ込める。今度は、どんどん狭くなっていき、俺を風の攻撃で殺そうとしてきた。


(まずい。どうすればいい)


必死に考える。ディメンションは死んだら中からエンティティが外に出てくる。ここでは絶対に死ねない。何かいいアイデアがないか、考えていると、一ついいアイデアが思い浮かんだ。それは、暴れ回る火を、一本の針のように研ぎ澄ますように。

"圧縮"、炎を圧縮して、高温にすればいい。濃くすれば、強くなる。早速試してみると、制御が難しいが作り出した炎がどんどん圧縮され高温になっていっている。赤色から黄色に、白色に、どんどん色が変わる。白色の炎になると僅か一センチほどの球になった。

この時、白炎が誕生した瞬間だった。球を制御する事に集中する。もうすぐ竜巻は俺を飲み込むところで、一気に球を解放する。


極小白色矮星(タイニーシリウス)


高速で、打ち出した球は風を貫通して、エンティティの体に当たると爆発した。運良く心臓付近に当たったので、焼き鳥になりながら死んだ。


光を浴びると、元いた場所に戻っていた。疲れたのでその日は家に帰って、着替えずに、布団で寝てしまった。すると、久しぶりにフレイが現れた。


「お疲れ様!灼」

「どうしたの?」


フレイとは今でもたまに俺の前に現れている。そこで、いろんな話をして、寝る時間になったら去る。暇なのだろう。


現在。


綾人達と別れて、本部に到着した。家で本が読みたかったので、家に帰りたいと思いながら報告書を提出する。


「確認しました。レベル4ディメンション、攻略完了ですね。お疲れ様でした」


受付係の言葉を聞いて、また、生き延びる事ができたという安心感を感じた。いつ命を落としてもおかしくない。それでも、借金を返すまでは死ぬことはできない。報酬は後日振り込まれるようになってる。レベル1が数万円で、レベルが上がるごとに報酬は十倍になる。あと、残り約三億円支払わなければ。

考えながら歩いて外に出る。自分の車に乗り込んで、エンジンをかける。それと同時こんな事も考えていた。


(借金を返済したあとは何をするのか?)


父を見つけるのは難しいと思う。綾人や葵達のパーティに入るのも悪くないかも。でも、俺がいたら迷惑をかけてしまうかもしれない。だから、一緒に攻略するのは、極力避けた方がいい。やっぱ、なかなか決められない。


新しいディメンションを攻略し続ける日々。変化を望むのは、当然。あの二人なら変えてくれる気がする。この世界を。


期待しているよ、二人とも。

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