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ディメンションブレイク  作者: 凧39
一章 日常編
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ゴ話 レベル4ディメンション

話は現在に戻る。


ドアノブを押すと、強烈な刺激臭が鼻腔を刺激する。思わず、反射的に口元を押さえる。胃がせり上がるような不快感、嗚咽をこぼす。


「くっさ!」


櫻井先輩もそう言っている。ここまで強烈な臭いを我慢出来るわけない。このディメンションは大気がアンモニアで構成されているようだ。


俺たちファイターは、毒やウイルスなどの人体に有害な物質に耐性はあるが、それでもこのレベルは耐えきれない。一般人なら卒倒するレベルだろう。

風間さんが鼻を押さえながら前に出て、手をかざす。


「風間さん、頼みます」

「了解、アトモスフィア」


風間さんを中心に空気が置換されている。息をするのが楽になった。改めて理解する。風間さんがいなければ、侵入すら不可能、レベル4の危険性が身に染みた。


「俺と葵くんを先頭に、櫻井さんと綾人くんは後ろで。半径四メートルから絶対に離れないで」


俺たち三人は、返事を返す。内部に侵入すると、暗黒空間が広がっている。運良くライトがある、つけて周辺を観察する。岩、木、硬い地面、それ以外の物体や生物は見えない。

歩いて、エンティティを探す。一歩前に進むと、地面が激しく揺れる。ヒビが入り、中から巨大なウツボみたいなエンティティが、俺たちに襲いかかってくる。数十メートルはある。


地獄級の炎(ヘルズ・ファイア)


櫻井先輩が白い炎をエンティティに命中させる。だが、エンティティは臆することなく、何かを溜め込む動作をとる。直感的に火に関する攻撃だと思った。次の瞬間、エンティティが火球を放つ。

火球の一つに当たってしまった。先ほどの予想は、当たりだったが、威力が桁違いだ。櫻井先輩の舐めプ状態の炎と同じくらいの火力がある。他の火球は、なんとか回避するが少しでもずれていたら、無事では済まなかった。一発貰っただけでも、全身が焼けた。炎を消してエンティティを見据える。


「まずい、また来るぞ!」

不壊の盾(アイギス)


葵が空中に一枚の巨大な西洋風の盾を生成する。エンティティは火球を放つが、盾が、攻撃を防ぐ。葵はそのまま盾を操り、エンティティに直撃させる。盾は傷一つついていない。

絶対にミスれない、その、緊張感が俺を興奮させる。戦闘は楽しむもの。その事実を忘れてはいけない。


「この環境で独自に進化したのか、厄介だ」


風間さんがそのように言う。暗い環境で暗視を持っているのかもしれない。しかも、先輩の技が効かないということは、俺と同じく熱に耐性があるということ。熱に関することなら俺より強いに違いない。


俺は背中から羽を顕現させて、約10メートル上空に跳躍し、回転しながら突進する。再び火球を放つエンティティ。しかし、その攻撃はもう見た。全て回避して、胴体に直撃する。少し痛かったが、エンティティの胴体にもミニサイズのクレーターができた。怯まず更に火球を放とうとするエンティティ。


「楽しませてくれよ、白焔アルクス」


櫻井先輩が弓矢状の炎を作り出して、エンティティ目掛けて発射し、命中する。先輩は口角を上げていて、楽しそうだ。


奇声を上げ倒れるエンティティ、櫻井先輩が本気を出すと恐ろしい。熱耐性があるエンティティにも効く炎を使う、俺なんて、丸焦げでは済まないと思う。


周辺の木々にも引火する。今までエンティティの火球にも燃えなかったのに、先輩の炎で炭になっていた。木にも熱耐性があるってどれだけ過酷な環境なのだろうと思っていると、葵が新しい盾を生成する。


「俺の新しい技を見せてやる。逆鱗の盾」


葵が赤く、禍々しい盾を作る。その雰囲気は、RPGに出てくる魔王が作り出した武器みたいだ。

盾をフリスビーのように、投げてエンティティに当てる。肉が裂け、内臓が丸見えだ。


「やるぞ、風間、酸素濃度を上げろ」

「わかりました。はぁーー、はあっ!」


櫻井先輩からの指示で、風間さんが、空気が歪ませて、エンティティの周りの空気が置換された、苦しそうにのたうち回っている様子から、この生物にとっては酸素は毒なのだろう。

櫻井先輩が弓に矢を装填して、放つ。命中し、白い炎がエンティティを包み込む。いくら熱耐性があるとはいえ、流石に耐えられないようだ。


「終わりましたね」


その時だった。エンティティの身体が、異様に膨張する。


「待て……何か来る!」


風間さんの声と同時に、地面が再び揺れた。次の瞬間分裂した。巨大なウツボの胴体が裂け、そこから小型の個体が何体も這い出てくる。前後左右、逃げ場を塞ぐように分裂したエンティティ広がる。


「は!?増えた!?」


数は十五、いや、もっといる。それぞれが口を開き、火球を溜め始める。風間さんが、


「まずい、包囲された!」

「くっ」


俺は、腕を一角獣の角に変化させた。この能力はこないだ目覚めたばかりだ、俺の能力はライオンや鳥の羽だけでなく、一角獣にも変化出来るらしい。

身構えて、突き刺そうとする。だが、それと同時に理解した。逃げ場がない。全方位から火球。


「っ……!」


回避した。一つ、二つ、三つ。だが四つ目が避けきれない。その瞬間。


「シールド!」


葵の盾が割り込む。直撃して割れる。破片が飛び散り、少し焦る。足を見ると分裂した個体が噛み付いているが、即座に振り解く。傷は浅い。


「無茶すんな!」

「お前もな!」


短いやり取り。でも、その一瞬で冷静さが戻る。考えろ。ただ突っ込むだけじゃダメだ。相手は数と火力で押してくるタイプ。


「風間さん!」

「分かってる!」


空気が歪む。エンティティの周囲だけ、別の空間に変わったように思えた。酸素濃度が一気に上昇。小型個体が、苦しみ始め、動きが鈍る。


「今だ、畳み掛けろ!」


風間さんの声で、走り出す。角に炎を纏わす。炎を圧縮する。一点に。


「貫け、炎収角」


音もなく震える。次の瞬間、空気を裂いて一直線に貫いた。角に圧縮した炎を流して放つ。細くて鋭く散った炎が、小型個体を貫通する。一体、二体、どんどん消滅していく。だが、小型個体が中心に集まり、融合していき、先程より二回り小さいウツボのエンティティになる。


その時、巨大な顎が迫る。その一撃は完全には避けきれない。


「逆鱗の盾!」


葵の盾が、エンティティの顎を弾く。エンティティは怯んだが、再び襲いかかろうとする。

 

「一人で抱え込むな」


先輩の声を聞いて安心する。そうだ。これは、チーム戦だ。


「終わりだ!全員、攻撃準備!」

「仕上げるぞ!」


風間さんが空気を操作する。酸素濃度、さらに上昇。エンティティが完全に動きを止める。

俺たちは最後の一撃に集中する。


「俺の盾を使え」

「俺の炎もな」


両手に小さい盾を持つ。先輩が盾に炎を纏わせる。翼を生やして空中に舞う。エンティティがこちらを睨んでいる。

回転しながら、突っ込む。ここで、全てを叩き込む。炎と衝撃が一点に集中し、貫通。爆発が起こる。


巨大な鉄壁(アイアン・ウォール)

 

静寂。荒い呼吸だけが残る。


「今度こそ、終わりましたね」

「一人でも欠けていたら攻略できなかった。三人のお陰だ」


葵の発言にそう返す櫻井先輩。光を発しながら絶命するエンティティ。光が俺たちを包み込む。確かに強くなったという実感が湧いた。でも、まだ足りない。欲張りでいい、欲がなければ何も成せない。

思念に浸っていると、自分たちの世界に帰還した。扉が塵になって消滅した。

塵になる様子を俺たちは見ていた。いつかなんの争いもない平和な世界が訪れますように。願いを込めた。少しの間を置き、俺がみんなに質問する。


「これからどうしますか?」

「俺は明日、愛知で別の任務があるから、新幹線に乗るため駅に行く」


風間さんはどうやら別の任務があるらしい。もう、駅の方へ行ってしまった。


「報告書を提出するから本部に行く」

「帰るわ」


櫻井先輩と葵もそれぞれ別の、目的地があるようだ。【さようなら】と言って別れた、俺は暇になった。


(みんなで焼肉行きたかったなー)


こういう普通の時間もたまには悪くない。空は暗くなっていて、腹が減っていた。なので、みんなと焼肉に行きたかったが、それぞれの帰路がある。

特にやる事も特にないので、適当にうろちょろすることにした。なんか傷が治るの早い気がする。

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