表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディメンションブレイク  作者: 凧39
一章 日常編
PR
5/16

ヨン話 二体のエンティティ(回想)

「帰るわ」

「ん、バイバイ」


葵と別れたあと、静かになった。今日の出来事が、頭の中で何度も繰り返される。白い炎、圧倒的な差、何もできなかった自分。俺は今日、ここで泊まる事になった。何とも言えない気持ちを感じながら、眠る。


翌日。


昨日は本当に酷かった。傷が癒えないまま着替える。格好はいつもの灰色のパーカーと赤いTシャツ、紺色のズボンだ。エナジーバーを食べながら訓練室に向かう。

訓練室に着くと、櫻井先輩が一人で立っていた。まだ、朝の四時である。櫻井先輩が真剣な眼差しで俺に話しかける。


「おはよう、綾人。今日は能力の扱い方について教えるよ」

「おはようございます、先輩。早速、お願いします」


挨拶を済ませて、闘技場に上がる。着替えない。先輩はいつも通りのヤンキー風の格好だ。先輩の胸部で白炎が渦巻いている。周囲の空気が、夏場のグラウンドの陽炎と同じように歪む。


「能力とは、己が支配するもの、君の場合、逆だ」

「支配ってなんすか?能力はただ使うものじゃないんですか?」


能力も他の道具と同じだろうと思っていた。だが、それは思い込みだった。昨日は、壊れたドライヤーと同じように、全く予期せぬところから炎が出ていた。先輩と同じようなことをしようとする。


「こうですか?先輩?」


腕を変形させて、炎を中心にして、渦巻きを作ろうとするが、うまくいかない。やっぱり先輩はすごい。それに比べて俺は全然ダメだ。


「いい線いってるけどまだ甘い。渦巻きを作ろうと必死になりすぎている」


その通りだ、焦りは常に後手に回るだけ。もしかして、力みすぎなのだろう。

先輩は俺に一言声をかける。それは的確なアドバイスだった。


「炎そのものを操る感じ、例えば、手足とか自由に動かせるじゃん、それと同じ」


そういうことか。新しい能力に戸惑ってどうすればいいか分からなかったから、制御出来なかったのか、あの時たまたまうまく炎を出せてエンティティを倒せただけ。

あのまま先輩に会わなかったら、死んでしまったかもしれない。本当にこの人に会えて良かったと思いながら、再び炎で渦巻きを作ろうとする。


「はぁー、はあ、っ、出来た」


腕の力を抜いて炎を動かすことでやっと出来た。先輩は腕を使ってなかったけど、極めたらあそこまで行けるのかと思った。今思えば、自転車に乗れなかったガキの頃と同じだ。


「やればできるじゃん。こういうのを自由自在に出来たら、高レベルのエンティティも倒せるようになるよ」

「ご指導ありがとうございます


先輩からの言葉に納得した。どんなことでも始めたては、何度も試すしかない。それだけは、はっきりと分かった。綾奈みたいにちょっとやっただけで、何でもプロレベルになるような人はそうそういない。

俺に足りなかったのは、忍耐力と目的意識だった。


「今日はこれくらいでいいだろう。これからは俺が暇な時はこうやって訓練に付き合ってやるよ。」

「ありがとうございます先輩。助かります」


先輩の一言で、今までの焦りが少しだけ形を持った。

強くなるには、まず積み重ねるしかない。そう思えた。俺たちは、闘技場を降りて、休憩をとる。

水分補給をしていると、先輩のスマホから通知音が鳴る。


「早速、新しいディメンションが現れたらしい。レベル3、予約っと、一緒に行く?綾人」

「はい!!」

「場所は公園付近だから、葵も誘ってみたら?」


威勢のいい返事と共にすぐに準備を始める。葵にも電話をかける。


「これから櫻井先輩とディメンション攻略に行く。来るか?」

「わかった。場所を共有してくれ」


場所を共有し、二人でエレベーターに乗る。先輩からある質問をされる。


「お前の能力って、ライオンみたいな腕を出現させるだけか?」

「他にもあると思います。でも、これ以外使ったことないので」

「そう」

「これから挑戦するディメンションで、使ってみようと思います。別の能力」


先輩からの質問に答えていると、一階に到着する。ダッシュで入り口を出て車に乗り込む。運転は櫻井先輩がする。


「櫻井先輩って何歳ですか?」

「二十一歳だよ」

「へぇー、意外ですね」


意外だった、確かに、身長は150後半くらいで、顔が童顔のため年下だと思っていた。だってヤンキーみたいな格好だから厨二病だと思っていた。人は見た目によらないことを改めて自覚した。

法定速度ギリギリで、走る車は数分で目的地に着いた。


「よぉ、お二人とも、先に着いてました」


先に着いていた葵。家はこの近くだと思う。そういえば葵の能力は知らなかったから、こと後見れると思うとワクワクしてくる。

扉は縦横、部屋の側面程の大きさで、茶色だ。


「俺が前に出ます。櫻井先輩、綾人後ろに下がって」


葵がそのようにいうと、手元に何かを出現させる。それは盾だった。西洋風の盾で重量感がある。右手で盾を持ち、ドアノブを回して引く。

開けると、街が見える。ビルやお店が立っていて東京と変わらない雰囲気だ。


「本当にディメンション?妙に俺たちの世界に似てる気が…」

「いや、何かが違う。見られている」


櫻井先輩は視線を感じるようだ。周囲を見渡すが、人々から攻撃される様子もない。

五分探索するが、看板などが未知の言語で書かれていること以外は、何も分からない。人々の様子も相変わらずだ。

しかし、目の前カップル、その二人だけ、歩き方が妙だった。まるで人間のふりをしているみたいに、動きにぎこちなさがあった。


「俺は出来るだけ助けない。二人だけで攻略してみて」


櫻井先輩はそういうと、炎を噴射して看板に乗った。カップルの腕が鎌に変化して、俺と葵に襲いかかる。


二つの盾(ダブル・シールド)


手に、光を放ちながら、盾を二枚生成して、攻撃を防ぐ。俺も続けて、攻撃を繰り出す。


炎の嵐(ブレイズトルネード)


腕の熱が一点に集まり、次の瞬間、炎が渦になって爆ぜた。さっきの特訓で身につけた新技だ。炎を渦巻状にして、カップルを焼き尽くす。女の方はよく効いているのか、顔が醜く変形する。男は素早い駆け足で嵐を抜けた。葵がそれを見ていて、追いかける。

女の方は意味不明な言語を叫びながら炎を消そうとして、腹部から腸みたいな器官を出して灰色の液体を噴き出す。俺の炎は消えたが、叫び声が増した。それを攻撃体勢で見ている。


一方そのころ、男のエンティティを追い詰めた葵。


「トドメだ」


葵が右手の盾で男の方の頭を潰そうとするが、


「雋ォ縺」


未知の言語を話すエンティティ。男の方から口から4本の触手がでてくる。それは、人々を巻き込んで、俺たちに襲いかかる。

周囲の人々は不自然なほど何も反応しない。


「ごめん。身代わりにさせてもらう」

「シールド」


俺と葵は、身代わり、盾生成、それぞれの方法で身を守る。周囲には遺体と灰色の血らしき液体が広がっている。更に攻撃を繰り出そうとするエンティティ達。


俺は、背中に力を入れてみる。今まで腕にしか力を入れていなかったから、他の部位も試してみようと思った。背中に物凄い不快感が走った。

背中から何かが、生えてくる。


「うわ!羽?!」


それは、羽だった。中に浮き、カップルのエンティティと葵を見下ろす。自分でもなぜ上手く飛んでいるのか分からない。


「髯阪j縺ヲ縺薙>」


エンティティの発言を、気にせずに羽を操ろうとするが、最初だから、制御出来ない。左右に激しく揺れ、女の方目掛けて突進する。

命中し、ビルに激突する。叫び声をあげて光を発しながら絶命した。


「へぇー、そんなことできるんだ。便利だね」


櫻井先輩は興味深そうに見下ろす。何故かさっきまで何もしてこなかった周囲の人々が、櫻井先輩に襲いかかるが、


「無駄だよ」


小爆発を起こして人々を消し炭にした。降りて、半径一メートルほどの爆発を起こす。煙が晴れると、クレーターが出来ていた。光が櫻井先輩を包み込むが、櫻井先輩は手応えがないと感じているのか、不満そうな表情を浮かべていた。


一方その頃葵は、


「ふっ、トドメだ」


男の方の攻撃を全て防ぎ、カウンターを繰り出す。盾はと葵は無傷。反対にもうエンティティはボロボロだ。両手に盾を二枚持ちして、X字に切り裂く、エンティティは何も言わずに光を発しながら絶命した。光と灰色の返り血を浴びる葵は、無表情だった。葵は攻めない。受ける、流す、返す。それだけで相手を追い詰めていく。


葵や櫻井先輩の方へ振り返ると、


「戻ったのか。公園に」


扉付近に戻っていた。扉は塵になって消滅した。


「お前達二人は才能がある。俺がめちゃくちゃ鍛えてやるからなぁ」

「望むところです」

「お願いします」


櫻井先輩の発言に俺たち二人は、それぞれの感情を返事で返していた。翌日、俺達は、パーティを結成した。その日から、俺達の戦い方は変わり始めた。


だが、櫻井先輩がなぜ俺達のパーティに入らないのかそれだけは、まだ分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ