旅客船
ノア「あれだ!あの船だよ、レナータ」
レナータの返事がない。背中に彼女の頭が当たっているのがわかる。恐らく彼女は泣いているのだろう。自分が生まれ育った街が戦火に包まれているから・・・。
船のデッキにドローンバイクごと乗り込むとゆっくりとノアはドローンバイクから降りて、レナータを見つめた。頬を涙が伝った跡がある。
そっと彼女を抱きしめた。初めて実物のレナータとデートをしたオレゴン州のポートランドがこんな惨事に見舞われるなんて・・・。
カナダのノアが生まれ育った街も被害が出ているが住人の避難は早かった。山岳地帯ではドローンバイクやドローンカーが普及しているためSERAPHが空から降下してきたタイミングで住民たちは一斉にその地域から飛び立っていた。それでも街は破壊されている。SERAPHを倒すまでは帰れない。
ノアはスマートフォンを取り出してコニック博士に連絡した。
「博士、船に乗り込んだよ。レナータも無事だ」
コニック博士「それは良かった。心配してたんだよ。ここから見えたよ、ブリッジに来てほしい」
古い旅客船だが、たくさんの人が避難できた。50人は乗っている。他にもいくつもの中古の旅客船が岸壁に停まっている。ほとんどは中型だが中には大型客船もあった。
300人~500人乗り込めるほどの大きさだ。
ノアとレナータはガラスの向こう側で手を振るコニック博士と美女を見つけた。ドアを開けて中に入る。
ノア「コニック博士!?仮想現実と印象が違うね。そちらの女性は?」
コニック博士「ハハッ、キミとレナータのように3Dキャプチャしなかったんだ。隣にいる美女はアンジェリカだよ」
レナータ「キャッ、すごくステキ」
レナータがアンジェリカに抱きついた。
アンジェリカ「ありがとう、レナータ。無事でよかったわ」
「では、早速だけどVRゴーグルを付けてゲーミングウェアを着てちょうだい」
ノアとレナータが目線を下げて、テーブルのほうを見ると紫色のウサギのつなぎを着た人形が立っていた。
ノア「えっ?もしかしてラファエラなのか?実物がこんなに小さかったなんて・・・」
ノアは、おもむろに紫色のウサギを掴んで持ち上げた。
ラファエラ「くすぐったい!やめろ、変態!私はゲーミングスーツを着て、フィギアを動かしてるの!」
テーブルの上にハンドクローラーが這い上がって来るとノアは大人しく言うことを聞くことにした。
ノア「はい、ラファエラさん。テーブルに戻しまーす」
ハンドクローラーが鋭い爪を『カチッカチッ』と鳴らしている。獲物を狙うように・・・。
ラファエラ「うむ、よろしい」
ノアとレナータのために専用の個室が用意されていた。ふたりはゲーミングウェアを着て、VRゴーグルをつけるとラファエラの指示を仰ぐ。
ラファエラ「よし、アンドロイドとモーションのリンクを始める。武器はブレードとハンドガンよ」
ノア「おいおい、ハンドガンでSERAPHと戦うのはムリだろ?絶対にあの装甲ボディには効かないよ」
ラファエラ「心配しなくても大丈夫よ。特殊な弾を使っているの。撃てばわかるわ」
ノアとレナータがアンドロイドを動かす。ポートランドの街の中心で暴れるSERAPHに向かっていく。
VRゴーグルを付けてゲーミングウェアを着ているとまるで仮想現実でe-Sportsをしているような感覚になる。現実味が薄れると同時に死なない安心感があった。
3体のSERAPHがミニガンM134を連射してくる。ノアは近くにあったマンホールを盾にした。車の陰からレナータがハンドガンでSERAPHの頭を狙って撃つ。発射された弾はSERAPHの頭にくっついた。
レナータ「ガム?」
ラファエラ「ふたりともそこから離れて!爆発するわ」
ノア「おいおい、あのガムみたいなの、もしかして時限爆弾なの?」
ラファエラ「そうよ、それで奴らの頭を吹っ飛ばすの」
『3、2、1、ドォーンッ!!』
SERAPHの顔面が吹き飛び、黒煙が上がった。
ノア「ヤッタァー!いいじゃん。この武器」
次々、SERAPHの頭を狙って撃つ。手りゅう弾のように時間差でSERAPHの頭が爆発して黒煙が上がった。後部可動扉が開き、Small SERAPHが飛び出してきた。
Small SERAPHのブレードをマンホールで受けながら、ブレードで一突きした。Small SERAPHの腕がぶら下がり動きが鈍くなっている。トドメに首元にブレードを刺した。
ノアとレナータが連携してSmall SERAPHを蹴散らしていく。
まるで現実世界でネオグライドをやっているような気分だった。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/n8296972d52d1?app_launch=false
画像はnoteに置いています。




