平行線
ブルック専務「心配はいらないよ。キミの名前を聞かせもらおうか」
オフィスの片隅で震えながらうずくまっているのはクロップ課長の秘書を務めていたエリカ・メンデスだ。
「エ・・・エリカ・メンデスです」
「ほう、イイ名前だ。ではエリカ、これからは私の秘書として働いてもらおう。報酬は弾むよ」
SSBRの部隊がオフィスの血痕をキレイに消し去り、隊長は作業終了をブルック専務に報告して部屋を出た。
「さ・・殺人は罪に問われるのでは?」
恐る恐るエリカ・メンデスがブルック専務に訊ねた。
「ふふっ、我々の企業は常に外敵に狙われている。命を落とすことなんてざらにある。それに世界大戦時に国と契約した内容はまだ効力が残っているのだよ。
SSBR内部で起こる事故や死は、警察を介入させることなく処理できるというルールがね。
キミは知らなくて当然だ。出身はコロンビアだったかな?顔立ちがとても美しい」
――― 数日後 ―――
SSBRの施設に行政監査が入った。総務課のリンダが監査人を案内する。
「どうぞ、1階から順に建物内部をご案内致します」
「はい、わかりました」
監査人の3人がリンダに案内され、資料と照らし合わせながらチェック項目に目を通す。エレベータの表記は1F~5Fまでしかなく、B1の押しボタンは隠されていた。
この施設は設計者とエンジニアがほとんどで特別に何かがあるわけではなかった。地下1階を除けば・・・。
5階のブルック専用オフィスに監査人3人と案内係のリンダが入る。
ブルック専務「この時期に行政監査ですか?我々は国とつながりがとても深い。昔ならあり得なかったことですよ」
監査人「政府が人からAIに変わって、こっちも渋々やらないといけない仕事が増えてね・・・お互い様ですよ」
ブルック専務「なるほど、それは仕方がない。手短に頼みますよ」
監査人「わかりました」
この行政監査はSSBRを狙い打ちしていた。各国の拠点でも同じように監査が行われ、何か不穏な動きがあればすぐに行政処分が下されるように仕組まれている。
営業停止をかけるための口実と言っても過言ではなかった。
――― SSBR研究所 ―――
フロラン「ケネス・ブルックが生きていたとは驚きだぜ」
ドミンゴ博士「・・・ブルック専務がいなければ『ANGEL DESCENT計画』は進行できないじゃないか」
フロラン「そんなにその計画は大切か?オレにはその計画が失敗に終わる気がしてならないが・・・」
ドミンゴ博士「AIに支配された世界に抗うためだ。人類のほとんどが仮想現実の中で過ごしている。何のためか、わかるか?」
フロラン「そんなことは知らねーな。金を稼いで物を得るためか?」
ドミンゴ博士「いや、それは表向きの話だ。本当の狙いは人類増加の抑制と減少させることだよ」
フロラン「AIにコントロールされるのがイヤなのか?人間が政治をやっていた時代よりは随分マシになったように思うが?」
ドミンゴ博士は首を横に振った。
「どこの国も同じだ。みんな仮想現実の中で過ごしている。それが支配だよ、フロラン」
フロラン「なるほどな、しかし、支配がない世界では争いが絶えない。お前らがやろうとしていることはそれなんだよな」
話は平行線を辿り、お互いが歩み寄ることはなかった。ケネス・ブルックを暗殺したフロランとそれを蘇らせたドミンゴ博士の考え方は真逆だった。
どちらもその事実を知らない。
――― Lumen Ark仮想オフィス ―――
コニック博士「船?なるほど、面白いね」
ノア「そう、船を作って避難できるようにすればいいと思ったんだ。じゃあ一般人は装甲ロボットと戦わなくて済むからね」
アンジェリカ「名案だわ。一般人は戦わずに回避してあとは政府とその傘下の組織に任せればたくさんの人の命が助かるわね」
カジェタノ「まさにノアの方舟だな、まさかお前が伝説の生まれ変わりだったりしてな」
ラファエラ「装甲ロボットのSERAPHはハンドクローラーが相手よ。物量で勝負するわ」
カジェタノ「操作はどうすんのさ?ひとり一体じゃないとムリじゃないっけ?」
ラファエラ「ハンドクローラーにAIを搭載したの。SERAPHを攻撃対象とするように実行命令を書き込んだわ。充電する拠点への移動はドローンで空を飛ぶ」
ラファエラはハンドクローラー1機が乗って移動できるサイズのドローンを作っていた。
コニック博士「これは非常に効率的だ。もしこのサイズであのSERAPHを止めることができれば我々の勝ちだ」
微かに人類が生き残る希望が見えてきた。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/na72c6913c813?app_launch=false
画像はnoteに置いています。




