失墜
SSBRの内部がゴタついていた。ケネス・ブルックの秘書だったティーナ・フスが諜報員だったことによる弊害がここに表れた。
SSBRの資金の一部が西アジアに流れてしまったのだ。おまけにケネス・ブルックは依存性の高い薬物を摂取したせいで心が壊れてしまった。
ボスは怒り心頭である。もしティーナ・フスが見つかれば命はない。
エロディとマトローナの見立ては正しかった。ブルック専務は悪ではあったが部下にセクハラするような蛮行を見せたことは一度もなかった。手を出すのは秘書だけである。
後日、ドミンゴ博士が調べたところによるとケネス・ブルックを貶めた依存性の高い薬物はどうやら西アジアで流通しているものらしい。
世界大戦時にもっとも被害が大きかった地域は国が滅び、貿易さえもままならず飢えで死んでいった。
生き残った人々が集まりテロ組織へと変貌を遂げ、今も息を潜めてあちこちの国を狙っているという。西アジアで死にゆく人々に与えられた救いが黄色い液体『ユニコーンの涙』だった。依存性の高い危険なドラッグだが生きることに絶望した人々にとってはそれが救いになっていた。
ボスの右腕と呼ばれたケネス・ブルックが不在になったが『ANGEL DESCENT計画』は着々と進められている。『SERAPH』と『Small SERAPH』は量産され海外への出荷が始まった。SSBRが持つ海外拠点に配備される予定である。
ケネス・ブルックの不在をいいことに課長ランベルト・クロップは、この機を逃さず指揮を取ろうとしていた。ブルック専務の専用オフィスに入ると総務課のリンダに告げる。
クロップ「今日からこの部屋は私が使おう。専務が不在では社外交渉に支障を来たす。会社の顔としてブルック専務の代役を務める」
リンダ「課長がそうおっしゃられるのであれば私どもはお任せ致します」
クロップ「机と椅子が私の好みじゃない。業者を手配して内装を替えさせろ」
リンダ「承知しました」
こうしてブルック専用オフィスの内装はガラリと変わり、机と椅子は新調された。まるでケネス・ブルックが用済みであるかのような扱いである。
――― Lumen Ark活動拠点 ―――
コニック博士「なに!?それは本当なのか?」
アンジェリカ「ええ、確かな情報よ。ケネス・ブルックが入院しているそうよ」
ラファエラ「入院?ケガか何か?」
アンジェリカ「いいえ、精神疾患だと聞いたわ」
Lumen Arkの各方面に散らばった諜報員からの情報がすぐさま共有された。
ゲレーテ「それでも安心はできない。SSBRにとってそれは些細な出来事よ」
コニック博士「すべての計画は引き継がれているか・・・」
――― 病院 ―――
ケネス・ブルック「うおおおおっ!ここから出せ!オレを誰だと思ってるんだ!」
『バンッ!』『ダンッ!』『ガチャガチャガチャッ!』
いろんな物を投げつけドアをこじ開けようとするが厳重にロックされていて開かない。
『ユニコーンの涙』の効力が切れ徐々に心は回復してきたが今度は禁断症状が出て、手がつけられない状況だ。
薬物が欲しくて堪らない気持ちと心が乾いてムシャクシャする気持ちが葛藤する。
精神科の隔離病棟へ移されたが病院の先生の話では”手遅れ”だった。
『カサカサカサカサッ』
空調ダクトから何かが這う音がする。ケネス・ブルックは気づかずにまだ叫んでいる。
『ギギギッバキバキ!』
通気口の金網を破る音が聴こえた。
「なんだ?」
やっとケネス・ブルックが物音に気づいて、天井を見上げると通気口のところに鋭い爪を持った黒い手のようなロボットがそこにいた。
「ドミンゴ博士か?おお、私を助けるためにロボットをよこしたんだな」
次の瞬間、ハンドクローラーが襲いかかり、ケネス・ブルックの額を一突きした。叫ぶまもなくその場に倒れて死亡した。
額に突き刺さった鋭い爪を引き抜いて、壁に刃を突き立てながらよじ登り、通気口へ姿を消した。
床一面に血は広がり、遺体は次の日まで誰にも気づかれずに放置されることとなった。
次の日、警察官と病院関係者が集まり殺人事件として捜査が開始され、SSBRにも連絡が入った。
その報告を受けてクロップ課長はほくそ笑み、オフィスでふんぞり返る。
「ふん、死んで当然の男だ。敵を増やしすぎたな」
数日後、殺人事件として扱われたはずのこの件は事故として処理され怪奇殺人は闇に屠られた。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/nf42b32ace9c1?app_launch=false
画像はnoteに置いています。(グロ画像)




